第12話 どう? わたくしのモノ……大きくて、立派でしょ?
多勢を頼りに、次々と炎や雷、氷の矢などが河原の向こうから飛んでくる。
「……エレクティッド……パオパオ……風の杖!」
ティナが河原から巻き上がる砂塵とともに、魔法の杖を頭上に振り上げた。
ティナの魔法の杖が作り出した風が、無数の小さな竜巻になりそれらの攻撃をはじき返した。
「やるわね、この娘!」
「キャーッ! やられたの私たち!?」
「じじじ、実力を計ったって話。やられた訳じゃない!」
魔法の杖を手にした男の娘たちがぐるりとティナたちを囲み、その中でも目立つ三人が前に出てきた。
三人はそれぞれの手に自身の背丈より少し短い杖を手にしていた。
ティナの手にするそれとは頭一つ二つほど短い杖だ。
長さの違いこそあれ、それぞれの杖の先には宝石と飾りが付いており、二つの毛糸でできた玉が付いているのはティナのものと同じだった。
「わたくしは、エイミー。以後お見知り置きを。そして、すぐさようならでしょうけどね」
「キャーッ! 私、ビビ! ビビっと来てね! キャーッ! でもやっつけちゃう!」
「ししし、シシリー……邪魔するなら、倒す!」
「……」
「見たところ、通りがかりの魔女とその弟子のようね。中途半端な親切心で、わたくしたちの邪魔はしないでくださる?」
「最初から喧嘩腰みたいだけど……君たちは、この娘の何?」
三人の中でも常に胸を張って話すエイミーと名乗った男の娘が、ずいっと一つ前に出た。
どこか人を下に見ようとするかのように、エイミーは張った胸で作り出した角度でティナたちを睨めつけるように見る。
ティナが警戒に体を半身にして魔法の杖を構えた。
ティナの横でシザーリオも剣を改めて構え直す。
「……」
その二人の背後では、気を失ったままの男の娘の頭を抱えてやりながらブラッディレイクの魔女がティナの背中を見つめている。
「同じ魔女に師事する弟子ですわ。その娘を連れ戻しに参りましたの」
「弟子同士? その割には、強引で険悪な感じするけど?」
「あなたには関係ない話ですわ! これはさる高貴な方のご指示なの! 一分一秒も無駄にできないでしてね! さあ、すぐにその娘をお渡しなさい」
「キャッー! エイミーかっこいい!」
ビビと名乗った男の娘は、常にせわしなく飛び跳ねたりうずうずと左右に体を振っている。
元気が有り余り、その場で止まっていることができないタイプのようだ。
「えええ、エイミー……問答無用でいくべき!」
シシリーと名乗った男の娘は、まぶたの下に病的な隈を作りやや腰をかがめて杖を構えている。
ブツブツしゃべったかと思うと、最後は癇癪を起こしたように声を荒げるのが特徴だった。
「この娘溺れていたけど?」
「ええ。わたくしたちが、川に突き落としましたわ。言うこと聞きませんでしたから」
「突き落とした?」
「逃げるからですわ」
「……」
「あら、生意気な顔ね。やる気? 言ったでしょ? わたくしたちは男の娘でも魔女。そしてわたくしたちの師匠は、誰もがその名を知る大魔女様。あなたみたいな一般の女の娘魔女なんか、相手にならないわ」
「大魔女……その弟子の男の娘……」
「そうよ! ちなみに男の娘の実力は、珍獣が変化する魔法の杖に、ある意味現れるわ」
「……」
「どう? わたくしのモノ……大きくて、立派でしょ?」
エイミーが自身の背と比べると、足元からアゴの下辺りまでの長さのある杖を自慢げに前に突き出した。
確かにそれは周りを囲む他の男の娘たちが持つどの杖よりも長く作りも立派だった。
「キャーッ! エイミー! 大きい! 立派! かっこいい!」
「ででで、でも……大きさなら、あの娘の杖の方が上……キーッ! 女の娘魔女の杖なんて、作り物! 不公平!」
「あはは、そうね! あれが男の珍獣の杖なら、立派なものでしょうけど。所詮女の娘魔女の杖は作り物。いくらでも現実離れして、本人の希望通りに大きく立派に作れるものよ!」
「キャーッ! でも、あれが男の娘の魔女の杖だったら?」
「えええ、エイミーよりも大きくて立派……あのお方クラス!」
「あははっ! ビビ、シシリー! あなたたち何を言ってますの! あんな大きくて立派な男の娘珍獣! 確かにあのお方以外で、見たことありませんわ! さぁ、あなたたち! あのお方の為に、あの娘を連れ帰りますわよ!」
エイミーのその命令に、背後に控えていた男の娘集団が一斉にティナたちに飛びかかった。
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