第4話

3人はアルヴィーとスーシェにスープを何杯かもらい、お礼を言って隣村を後にした。

「ツザール村にもこの条例ができるって言っていたよね」

「食料には困らなくなるのか。ありがたいが……ローク、気づいたか?」

「……あの村には年寄りがいなかった」

「そうだ。まさかとは思うが……」

「ヴィクター!クレイトン!ローク!」

ツザール村に着くと、名前を大声で呼ばれた。3人は顔を見合わせる。

「どこに行っていたんだ。配給の時間だぞ」

「……隣村のやつらが言っていた通りだったな」

ロークが呟く。

「あぁ、例の条例か?子どもが並んでいる」

子どもたちはオレンジやバナナをもらっていた。

「あんな貴重なものを何故子どもだけに配るんだ?……ん?おい!兄貴!何故お前も並んでいる!!」

クレイトンが大股で歩いて行って、自分と同じ緑髪の大男の頭を殴る。

「いってぇ!く、クレイトン!」

「チッ……お前は大男だぞ!子どもの訳がないだろう!俺よりも10は上のくせに、恥ずかしくないのか!」

「いや……それがね。条例の『子ども』の資格、俺にもあるらしくて。30手前でももらっている人はいるよ。ほら」

クレイトンの兄が指さした先にはたしかに何人か大男がいた。

「チッ……その条件とやらを見るやつはどこにいるんだ」

「ここだよ、クレイトンくん」

「!?」

背後から声が聞こえて、思わず腰に差した剣を取ろうと構えるクレイトン。

(剣を没収されていたんだった!背後を取られるなど、不覚!)

「ははは、攻撃なんてしないよ。少し体を見るだけさ」

「そうそう、ロークくんやヴィクターくんもこっちにおいで」

「……」

3人は白衣を着た男たちについて行った。



「うん、ロークくんとクレイトンくんは問題はなさそうだね。配給をもらってきて良いよ」

「あ、あの。僕は……」

ヴィクターは名前を呼ばれなかった。

「うーん、君は長く生きることが難しそうだからね……持病があるんだろう?」

「はい……。でも、僕はロークよりも若いよ……」

「年齢は関係がないのさ、ヴィクターくん」


「あと何年生きることができるか。それが問題だ」


「……僕は、長くないの?」

「君の年齢だと、あと50年分は必要なんだ。寿命がね。だが君は見たところせいぜい10年も生きられない」

「そんな……。あ!隣村では貰えたんだけど……配給……」

「悪いが、そちらの村でも名簿の名前は消しておいてもらおう」

「え……それじゃあ、僕のご飯はどうなるの……?」

「別に前と同じだ。リンゴ1つでも生きられるだろう?」

「……」


条例の内容はこうだ

・健康な若い男女を『子ども』と定め、食料を配給する

・『子ども』への資源投資を最優先にする

・『子ども』の資源を奪ってはいけない、または『子ども』の配給を分け与えてはいけない


(子ども以外はいらないんだ……そして僕にはその資格はない……)

ヴィクターの寿命は短いから。

(でも、資源は限られているんだし、これでみんなが幸せになれるなら我慢できる……)

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