第12話
シャフマ王国が誕生した。
ヴィクターは、ツザール村で背中に発現した赤い模様を晒した。そしてその超人的な魔力と『記憶力』を持って信仰を集めた。
武器は必要なかった。バラバラだった信仰はヴィクターの砂時計に集まり、国民は団結した。
王族制度と貴族制度は同じくできたばかりのストワード王国のものを参考に、ガーギルが制定をした。ロークはガーギルの下で騎士団を設立し、指揮した。中央に王宮が造られ、ヴィクターはそこで暮らすことになった。
誰もが望んでいた永遠と安寧、そして絶対神がシャフマ王国を創ったのだった。
国は平和になった。紛争がなくなったおかげで人々は手を取り合って資源を分配した。貧しかったが、それでも良かった。王族、貴族だからといって良い暮らしは保障されなかったが、そこがまたシャフマの国民にとっては良いことに映った。
ヴィクターの理想通り、国は安定を手に入れたのだ。
「砂時計のおかげだ」
民から慕われる美しい金髪の王子の口癖だった。
しかし、クレイトンは違った。
目が覚めると、ツザール村の真ん中で背中の砂時計の模様を村人に見せて『踊り』を踊っているヴィクターがいた。信仰の踊り。たしかに美しいが、クレイトンには恐怖の対象にしか見えなかった。
(何故……ガーギルは俺を生かした)
ガーギルは屋敷の中で行われた人体実験を見た自分を生かした。
(優しさのつもりか!クソが!!)
自分だけだ。真実を知っているのは。
「……ヴィクターが幸せなものか」
砂時計の魔法。
あれは必ずヴィクターの体を蝕む。
(それから……不審死も気になる)
アルヴィーがあの日、いなくなったのだ。同時に親のいない少年、青年が消えた。
「この国に何が起きている?俺が意識を失っている間に何が起きた?アルヴィーたちをころしたのは誰だ?」
「きっとガーギルだ」
「ガーギルがヴィクターを騙し、アルヴィーたちをころしたんだ」
「俺が砂時計を割らなくてはいけない」
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