AIの気持ち①

「お、覚えてろよぉぉぉぉ!」


 そう言って彼、柏木蓮は私の前から逃げていった。

 彼の行動原理が全く分からない。今日1日、私を目で追っていた理由は何だと聞いた途端、逃げられてしまった。


「……褒められた」


 嫌味に聞こえるかもしれないが、褒められることなど日常茶飯事だ。先生からは成績がいいと褒められ、同じクラスの人からは体育の授業などで柚月さんのおかげで勝てたと言われる。


 そう、これは慣れていることだ。珍しいことではない、ないはずだが。


「……褒めすぎでは」


 あんなにも面と向かって異性から褒められたのは初めてかもしれない。それもベタ褒め。家族や先生から褒められるのとは全く違った。


 何というか、こう、ただひたすらにむず痒い。


「……最後に何を言おうとしたんだろう」


 何かを伝えようとしていることは分かったが、柏木くんは言葉を詰まらせてしまっていた。


 ……告白? まず一番初めに思いついたのはそれだった。

 しかし彼とは全くと言っていいほど接点がない。会話どころか挨拶すらまともに交わした記憶がない。席は隣、それぐらいだろう。


 一目惚れ、というやつだろうか。私は全く理解できないけれど、そういった現象は思春期に起こりやすいらしい。しかし、それとはまた違うような気もする。


「……分からない」


 彼を知りたい、そう思う自分がいることに少し驚いている。でも、悪い気分では無かった。

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