AIの気持ち②
お風呂から上がり、ベッドに腰掛ける。
今日の分の復習は完了。明日の分の予習も抜かりなく。後は気になっていた文庫本を読んで、寝るだけだ。
「……」
今日の事を振り返る。以前までは、その日を振り返るときに思い出されるのは、授業の光景や先生に任された雑用だったりするのだが、ここ数日は違っていた。
柏木蓮。最近は彼の姿の印象が強い。今日は家にまで上がってしまったのだから、当然といえば当然だが。
「……」
胸に手を当てる。やはり、彼に名前を呼ばれたり、彼に触れられた事を思い出すと、心拍数は多くなり、体温も心なしか上昇している気がする。
正確に測ってみる事にする。スマホを起動し、買ってもらった時既にインストールされていたストップウォッチのアプリを起動。何も考えず、ドクンとした瞬間にタップして1分間回数を数える。結果は──。
「75回。平均的ですね」
次に、柏木さんの事を考える。名前を呼ばれたことや、お母様に『ねぇ、チューはしたの? チュー♡』と聞かれた時、妹さんに『ぶ、ぶっちゃけどこまでヤッたんですか!?』と聞かれた時のことを思い出す。
「……ふふ」
柏木さん、かなり慌てていたな。その様子がおかしくて、面白くて、可愛らしくも見えた。
おっといけない、少し数え漏れていたかもしれない。いつの間にか1分経っていた。結果は──。
「……68回。誤差ですね」
やはり気のせいだったのだろう。30秒ほどタップし忘れていたような気もするが、これ以上は時間の無駄だろうと切り上げる。
「……やはり、まだ分からない」
どうして、彼を意識してしまうのか。彼が、自分の心境に影響しているのか。答えは出てこない。
それに、彼も彼だ。どうして最近私のことをよく見ているのだろう。体育の時も目が合ったし、あちらも意識していることは間違いない、と思う。
「……」
モヤモヤする。スマホを使って、検索する。
『視線 気になる なぜ』
10分ほど、色々なサイトを見て有識者の意見をインプットしていく。
それは好意かもしれない。危険なサイン。偶然。様々な意見がネット上に飛び交っている。
そして、多数を占めていた意見、それは──。
「なるほど。偶然、ですか」
視線を感じるのは相手が偶然こちらを見ていた時、偶然こちらも見ていただけに過ぎない。それを後付けで視線を感じた、と証言しているだけだ。
「……」
しかし、やはり納得がいかない。なぜ納得がいっていないのが、自分でもよく分からない。
最近、自分の事なのに分からないことが増えてきた。でも、不思議と嫌ではない。
検索を続ける。その日は予定していた就寝時間を10分ほど先延ばしにした。
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