第43話 三つのお守り

 中学生の頃、数人の友人と町はずれにある廃屋に肝試しに行ったことがある。

 臆病者の私は、お守りを隠し持って参加した。


 建物の雰囲気は不気味だったが、何かが起こるということもなく肝試しは終了した。


 その日の夜、夢を見た。


 私はベッドで眠っている。


 その傍らで、ボロボロの格好をした少女がお守りをハサミで切り刻んでいた。

 やがて枯れ枝のようにささくれた指が、お守りの残骸をつまみあげる。

 それを見せつけるようにしてこちらを向いた少女が、耳まで裂けた唇をニヤリと吊り上げたところで目が覚めた。


 枕元に置いていたお守りは細切れになっていた。


 私はすぐに両親へ事情を話し、近所の神社でお祓いをしてもらった。


 帰りに「必ず肌身離さず持っておくように」とお守りを三つ渡された。

 首を傾げる私に神主さんは、


「二つはすぐにダメになるだろうから」と言ったのだった。

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