幕間
「あーあ、私も文化祭行きたいなー」
迎えた文化祭前日、家のリビングでゆっくりしていると若菜からチラチラとこちらを見ながら言われた。
「お前は部活だろうが。頼むから学校に行ってくれ」
「ぶーぶー。せっかく愛先輩に会えるチャンスなのにー」
「じゃ、お母さんは行こうかなっ」
「家事をしていてくれ。頼むから家にいてくれ」
「お願いしてばっかりねぇ」
それはそうだ。普通の文化祭なら来たいならどうぞご勝手に、と言っていたところだが、今回ばかりは話が違う。家族にメイド服姿など見られたら一生の恥だ。
「じゃ、そういうことで。いいか、絶対に来るんじゃないぞ」
「「ぶーぶー」」
二人のブーイングを無視して俺は自室に逃げた。
「ふぅ……明日はいよいよ文化祭、か」
せっかく柚月と一緒にいる時間が増えたというのに、柚月がAIであるという確証が得られることはなかった。
「……ったく、もう少しAIらしいところを見せてくれてもいいのにな」
ルールをバカ真面目に守る頑固で。好きなことになると饒舌で。時間には厳しくて。
でも、一緒にいると楽しくて。
そんな日々を過ごしていくうちに、自分の中の考えが揺らいでしまった。
「……あいつ、ただの人間なのか?」
しかし、認めたくはない。勉強も運動もできて容姿も完璧。そんな人間は今まで見たことがない。あいつに会うまでは。
そして、柚月が人間ならば、今抱いている感情は、AIに対しての知的好奇心ではなく、もっと特別な──。
「……あー、くそっ。明日こそ、いや明日だからこそ見つけてやる」
早めにベッドに潜り込む。今日はいつもより眠りに落ちるのが遅かった。
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