第25話 収穫



「さてついたぞぉ!我がゴッドオブエデン!」


「おぉ懐かしい…ってかずいぶんとボロくなったな。どうせ実験とかして爆発させたりしてたんだろ?」


ここ岡本研究所は、二階建てのコンクリート建物で郡山市インターチェンジ沿いにある小規模な研究所だ。

研究所には数十人くらいの研究員が働いているのだが、十数人は不正に在住している。ちなみにワケありで悟もここに住んでいる。


研究所の窓ガラスには所々ヒビが入っており、雑すぎる応急処置としてガムテープがほどこしてあった。建物周辺にはコンクリートの破片が散乱してあったりと、昔に比べてずいぶんとすすまみれのボロい外観になってしまっている。


「また爆弾とか作ってたんだろ。ってなんでこんなところに閃光発音筒落ちているんだよ」


助手席から降りたとき、ちょうど足元にはXM84のスタン・グレネードが転がっていた。しかも未使用のままで。


「おっと!それは私が貴様を迎えに行く直前に作り上げたものだ!返してもらおうか!」


「…ホント気をつけろよ?建物の老朽化ろうきゅうかもひどいし」


ここの研究所では主に情報や機械システムの研究開発が行われているのだが、爆弾やスタングレネードなどの危険物はジーニが趣味として開発している。

趣味でそんなものを作るなど普通じゃないと思うが、どれをとってもジーニは普通じゃないと公言できるやつだ。


ここは情報や機械システムの優秀なエンジニアや研究員たちが集まるだけあって、昨日使用したソフトもここで開発されたのだ。


「ふんっ!うるさいわ…崇高すうこうな目的のための必要な代償だいしょうというものだ!さぁ早く中へ入れ」


入口の重たいドアのノブを回して中に入ったとたん強烈な異臭がただよってくる。

においの元凶は明らか。目の前には数週間ほど溜まったごみ袋が山のように積んであり、鼻孔をむしばむほどの生ごみ臭が、それはそれはひどい。

実験好きな研究員ばかりいるのに、引火して火事になったりしたら大変……建物中煤まみれの理由はそのせいか。


たまったごみ袋の後ろはすぐ実験スペースになっており、やや広めの理科室みたいなところだ。二階はコンピュータ室兼研究員の寝床になっているが、そこにベッドなどは一切なく、宿泊するときは寝袋必須なのである。


「おやっ陸人君!ずいぶんと早い到着だね!」


真っ先にオレを出迎えてきたのは多田悟。

そしてもう一人は昨日の臨時保護者会で保護者として潜入してもらった堅物かたぶつで何かとオレに律儀りちぎな姿勢を見せる研究員。


「おお、陸人さん!またお会いできたこと、嬉しく思いますぞ。このような私を昨夜の潜入任務に派遣してくださり、光栄でございます」


「昨日はご苦労だったな。ジーニから聞いたが保護者同士の争いの火種を作ったそうじゃないか。保護者になりすましたり銀二の足止めは大変だったと思うが、そのおかげでこちらの作業はほぼうまくいった。…あと敬語はよしてくれ。あんたオレより二十歳くらい年上だろ」


「陸人さんのためなら、この身の命惜しくはありません。ささ、慣れない学生生活でお疲れでしょう。二階に上がり休んでいってください」


「お、おう」


二階は、やや暗めの部屋で照明など効いてはいないが、机の上に何台も並んだデスク用パソコンやノートパソコンの明かりがこの部屋全体を照らしてくれている。


部屋の中央には以前と変わらず、会議用の円形テーブルがどっしりと置かれており、休むように催促さいそくされたオレは、空いた席の椅子に座って研究員から差し出されたコーヒーを口にする。飲みながら周りを見渡すと、オレの知らないうちに一種の量子コンピュータまで新たに設置されていたり、誰かの趣味だろうか。

美少女のフィギュアまで飾られている。


それだけじゃない。この部屋に来て個人的に驚いたことがある。


この部屋には、ホコリが一切落ちていないのだ。


「あ、お気づきになられました?今日、陸人さんがここに来ると聞いて、急いで掃除したんですよ!きれいでしょう?」


「あぁそうだな…」


通りでオレに要件がなかった一階に、そのまま生ごみを放置してあったのか。


…ちゃんとゴミ捨てしてほしいものだ。


「ところでこの量子コンピュータはいつから……」


「それはね、僕たちが共同で作ったんだよ。驚いたかな?

これがあれば何かと便利だと気づいてね。かなり製作に手間がかかったけど、得られるメリットは大きい。君の計画の成功確率とか算出できたり、色々なシュミレーションパターンにも応用できるんだ。今後の利用価値はかなり大きくなると確信している」


悟からの説明を聞き、


「そうか…なら計画の内に入っている理化学研究所への潜入の手間が省けるな。

…だが気になるスペックのほうは大丈夫なのか?富士並みの計算力があると大助かりなんだが」


本来計画の内に日本理化学研究所内にある世界的に有名な量子コンピュータ富士のアクセス権を入手する方針が決められていた。


だが以前調べたとき、その研究所内の警備が想定以上に固く中に侵入するのは困難で、研究所内に入るときは、なりすまし対策として指紋認証や顔認証、危険物持ち込み検査まで、二十四時間体制で行われているのだ。


おまけに検査の精度は、科学技術革命の時代だけあって日々格段に上がっているらしく、顔のしわや骨格まで正確に機械に読み取られる。そのため富士から得られる恩恵は大きい反面、おかされるリスクや手間が大きい。


「そうだね…実際に使ってみた僕たちからは限りなく近い富士というべきかな。君に相談せずに勝手に制作したことは謝るよ。すべては僕の責任だ。罰ならいかようにも」


「なぜオレが罰を与えなきゃいけないのか分からない。逆に感謝しているほどだ。言ったろ。こちらとしては大助かりだと。その分のスペックがあれば特に問題はない」


周りでパソコン作業をしている研究員たちは、そのことを聞き一斉に安心の声を漏らした。


ホント彼らは、よくやってくれている。


今でもオレと同様、後戻りできない危険な立場にいる彼らは、自分たちが成すべきことを成し、その上でオレの協力までしてくれている。

そんな頼もしい彼らを手駒としか見てなかった昔の自分を殴りたいものだ。


例のソフトを悟と一緒に開発してくれたお礼も言い、一息ついてコーヒーを飲み終え、歩きながら部屋を見渡す。

かつてオレが座ってたデスクや使い古したパソコンキーボード、画面がバキバキになったデスクトップパソコンに触れながら、過去の自分がここにいた情景を鮮明に思いだす。こう思うのもなんだが、年をとったからこそ以前と然程変わりないこの部屋にノスタルジーを感じているのかもしれない。


「…守っていきたいな。ここは」


そのためにも今、優先してやるべきことがある。


オレは研究員のみんなを招集し、円型テーブルに座るように促す。


「挨拶なしで申し訳ないが、早速本題に入る。昨日入手した情報、鍵ファイルの解析は済んだか?」


威勢のいい返事と共に解析班の代表者が立ち上がる。


「はい!昨夜陸人さんから送られた例のファイルは凍結されていましたが、暗号解読班と共同作業し、正常に開示させることができました。

今から先程まとめ終わった情報をスクリーンに映し出しますね。それとお手元にあるタブレットに、その資料を送りましたので目を通しておいてください」


気になるファイルの中身だが……


•『基礎的訓練』のカリキュラム内容

•円谷幸吉校長調査報告書三通

•SSF入隊者及び協力者個人情報


と大きく分けてこれらの三つに分類される情報が入手したファイルに入っていた。

銀二の仕事用、私用パソコンのどちらかにこれらの情報があるとオレたちは前々から予測していたため、これなら円滑に話し合いが進めそうだ。


「陸人さん。失礼を申し上げますが、引き続き解析班代表の私から説明させていただいてもよろしいでしょうか?」


「一々オレに確認取らなくていいぞ。進めてくれ」


「ありがとうございます。では順に説明していきますね。

まず『基礎的訓練』のカリキュラム内容についてですが、このことに関しては陸人さんが実際にこの訓練を修了されましたし、皆さんも把握していますので、説明は割愛させていただきます。


二つ目は円谷幸吉校長調査報告書三通について。


この報告書を書いた方は福島県教育委員会の委員であり、佐渡銀二と同じ職場に就いておられ、円谷校長の行動を秘密裏に監視していた者と考えられます。

引き続き、この調査報告書の内容を掘り下げていきますと、まず一通目は生徒会から事情聴収されたものになります。


福島県立高等教育高等学校は、去年円谷校長が就任されてから高校内での制度は大きく変化しました。具体的には生徒会の仕事量の増加、高校の備品費、部費など予算案の大幅な改変、学校設備の一からの見直し、保護者会やその他連携して活動していた機関との自粛じしゅくなどが挙げられます。


更に今年度からは、学級代表委員というクラス代表者の一部の仕事内容を生徒会に委託されています。その他にも生徒会を通して行われる外部の交歓会などの中止が相次いでいるとのこと。


何より生徒会やその生徒会と水面下で連携をとっている教育委員会の活動内容などの守秘義務の徹底が求められているようで、双方の関係者のプライベートにも影響が及んでいるとのこと…」


近くに座る研究員がさっと挙手する。


「説明の途中すみません!プライベートにも影響があるということは、生徒会役員や教育委員である銀二さんたちは常日頃監視などされているのでしょうか?」


「そのようですね。円谷校長の護衛や警備の者の目が行き通っていると、調査報告書二通目にそう書かれております」


すべての資料に目を通し終え、少しずつ頭の中にある疑問が払しょくしていく。

かなり内容が濃く、ところどころ真実と虚偽が混ぜられている箇所もあったが、大半は信憑性のある情報とみなしていいだろう。

今の説明やオレがこれまで得てきた情報から分かったことは、


円谷校長は自分が統制しやすいように高校の制度の変革を行っていること。


保護者会やその他連携して活動していた機関との自粛は、情報が漏れだすことや自分の身柄を安易に公表したくないという理由のため。

生徒会や教師、校長に関わる仕事が学級代表委員にもあったのだが、その仕事を生徒会へ委託、一つの組織に中央集権的に情報を取り扱わせ、校長が統制しやすい仕組みにしたと考えるのが妥当だ。生徒会が多忙なのは実際に見てきたし、生徒会室がほかの教室と比べてかなり優遇されていたのは円谷校長の「ほどこし」だとうなずける。


生徒関係のトップが生徒会。そして生徒会や教職員を支配しているのが円谷校長という権力カースト制度が構築されている。


…にしても円谷校長はまるで王様のような立ち位置だな。権力を駆使して何もかも意のままに操っているように思える。


だが県立高校の校長がここまで自由な決定権を持つのは不可能なはず。だとしたら警察や裁判所を買収する以前に県や国全体に干渉かんしょうしているのか、あるいは…


高校の予算案の大幅な改変の資料に目を通すと、部費の削減、交歓会などの自粛や今日職員室で話した入学試験採点AI導入の持越しの件で、高校側の支出がかなり抑えられており、それ相応の金が浮くことが分かる。


この金はどう使われているかは推測に過ぎないが、何個か思いあたる点がある。


校長の護衛や警備員の雇用費。


規模が大きい高校の監視や校長の護衛役、拳銃などの武装費やそのメンテナンス費、警察や裁判所を買収するための費用。そうなると馬鹿にならない額になるはずだ。

仮に高校から捻出ねんしゅつした金を円谷校長が使用していると判明した場合、その不正を世に公表できれば円谷幸吉を校長の座から落とせる上に、銀二が知り得ないだろう、集積された未明の情報も奪取できる可能性も高くなる。


だが相手の手駒は未だ不明。安易に手を出せば蛇に噛まれるのは目に見えている。


「二通目は、円谷校長の護衛についてです。陸人さんのように高等教育校に潜伏させている生徒や教師がいることが示唆しさされていますが、残念なことにその方の身元情報は一切ありませんでした。それにこの情報の出所でどころは同高の生徒さんによる聞き込みのため信憑性しんぴょうせいは……」


「いやこの情報は真実だと断言できるな」


オレは間髪かんはつ入れず、彼の説明をさえぎった。

実際に高校潜入任務の話を銀二から聞かされた時、校長側の刺客が高校に潜んでいる、とオレに直接教えてくれた。まずそこで銀二が噓をつくメリットが考えられない。


それにまだ確証を得たわけではないが、教師陣と校長の不穏な関係性やオレと似た境遇きょうぐうを感じさせる『彼女』の存在が際立っている。

正直これらの情報には論理性に欠け、正確ではないがものばかりだが、実際にオレの目や耳で得てきた情報でしかない。


「陸人さんがそうおっしゃるなら、確実にそうでしょう。我々もそのことに関して入念に調べていく所存であります」


しかしそんなオレの話を聞いたみんなはなぜか納得してくれ、信用の眼差しを向けてくるのである。


本当に不思議な奴らだ……


だが今のオレならよく分かる。

怜央たちにも感じた、友情や仲間意識というものが胸の内側から何か熱いものとして込み上げてくるその思いを。


「悪いな。ぜひとも頼む。頼りにしている」


「任せてください…え!?な、何をおっしゃいますやら……」


とたんにオレ以外の奴らの目が大きく開き、その視線がこちらに集まるのだが…、どうしたのだろうか。


「陸人ぉ!お前、正気か!?」


「は?」


「高校の奴らに何された!? 何を飲まされた…まさか洗脳されているのか!?おいっ皆構え!」


ジーニの口から理解不能な言葉が耳に入り、彼からの命令が発した瞬間、みな手持ちの拳銃やデスクの下に常備してあるライオットシールドを取り出して構える。


「おいおい、これはどういうことだ?」


状況が一切読めないまま、仲間だと思い始めてきたオレに対して敵対態勢を示す。


「くそっ!我ながら浅はかだった…高校に着いたとき、貴様の身分や薬毒物検査をしないまま、ここへ招き入れてしまったことを…」


「いや、オレは正常……」


「なわけあるかぁ!今まで貴様の口から我々へのねぎらいの言葉を述べてきたことは一切なかった!なのに昨日、今日のお前の態度や性格は一変し、穏やかになっている!お前が自分を佐渡陸人だと思っているのなら!

本人だと証明できる身分証明書、なりすましの可能性があることも考慮こうりょして体格指数などのチェックをさせてもらう!後は…そうだな。

我々と過ごした地獄の日々について、証言…言質を取らせてもらう」


初めての学校生活に飛び込んで、オレは本当に人格や態度が変わってしまったのだろうか。いや、教師や同年代の友達と関わり合ったりして、気分が良くなったり、仲間意識が強くなっただけで、流石に人格などの根幹こんかんは変わってはいないだろう。


「なら最後の地獄の日々について、簡潔に答えて紛れもない本人であることを証明してやる」



_________



本当に要点だけを抑えて、彼らと過ごした日々について語り、オレが佐渡陸人本人だということを証明させた。


「疑って悪かったな、陸人。こうまでしないと敵か味方の判別は難しいのだ…」


「柄でもないことを言ったオレの責任だ。すまない」


「本当に変わってしまったみたいだな…お前。皆すまなかった!武器を下ろせ!話の続きに戻るぞ!」


「はい!」


ジーニの合図とともに、武器がすぐ下ろされ、先程までの話し合いの場が再構成された。


「では気を取り直して…」


「ちょっといいか。三通目は円谷校長の不正行為で、被害にあった企業について…さっきこっそり調べていたんだが、どの企業にもそれぞれ『共通点』がある。その内容についてはお前たちのメールに送っておいた。説明時間も惜しいから、後で読んで調査を行ってほしい」


「陸人…お前、いつの間に調べてたんだよ」


「資料全部に目を通した後、すぐに調べた」


「ふんっ!まぁ私の方がお前より優れた頭脳を持っているが!……はぁ…ったくどんな速読しているのやら」


「さすがは三位。いえっ、申し訳ございません。失言でした!調査の方はお任せください!」


禁句を口に出してしまい、周りのやつからものすごい形相ぎょうそうでにらまれている。昔話をした後だし、仕方ないだろうな。オレは特に気にしてはいないが、彼らの場合は別だ。


「で、では。最後のSSF入隊者及び協力者個人情報についての説明をしていきます。

まずSSFとはState Secrets Force、国家機密部隊の英語表記の略称で、陸人さんや銀二さんが所属する『日本対テロ組織及び国家機密情報取締中央部諜報』

通称『別隊』のことは皆さんご存じかと思います。そして今回得られた情報の中で、一番の秘匿ひとく情報と言っても過言ではない内容まで記載されていました。


正直資料に目を通した我々も目を疑いました……。部隊に入隊しているメンバーに加え、『協力者』の情報も含まれており、メンバーの顔写真と個人情報まで記載されていますので直ちにご確認ください」


その資料には別隊に所属するオレや昔の顔なじみのやつの細かいプロフィール資料が一括でまとめられており、それぞれの任務参加回数、任務達成率まで算出されていた。


『協力者』とは身辺調査を受けた一部の公務員、民間業者のことを指し、彼らは外務大臣や防衛大臣の長が指定した、国家機密情報や特定秘密情報を取り扱うことができる人間。


文字通りオレたちSSFの味方として任務の手伝いをしてくれる。


「協力者個人情報の8ページを見てくれ。伝えておきたいことがある。彼女の本名と高校内での偽名はさほど変わらない。実際彼女とは面識があり、接触を図られた。あちらもオレの身元に気付いてはいると思うが、ある程度こちらのことを知られていると踏んでいいだろう。協力者とはいえ、かえってその立場を利用して悪事を営む者もいる。念押しで言っておく。


……特に平野ツバサには要注意してくれ」



この資料に目を通して、ただの教師ではないというオレの勘が的中したことよりも、彼女への警戒心がより強まった。


今日平野先生は、オレの入学試験の答案の件では協力姿勢を見せたが、逆にこちらの弱みを握られているとも言える。

いつ協力者から裏切り者に変わるかどうか分からない危険人物である。


これらのことも彼らに伝えておくべきだと判断し、発言しようとした途端。

先ほどからパソコンをいじっていた悟が立ち上がる。


「ちょっといいかな。平野ツバサについて調べてみたけど……もちろん!逆探知されないようにしてたよ!?

でね、15ページ目の同じ協力者、須賀真理子すがまりこは大学時代の平野ツバサの恩師だったことがわかったんだ。4ページ目の沖谷原おきやげんっていう男も須賀真理子の幼馴染だということも判明した。一体この共通点は何なんだろうね……」


そう言って、オレに「ここまで聞けばもう、君には分かっただろ」という風な顔を向けてくる。


「恩に着る悟。その情報はありがたい」


勝負はあまり好きではないオレだが、悟からのこの情報を元に勝ち筋が見えた。他者を出し抜いた優越感というものだろうか。こんな感情は久々であり、心の奥でほくそ笑んでいる自分がいる。


「おっ…何かいい案でも思い浮かんだのかな?」


悟とジーニはニヤけ顔でこちらをうかがってくる。


「まぁちょっと意地悪なことを思いついてな…」


またしても似ても似つかないオレの発言で、この場の全員が一瞬にしてフリーズする。「こいつこの場で何を言ってるんだ」と言わんばかりの顔だ。


「まったくぅ〜らしくもないな!お前、学校通ってから頭のネジ緩んだんじゃないかぁ…ふっふぅくくくはははは!」


「元々ネジがないお前に言われたくはないな。それと解析班、頼みたい仕事がある」


「はい!任せて下さい!」


一斉にして解析班が立ち上がる。


まだ何も用件は言ってないんだが……まぁいい


「至急須賀真理子と沖谷原にアポをとって欲しい。オレの名前と高校名を示してな。確認出来次第、すぐに連絡をくれると助かる」


「了解致しました!…恐れ入りますが、その理由をお聞かせ頂けないでしょうか?」


もちろん理由なしや考え無しで動くほどここの研究員たちは馬鹿ではない。ここに限らず当たり前のことだ。


「あぁ、至ってシンプルだ。……彼らと『友達』になる。それだけだ」


驚きの声を上げ、口が空いたままみんなしばらくその口が閉じることがなく、見ていて愉快ゆかいな光景だった。











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