第14話 彼女はAI

 そして、迎えた文化祭当日。家族にはあれだけ念を押したので学校に来ることは無いだろう。


「内装は十分。備品や食材の材料も予定通りですね」


 柚月のおかげで寸分違うことなく、準備は順調に進めることができた。いざ本番なのだが、俺はどうしてもまだ覚悟ができていない。俺、というより男子全員だろう。


「あぁ……後は衣装だけど……」

「衣装は古谷さんが持ってきてくれるはずですが──」

「お待たせしましたぁ!」


 あぁ……来てしまった。男子全員の心の声が一致した瞬間だった。


「では着替えましょう」


 柚月の声を合図にして男子女子、それぞれ分かれてメイド服に着替える。


「古谷さーん、あんまり短いのとか嫌だよー?」

「あー、ちょー恥ずかしー」


 女子はイヤイヤ言いながらも楽しそうだった。反対に男子は──。


「はぁ……腹を括るか」

「ま……忘れられない思い出にはなるだろうし、いいんじゃね……」


 この温度差よ。男子の方は絶望の色が強かった。


「行こうぜ、蓮。オジキ」

「「あぁ……」」


 あっくんは特に気にしていない様子。これだから陽キャのメンタルは。俺とオジキはため息を吐きながら布で仕切られた簡易更衣室へと向かった。


「……お?」

「あ、こんな感じかぁ」

「これならまぁ……」


 用意されたメイド服を見ると絶望感が少し和らいだ。黒のワイシャツの上にエプロンを着て、下はかなり長いロングスカート。カッコいい寄りのメイド服となっていた。


「お、これならいいじゃん」

「……ちょいサイズがきちぃな」

「オジキはデケェからなぁ。めっちゃ店長の風格出てるぞ」

「誰が店長だ」


 あっくんとオジキもメイド服に袖を通す。しかし、俺はどうしてもやるせないことがあった。


「……俺が着せられたのはなんだったんだ」


 俺がモデルになった時はこんなカッコイイ感じではなく、ガチのフリフリメイド服だったんだが……あの衣装はどこで使われ──いや、これ以上は考えないようにしよう。俺は現実から目を背けてメイド服に袖を通した。



 教室に戻り、メイド服に着替えたクラスメートが集結する。男子も女子もふざけ合いながら互いに衣装に身を包んだ姿を褒めたり貶しあったりしている。最初はどうなることかと思ったが、意外と悪くないじゃないか。男女混合メイドカフェ。


「柏木さん」

「ん、あぁ。どうかした──」


 柚月の声がしたので振り返ると、そこには完璧にメイド服を着こなした柚月が立っていた。男子と違い、女子は太腿ぐらいの丈のスカート、頭にはカチューシャをつけて胸にはちょこんとリボンが着いている。


「どうでしょうか。メイドに見えますか?」

「どうって……に、似合ってる、んじゃね?」

「疑問系ですか」

「あー似合ってる、似合ってますよ!」

「ありがとうございます。柏木さんも似合っています」

「……そうですか」


 くそっ、言わされた気がしてならない。負けた気分だちくしょう。


 ピンポンパンポーン、アナウンスが校内に響き渡る。

「それでは、これより文化祭を開催いたします」


 ついに始まった。早速メイド長柚月愛が指揮を取る。


「では、各自持ち場についてください。男女混合メイドカフェ、今開店します」


 おー! とクラスが一つになり声を上げる。さぁ、俺も頑張らなくては。



「3番テーブル! パンケーキセット2つ!」

「1番テーブルにアイスティー1つ!」

「5番テーブルにアイスティー1つ! オレンジジュース1つ! あとコーラ2つ!」


 結論から言えば、男女混合メイドカフェは大人気だった。ランチタイムでなくても人が常時入っており、ランチタイムはそれはもう大変だった。


「委員長ー! 材料どこにあったっけ!?」

「私が持ってきます。佐藤さんはパンケーキ作りに専念してください」

「あれ……5番テーブルの注文って……」

「アイスティーとオレンジジュースが1つ、コーラは2つです」

「委員長ー! ホールに人手がー!」

「私が出ます」


 ……もう柚月だけでも店回るんじゃね? そう言いたくなるぐらいに状況判断、ヘルプ、指示出しまで全て完璧だった。しかし、それでも人手は足りていない。


「委員長ー! キッチンに人手がー!」

「それも私が出ます」

「それは無理だろ……」


 このままだと柚月が分身でもしそうな勢いだ。

「外で呼び込みしてる連中に声かけてくる。それまで持ち堪えてくれ」

「……ありがとうございます」


 柚月ほどではないが、腐っても実行委員だ。俺は柚月のサポートに徹した。



「ふぅ……ようやく落ち着いてきたな」


 昼のランチタイムを終えて、ようやく店が落ち着きを取り戻してきた。あれだけ並んでいた列も今ではなくなり、テーブル席に座っている客だけとなった。そのためクラスメートほとんどが休憩に入っていた。


「さて、俺もそろそろ休憩かな……」


 そろそろ休憩組が戻ってきて交代の時間だ。ようやく休めると思ったその時だった。


「ごめん柏木くん! ちょっといいかな……?」

「佐藤さん? どうかしたのか?」

「ちょーっと厄介そうなお客さんいてさ……」

「……?」


 ホールに出ると、何やら客と柚月の間で揉めている。正確には柚月ともう一人の女子……あれは菊池さんか。それと男の大学生ぐらいの客2人だ。


「だから、んなことしてねぇって」

「ではスマホを見せてください」

「いや、個人情報をそんなホイホイ見せれるかよ、なぁ?」

「そーそー。なぁ、キミ達の勘違いだったんじゃないかな? 俺たちはただ食事をしに寄っただけだってば」

「……」


 菊池さんは今にも泣き出しそうだった。柚月は全く臆することなく大学生に立ち向かっているが、一向に事態は解決しそうになさそうだ。それに、他のお客さんからも注目され始めている。


「ひとまず佐藤さんは先生を呼んできてくれ。こっちは俺がなんとかしてみる」

「う、うん。分かった!」


 佐藤さんに先生を呼んできてもらう。さて、その間は何とか場を収めなくては。


「えーっと、何事?」

「柏木さん」

「お、そこの女装男子。ちょっと聞いてくれよ。この子達にさぁ、盗撮したって言われてるんだよね俺ら」

「盗撮?」


 柚月の方を見るとこくりと頷いた。店では無断での写真撮影は禁止している。家族や友達が来たときなどで、本人の許可さえあればOKというルールに決めていた。


「入り口に立てかけた看板に書いてありますが、無断での写真撮影は禁止しています。ですが、菊池さんの証言ではこの方達に写真を撮られた、と」

「……はい。スマホの撮影音が、この人たちから……」

 消え入りそうな声で菊池さんは話してくれた。


「おいおい! 言いがかりもそこまでにしろよ!」

 バン! と男がテーブルを叩く。ビクゥ! と菊池さんの肩が跳ね、柚月の後ろに身を隠す。完全に萎縮してしまっている。


「あーお客様おやめ下さい。えっと、撮ってないならスマホ見せてくれればいいんですけど……」

「だーかーら! 撮ってねぇから!」


 男がまたもやテーブルを叩く。サルかこいつは。

 早く先生来てくれ……と心の中で祈っている中、柚月が動いた。


「そこ。スマホを机の下で触らないでください。机の上に置いて操作しないように」

「なっ……」


 驚いた。俺も菊池さんもびっくりだ。柚月が言うまで気づかなかったが、テーブルを叩いた男とは別の男がスマホを触っていたらしい。テーブルを叩いて注意を惹きつけている間の犯行を柚月は見逃さなかった。なんて冷静な洞察力だ。


「ちっ! あーもう、鬱陶しいわ。おい、行こうぜ」

「待ってください。まだデータが──」

「うぜえって!」


 マズイ。こいつ手を出すつもりじゃないか。そう思った俺はすかさず柚月と男の間に割って入った。


「ま、まーまー。落ち着いてくださいよお客さん」

「あ? 舐めてんのかテメェ」


「へっ、女の前だからって格好つけやがって。謝ったら許してやってもいいぜ。この女が間違ってましたってな」

「……謝るかよ」

「あ……?」

「俺は柚月を信じてる。柚月が間違うはずなんかないからな……!」

「……!」

「て、テメェ……!」


 ガッツリ胸ぐらを掴まれてしまう。これは逃げられそうにない。

 精一杯の抵抗をしてみたものの……やっぱり怖い! 大学生に胸ぐら掴まれるのマジでこえぇ!


 何か、何かこの状況を打破する一手は──そうして周りを見たとき、視界の端で異様なものを見つけた。異様ではあるが、これを利用しない手はない。


 肺にいっぱいの酸素を送り込み、叫ぶ!


「て、店長おおおおおお!」


 大学生らが一瞬怯んだ。いきなり大声を出したのだから、そりゃビックリもするだろう。


「て、てめっ……! 何大声出してやが──」


「だから〜、店長じゃねぇって〜」


 しかし、彼らは先ほどとは比べ物にならなくぐらいビックリする。大学生2人が振り返ると、そこにいたのは明らかに場違いな風格の男だった。上下ぴっちりとしたスーツに190cm近い身長。サングラスまでして口にはタバコ──ではなくココアシガレットを咥えている。


 衣装一式その他諸々どこで手に入れたかは知らないが、ばっちり決まってるぞオジキ。俺は心の中で親指を立てた。


「な……は……!?!?」


「……」


 オジキが大学生2人を睨む。本人は睨んでいるつもりはないだろう。きっとどう話題を切り出せばいいか迷っているだけだが、十分な威圧感だ。


「……なにしてんの?」

「「す、すすす、すみませんでしたあああああああああああああああああ!!!」」


 あっさりと自分たちの非を認めてくれた。まぁ初対面でオジキを見れば仕方がないことだ。



 その後、大学生2人は後で来た先生にきっちり対応してもらった。俺と柚月と菊池さん3人は詳しい事情を説明するために同行。説明を終えた頃には予定の休憩時間は終わってしまった。それ以降は特に揉めることなく、文化祭は終わりを迎えようとしていた。


「結局、ろくに文化祭回れなかったな……」


 今の時間はグラウンドでキャンプファイヤーをしてるみたいだ。そこでダンスを踊ると恋愛が成就する、などと噂話が流れていた。ふん、くだらん。


 あっくんは女子に誘われているようだ。さすが陽キャだ。オジキは生放送があるとかでどっかで隠れて見ているらしい。本当にブレないなアイツ。


 俺はもちろん誘われていない。色々と可哀想な俺にあっくんとオジキから慰めのブツをいただいた。屋台で売られていたお好み焼き、ジュース、綿菓子、焼きとうもろこし、焼きそばなどなど。まぁアイツらが買いすぎて食いきれなかっただけだろうけど。


 しかし、俺には有り難かった。これで少しは文化祭の気分を味わえるだろう。まだ味わえていないヤツも、もう1人いるだろうし。


 教室を覗くと……いた。窓の側に立って、外からキャンプファイヤーの様子を眺めているようだ。


「……」


 後ろからそっと近づく。この際だから驚かしてやろうではないか。


「柏木さんは行かないんですか?」

「うおっ!? き、気づいてたのかよ……」

「はい。柏木さんの足音は覚えてしまいました」

「そいつは恐ろしいな。……差し入れ、持ってきてやったぞ」

「ありがとうございます」


 柚月の隣で、ビニール袋の中を見せる。


「ほら、好きなの取ってけよ」

「いいのですか?」

「あぁ。これだけあるしな」

「では、これと、これと、これと、これと……」

「……すげぇ腹減ってたんだな」


 ほとんどの料理を持っていってしまった。柚月はほとんどクラスの為に動いていたのだから、当然の報酬だろう。


 窓の側に椅子を2つ持っていき、2人してキャンプファイアーを見ながら食べる。チラッと横を見ると、柚月はモグモグと小さな口を動かしながら食べている。どうやらお気に召したようだ。


「……まだお礼を言っていませんでした。あの時はありがとうございます」


 お礼、というのは大学生と揉めた場を収めた事だろう。


「別にいいよ。あれはオジキのお手柄みたいなものだし」

「柏木さんは私を信じると言ってくれました。私は、それが一番嬉しかったです。ですから、ありがとうございます」

「……おう」


 面と向かって礼を言われると照れる。俺は焼きそばを食べながらキャンプファイヤーの火に視線を移した。


 綺麗だ、と思うのと同時に寂しいとも感じる。それは文化祭が終わることに対してだろうか。それとも、柚月と一緒の時間が減るからだろうか。


「柏木さん」

「ん?」


 一人黄昏ていると、柚月から声がかけられた。


「踊りましょう」

「……は?」

「踊りましょう」

「いやいや……聞こえなかったわけではなく……え、踊る? 俺とお前が? ここで?」

「はい」


 マジで言っているのかコイツは。いや、柚月のことだ。ダンスで締めなければ文化祭を終えたとは言えません、なんて使命感からの提案だろう。


「柏木さんと踊りたいです」


 柚月が、踊りたいと言った。それは使命感でも義務感でもなく、ただの願望だった。真っ直ぐ、こちらを見つめてくる。これだけ見つめられて断れる男子などいるはずもない。


「……分かったよ」


 俺は立ち上がり、柚月に手を差し出す。柚月の手が俺の手の上に乗る。柔らかくて、温かくて、女の子の手だった。



「……」

 結論から言うと、俺にダンスの才能は微塵もなかった。


「いち、にー、さん、違います。右足です」

「あ、はい……」

「ではもう一度。いち、にー、さん」


 柚月は完璧にダンスをこなしていた。芸術面でもコイツに欠点はないらしい。反対に俺はロボットのようにカクカク動いている。これではいつもと逆だ。


 あまりのセンスのなさにもう止めにしないか、と言おうと思ったが、柚月の真剣な顔を見ていると言えるはずもなく。


「今のところ、左です」

「うぐ……」

「大丈夫です。柏木さんならできます」


 柚月の指導は続く。そして、注意されていく度になんとなく感覚が掴めてくる。何度目かの試行の末に、ついに──。


「……!」

「……い、今のはうまくできたんじゃないか?」

「はい。まだ怪しいところはありますが、今までで一番うまくいったと思います」


 謎の達成感。慣れてない動きをずっとしていたせいか、2人して息があがっている。


「……ははっ。疲れた」

「はい。でも、柏木さんはできると信じていました」

「……その根拠は?」

「根拠……?」


 少し考え込んだ後に、柚月は言った。


「……ふふっ。なんとなく、です」

「────」


 柚月の口からなんとなく、という曖昧な言葉が出ることに驚いた。そして、不意打ちの笑顔に息が詰まる。


 もうすぐ文化祭が終わる。俺は──今ここで言うしかないと思った。


「なぁ、柚月。前に俺のことを知りたいって、言ってたよな。それで、俺もお前のことを知りたいって、訳わかんない返事をしたと思う」

「……はい」


「俺がお前のことを知りたいと思ったのは、お前が人工知能を搭載した機械、つまり──AIなんじゃないかと思ったからだ」


「……」


「すまん、結論から言うべきじゃなかったかもしれん。えっと……俺は、今までお前みたいに完璧な人間は見た事がなかったんだ。人間なら誰しも、得意不得意があるもんだろ? でも、お前は勉強も運動もできて、容姿だってその……整ってて、不完全なところが全くなくて……だから、お前はAIなんじゃないかって」


 柚月は何も言わない。俺は続けて話す。それは罪を告白して許しを乞うようにも見えたかもしれない。


「……でも、柚月を見てるうちに、人間らしいところもあるなって。好きなものにはよく食いつくし、ルールをバカ真面目に守ってる不器用さもあるし……完璧だけど、完璧じゃないところもあって……」

「悪口ですか?」

「……悪口かも」


「……」

「……悪い。自分でも分からなくなっちまった。こんなバカみたいな仮説立てて、悪かった」


 柚月の無言の圧力が数秒続く。無限とも思える沈黙の後に、柚月が口を開いた。


「柏木さん」

「……は、はい」

「柏木さんの仮説は、まだ正しいと証明できていないという事ですね?」

「あ、あぁ。そうだけど」

「では、私はその仮説が間違っていると証明します」

「は? 何言って──」


 柚月は、俺の手を掴んだ瞬間、胸に手を押し付けられた。

「……は?」

「……」


 頭がフリーズする。そして、自分の手の位置を再確認。うん、ガッツリ柚月の柔らかい胸を触って──


「ちょ、ちょっと待ったぁ!? お、おま、お前何してんの!?」

「分かりますか?」

「な、何が!?」

「私の鼓動を、感じますか?」

「いや、こんな状況で──」

「いいから」


 何とか心を落ち着かせてみる。手から伝わる柚月の心音。それはうるさいぐらいに、ドクンドクンと速い間隔で手に打ち込んでくる。


「私の顔、見えますか?」


 言われて柚月の顔を見る。顔も、耳も、見た事ないぐらい真っ赤になっていた。しかし視線はずっとこちらを見たまま。まるで世界に2人だけになったような感覚。


「胸の感触や心音、さらに顔のほてりなど、機械にはこんな反応、できますか?」

「……できない、です」

「では、私は人間ですね」


 柚月が手を離したので、俺も胸から手を離した。まだ胸の感触が手に残っている。


「柏木さんの仮説は間違いだと証明したと同時に、私の仮説が正しいものだと、今確証を得ました」

「柚月の仮説……?」

「はい」


 柚月は胸に手を置き、一息つくと口を開いた。


「私は──あなたが好きです」

「────」


 突然の告白。まるで理解が追いつかない。


「あなたを見ていると心が揺らぎます」

「……」

「あなたといると心拍数が乱れるのです」

「えーと……」

「あなたの奇怪な発言のせいで正常な状態が保てなくなるのです」

「悪口か……」

「はい、悪口です」


 はっきりと言いやがった。


「でも、好きです」


 またはっきりと言いやがった!


「……俺は、お前みたいに完璧じゃない」

「構いません」

「勉強だってできないし」

「知っています。座学の成績は総合的に中の下。一番得意な教科は数学」

「運動もできない」

「知っています。5段階評価でギリギリ3です。体育の授業はいつも憂鬱な顔をして如何にして自分が動かずに済むか計算して動いていることも」

「観察しすぎだろ……! よ、容姿だって──」

「どこにでもいる平凡な顔だと思います」

「……ないじゃん! 俺に惹かれる要素皆無じゃねぇか! ……ということはだ! お前の仮説も間違って──」


「誰よりも、私を見てくれました」


 柚月は、自分が納得する確かな答えを出していた。


「無愛想だと言われる私を、それでもいいと、一緒にいて退屈しないと言ってくれました。それが何より、嬉しかった」

「────」


「これで、私の仮説が正しいと分かっていただけましたか? まだ何か不足がありますか?」

「……いいや。ないよ。俺の負けだ」

「私の勝ち、ですね」


 今まで見た中で、一番の笑顔で勝利宣言された。

 この日、俺の仮説は間違いだと証明されてしまった。

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