第2話 波乱の幕開け?Ⅱ


カミドは一瞬驚いた顔を見せたものの、すぐにいつもの調子に戻った。


カミド:「いやぁ〜…まさかこんな短時間でスキルを扱えるようになって、しかも実践してくるとはねぇ。僕も驚いたよ。

…そして洗脳の件については申し訳ないね。ただ、悪用するわけではなくて、実はここ(天界)はヒトならざるもの…君たちの命は長くないんだよ。だから洗脳のスキルを使ってトラブルなど滞りなく、でもぼんやりとここの記憶を持っていて欲しかったのさ。」


カミドはそう話して頭を下げた。

神の一員が頭を下げることにダクは少し驚いた。


ダク:「そういうことだったのか。いや、カミサマに悪意が無いなら良いんだ。こちらの一方的な警戒のしすぎだった。いきなりすまなかった。」


カミド:「あははっ。この件はお互い様って事にしてこうか。…しかし、いきなりこの部屋に発しているスキルを見破るなんてホントにビックリしたよ。スキルを見破る系統のスキルでも得たのかい?」


ダク:「あぁ、物事を理解できる【理解】というスキルを貰ってみた。何か可能性を感じて直感でな…。

そしてそのスキルを使って、試しに他に表示されていたスキルも『理解』してみたところ、どうやら上手く行ったようでな…。」


ダクからしたらこれは単なる一種の興味だった。


しかし、その行動が予想以上に上手く行った事に加え、部屋全体に発してある 洗脳というスキルに、身の危機感を持った為にこのような荒い行動を取った。


カミド:「はっはっはっ!!そうかそうか!!素晴らしい、面白いねぇ、君!

まさか、平凡すぎて誰も取ったことのない【理解】のスキルにそのような扱い方があったとはっ。この僕も驚きのあまり笑ってしまうよ。ふふふっ。他のヒトは珍しさ、見た目から魔法系のスキルばかり取っていくからね。こんな経験は初めてだよ!」


カミドは少しの間笑いが止まらなかったが、やがて落ち着きを取り戻し、


カミド:「おっと、あまり時間もないようだ。そろそろ転送に入らせてもらうよ。いいかい? そのまま動かないでいてくれ。ただ、転送先はすまないがランダムだ。いきなり死ぬことは無いだろうが、転送先での文句は無しだよ? 君の場合、知恵や鋭い直感があるから余裕で生きれそうだけどねっ。」


そうカミドは話し、ダクの足元に魔法が展開される。


カミド(―――――。)


カミドは何か詠唱らしきものをした直後、ダクの体は光に包まれた。


カミド:「じゃあね、ダクくん。君の人生が満足に行くことを願ってるよ。」


ダクは人々が存在する 下の世界へと転送された。




 


そして部屋にはカミドだけが残った。


ガチャ。


ナイリィ「失礼いたします。導きは終わりましたでしょうか?…カミド様?」


カミド:「やぁ、ナイリィ。終わったよ、ふふっ。」


カミドが笑顔いっぱいである事にナイリィは驚いた。


ナイリィ「失礼ですがカミド様、何故そんなにも笑顔なのでしょうか?てっきり、いつもの様に怠そうな顔をしているとばかり…。」


カミド:「ははっ! ねぇナイリィ。僕はね、今までの中でもトップクラスの優秀な子を転送できたんだよ!その子はスキルを受け取った後、すぐにスキルを発動する事が出来て、しかもこの僕に攻撃まで仕掛けてきたのさ!こんなにも予想外な事あるかい? 僕は興奮して今日はもう寝れないよ!」


ナイリィ:「カミド様にそのような無礼な行動を…。その子には転送をさせなくて良かったのでは?」


カミド:「いや、いいんだ。僕はあの子を転送して正解だと強く確信しているよ。彼なら転送先でもうまくやっていける。もしかしたら最強まで…なんてあるかもってぐらいにね。あとね、彼は何も理由なく僕に攻撃してはいないよ。こちらからも理由を話したら納得してくれたし、人の話を聞く良い子だよ。」


ナイリィ:「そこまで言うのなら良いですが…。……とりあえず、私もそろそろお時間ですのでこの辺で失礼いたしますね。…ではまた明日。」


そう言ってナイリィはカミドの部屋を後にした。



一人になったカミドは部屋の窓から外の景色をつつ呟く。


カミド:「ダクくん…僕は、君の数年後、成長した姿がホントに楽しみだよ。でも、下の世界 新たな地でトラブルがあるかもしれない。でも君ならきっと大丈夫さ。僕はそう信じてる。それにしても、この【理解】スキルは初めて取られたけど、怖い事を身に染みたなぁ…。スキル候補から以後消しておこうかな…っと。」


そう呟いて、カミドは1つのスキルを消去した。


今後"理解"スキルを持つものは現れない。




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