第58話 血濡れたCD

 バザーでCDを買った。

 ずっと昔に廃盤になった、マイナーなアーティストのものだ。

 円盤に傷一つない、とても綺麗な品だった。


 帰ってさっそくパッケージを開けると、CDがべっとりと真っ赤に濡れている。

 驚いて放り出しかけたが、改めて見ればどこにも異常などない。


 見間違いかと思い直しCDを再生した。

 すると曲に混じって女性の悲鳴のような、あるいは泣き声のようなものが聞こえてくる。


 あまりの気味の悪さにすぐさまバザー会場まで返品に戻ったが、売り主は席をはずしていた。

 一刻も早く手放したかった私は、売り主が座っていた椅子の上にCDを置いて、逃げるように会場を後にした。


 それからしばらくして、たまたま見かけたツイッターで「中古で買ったCDから女の人の悲鳴が聞こえる」という書き込みを見つけた。

 まさかとは思ったものの、その呟きはまもなくアカウントごと消えてしまい、その後どうなったのかはわからない。

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