第13話

「スーシェ?」

「……国王ヴィクター」

「その呼び方はよしてくれよ。僕はまだ子どもだから王『子』なんだって。ガーギルさんが言っていたよ」

「……そうですね」

スーシェは、アルヴィーの墓に毎日手を合わせに来ていた。

アルヴィーの墓は王宮の裏にあった。そこには他にも墓があり、皆砂時計の砂になったと記されていた。

「アルヴィーは残念だったよ。きょうだいがいるから本当は名簿に入っていなかったんだけど、急遽入れたんだ。きっちり1000年分にしたかったから……」

「そうですよね」

スーシェの返事は無機質なものだった。初めて会ったときは元気な少女だったのに。

「……スーシェ、本当にすまない」

「いいですよ。国が平和になるのは皆望んでいたことですから」

必要な犠牲だったんです……。スーシェはそう言って、顔を手で覆った。

「……クレイトンの兄に子ができたらしい」

ヴィクターが悲しそうに微笑む。

「平和だから生まれるんだ。平和じゃないと国はなりたたないんだ……」

「……」

「スーシェ」

「ヴィクター様」

「ヴィクターでいいよ。それに敬語は使わなくていい。君は僕にスープをくれたし」

ヴィクターの頬が赤らんだ。

「そう呼ばれるのは少し恥ずかしいんだ。みんなの前では言えないけどね」

「じゃあ、ヴィクター。兄さんがしんで国が平和になってからね、一つだけいいことがあったの」


「兄さんに高いお酒をあげることができるようになったのよ」





〜数日後〜


「砂時計の仕組みが分かれば」


クレイトンはガーギルやヴィクターに隠れて、砂時計の秘密を追っていた。


「砂時計を割ることだってできる」


ガーギルの屋敷で何が起きたのか。それを突き止めることができればきっと。

「ヴィクターが神?ガーギルめ、やってくれたな」

クレイトンは盛大に舌打ちをする。

「ガーギル、何を考えているのか分からん男だ。む、鍵が開いている?」

屋敷の鍵は開いていた。ガーギルは王宮にいるからだろうか。それにしても不用心だ。

「罠かもしれんな。しかし行くしかない」

クレイトンは、砂時計が創られて1ヶ月もしないうちに真実を知ることになる……。

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