第4話 強くなるためにⅡ


その日の俺の記憶は曖昧にしか覚えていない。

気が就いたら朝になっていた。 


鳥たちの声や、木々が風によって音を奏でているのが聞こえる。



何とか走りきったのは記憶にあるが、その後の行動記憶が無かった。


目を開けると、セレーナの小屋のベッドで横になっていた。


てっきりあんだけ走らされたり、後ろから叩かれたりしたものだから…


『全身筋肉痛で動けませーん』


だと思ったが、不思議と身体はいつもの調子だった。セレーナの回復魔法のおかげだろうか。


有り難いのだが、あのトレーニングがまた今日もあるのでは…という何とも言えない感情が巻き起こっている。


と、そこへ


セレーナ:「あら、おはよう。よく眠れたかしら?」


ダク:「あぁ、どうやらよく眠れたみたいだ。不思議と疲れも無い。もしかして回復してくれたのか?」


セレーナ:「えぇ、したわ。朝食を取ったら今日もトレーニングするわよ。サボったら水の泡ですからね。それはあなたも承知の上よね?」


ダク:「もちろん。そこは承知の上さ。だが、またあんなに走らせるのは正直…」


セレーナ:「ふふっ、でも今日はそんなに走らないわよ。走って4〜50周、後は別の強化に取り組む予定よ。」


ダク:「楽なのか…?感覚がわからなくなってきた。」


その後、俺は朝食を取り、家事を済ませていつもの空間へと移動した。







タッタッタッタッ…


……………


ダク:「ふぅ……疲れたが、不思議とそんなにキツくなかったな…(昨日に比べたら)。」


セレーナ:「おつかれさま。そうでしょ?一回最初にキツい経験をしておけば、それより少ない事でも、そうそう辛くは感じないものです。」


ダク:「それで、他に何をやるんだ?」


セレーナ:「次は発展系ね。さっきは単なるランニングだったけども、今度は実践形式です。私が風魔法を打ち込んでいくから、それを地力で避ける感じです。あ、大丈夫ですよ。威力は死なない程度にしますから、ね?」


それ死なない威力出すっていう言葉の裏返し…


ではないよな?


とにかく、俺は次のトレーニングへと進んだ。


セレーナ:「ここは何もない空間だから、変に気を利かせなくていいです。私の魔法を避けることだけに集中してね。」


ダク:「わかった。」


そして魔法を避ける訓練が始まった。


最初はただ走って避けるだけという非常にコスパの悪い避け方をしていたし、めちゃめちゃ怖かったが、時間が経つに連れて、相手の魔法の進行方向・最短での回避ステップなど…コツを掴むようになっていった。


走るだけでなく、しゃがんだり跳躍したりと…俺にとってはこのトレーニングは楽しく感じた。





セレーナ:「おつかれさま。…最初に会ったときも少し思ったけど、あなた回避能力が高いようですね。その能力は多方面において役立つから、私との特訓が終わった後も、積極的に伸ばしておくべきよ。」


ダク:「そうなのか…心に留めておくさ。」


セレーナ:「えぇ、それがいいわ……よっ!!」


ビュンッ。


ダク:(!)


咄嗟に跳躍し、突如放たれた魔法を避けた。


セレーナ:「どうかしら?私としても結構不意を突いたつもりだったけど、あっさりと躱されてしまいました。それ、自信持っていいことですからね?」


ダク:「そうか…それは自信を持つとしよう…かな。」


俺自身もこの反応速度に驚いたが。どうやら身体が覚えてくれたらしい。成果が出ているようだ。


そう思いつつ、俺達は小屋へと戻っていくのだった。



次の日。

俺は朝食と家事の手伝いを済ませ、セレーナとの特訓に励んだ。


今回は力を鍛えるらしい。

といっても、家事の延長線みたいなもので大きな木材をひたすら往復で運ぶのだった。



地味にこれが足腰、腕の筋肉を使うためキツかったが。


それから、約一週間ぐらいは上記のトレーニングを繰り返したり、時には集中的にやったりと基礎能力の向上にひたすら取り組んでいった。



気づけば、俺もセレーナとの暮らしが心地良いものへと変化していた。




ある日。

今日もトレーニングであり、セレーナと共にいつもの空間へとやってきた。


ダク:「それで、今日は何の強化をするんだ?」



セレーナ:「えぇ、今日はそろそろスキルを上手く扱う練習をしようと思います。」


どうやら俺は一つトレーニングのステップが上がったようだ。


さて、スキルのトレーニングはどのように行っていくのか。俺は非常に楽しみなのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る