第8話 努力の成果を
俺たちはいつもの空間へと到着した。
俺たち以外、誰もいないこの空間でお互いが対峙している。
俺は今の実力でどれほど相手に通用するのか…。
それが楽しみで仕方なかった。
森の中でも、何もない空間。
聞こえるのはお互いの足音、そして僅かな風。
ほぼ静寂に近い状態だ。
静寂の中、緊張感だけが高まっていくこの空間。
ダク:(……………)
セレーナ:(………………)
互いが出方を窺っている。
ならば俺から切り出すしかない。
ダク:「…………はぁぁぁぁあ!!」
【瞬間移動/全属性魔法(水):水砲】
俺は即座に相手の元へと駆け、水属性スキルを展開。
威力があり連射ができるスキル、水砲を繰り出した。
俺は最初から全力を出すと決めていた。
ここで俺の全てを出して、後悔のないように。
セレーナ:「……はっ。…せいやぁぁあ!」
【風魔法:風刃】
セレーナは俺の水砲を綺麗に避け、攻撃を仕掛けてきた。いくつもの鋭利な風魔法が俺の元へ飛んでくる。
ダク:「くっ……… はぁっ!」
俺は間一髪でそれを躱し、次の攻撃耐性へ入る。
俺が次の手を考えている間に、セレーナが俺の目の前に迫る。
セレーナ:「あら、戦闘中に考える暇は与えませんよ?…はっ!」
強烈な風魔法を纏った蹴りを繰り出す。
俺はその行動を避けずに、蹴りを受けた。
風魔法付きの蹴りだった為に、かなりの飛距離で飛ばされてしまった。
ダク:「これはまずいな…!」
【基礎強化】
ズザァァァァァァ…!
ダク:(くっ……)
俺は即座に強化スキルを使って、着地ダメージを軽減した。
尚もセレーナは追撃の手を緩めてこない。
少しの隙も許してはくれない。
ここで、俺は戦闘技術の差をヒシヒシと感じていた。
これが強者の戦い方なのか…と。
セレーナ:「これで終わりですか?それなら残念です……よっ!!」
セレーナは俺に同じ風魔法を纏った蹴りを放ってきた。
だが。
あのスキルがあれば
俺だって更に成長する事ができるんだって。
セレーナに成長した姿を見せてやるさ。
(風魔法:右足に纏え…!)
俺はあの時に理解スキルを展開、セレーナの攻撃方法、構造を"理解"する事に成功した。
ダク:「はぁぁぁぁぁあああ!」
俺は跳躍し、迫ってきたセレーナの上から蹴りを繰り出す。
先程セレーナが打ってきた攻撃のように。
セレーナ:「なんですって…!ぐっ……」
俺とセレーナの魔法が衝突する。
辺りには、風魔法同士の対立によって暴風のような現象になっている。
ダク:「何もできずにやられてたまるか…っての!一泡…いや、二泡ぐらい吹かせてやるさ!はぁぁぁぁああああ!!」
単純な脚力なら男である俺のほうが有利だ。
ましてや高さでも有利を取っている。
その勢いで押していく。
セレーナ:「くっ………っっ!!!」
同じ風魔法同士の勝負は俺に軍配が上がった。
セレーナは大きく後方へと弾かれていった。
セレーナ:「まさか同じ攻撃を即座に繰り出されるとは…。完全にやられてしまいました。ですが、次はそうはいきません!……はっ!」
【風魔法:風圧/強】
ダク:(!?)
突如ダクの足が動かなくなった。
ダク:(…いや、これは何か強い力で抑えられている!?…)
これはまずいっ!
俺は慌てて瞬間移動の発動を試みるも、相手スキルの方が威力が強く、瞬間移動スキルが効果を発揮しない。
その間にも、セレーナは何か次の魔法を展開している途中だ。
あれだけ発動に時間がかかっている魔法だ。
打たれたら流石にまともには立てなくなる…!
どうする…。考えろ!
ダク:(一か八かだ…!)
【基礎強化、瞬間移動】
俺は基礎強化を発動。
足に強化を集中させ、その後に瞬間移動スキルを発動。
足に力を込め、一気に脱出を試みた。
ダク:(!)
何とか抜け出すことには成功したが、脱出ばかりに気を取られていたせいで、抜けた勢いのまま空中で隙だらけの体勢になってしまった。
セレーナ:「それを待ってたの……よ!!」
【風魔法:風槍一閃】
1本の強力な風の槍が俺めがけて飛んできた。
正直、今のこの威力を相殺出来る程の能力は持っていない。勝ち筋は無いだろう。
だが…せめてもの抵抗を…!
ダク:「諦めねぇ…!」
俺は今できる最大限の魔法を放つ。
【火魔法:炎獄/螺旋】
ダク:「せめて、傷ぐらい残してやる…さ!」
セレーナ:「………………。」
ゴゴゴゴゴゴゴ…。
ドドドド…。
互いの強力な魔法がぶつかり合う。
やがて、セレーナの風槍が炎を貫いていく。
ダク:「ははっ……上には上がいる…それも俺の身近にな…。それが…その事実が…とても楽しい…!」
セレーナ:「ふふっ…最早、その意思の強さでは負けているかもしれませんね。」
ダク:「いつか…いつかは……!
セレーナと並ぶ…いや、それを超えて……………!」
◆
俺は戦いに負けた。
だが、勿論後悔は無い。
あるのはやりきった達成感。
この経験が、この気持ちが
俺を更に強くしていくと確信しているから。
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