《第1章 EP-03》【Lies and Truth】

「ねえ…どうだった…

大丈夫?気持ちかった…?」

Hが終わり毛布にくるまってる梓が聞いてきた。


「お前さ…普通んな事聞く?

全然気持ち良くなかったって俺が答えたらどうすんの?」

こいつバカだな。


「えー…。気持ちくなかったの?」


「いや、気持ち良かったけどさ。」


「良かった…。

アズ体に自信ないんだもん。オッパイも小さいし、お尻も小さいから寸胴みたいでしょ?」


「大丈夫!俺は貧…いや微乳好きだから。」


「それに舐めるのだって上手くないでしょ?」


「まあ上手いとはいえないかな…

お前さ…んな事話してて恥ずかしくないの?」


「恥ずかしいけど…

だってアズばっかじゃなくてトオルにももっと気持ちよくなってほしいから…。だからもっと練習する!」


「どうやって練習すんだよ?」


「内緒(笑)」


「そんな話してっからまたしたくなった!」

そう言って梓に覆いかぶさった。


「あ…?またするのぉ?」


「ヤダ?」


「ヤじゃない…」


「それに練習にもなんじゃん!?」


「バカ…(*^.^*)」




2度目が終わり煙草を吸っていると梓が背中にもたれかかってきた。


「え…どした?も一回?」


「バカ…。ねえ、明日ちょっと行きたいトコがあるんだけど付き合ってくれる?」


「ん?時間は?」


「夜。仕事終わった後でいいよ。」


「わかった。」

時計を見るとすでに朝の7時を過ぎていた。


「アズ寝よっか?」


「あっ!?初めてアズって呼んだ!」


「ダメかよ?

お前はアズと梓とどっちで呼ばれたいの?」


「アズがいい…」


「俺は梓がいいな。今までお前とHした男って皆さんアズって呼んでそうじゃん?」

俺の小さな拘りだった…


「じゃあトオルは梓って呼んで。」


「じゃあってなんだよ。じゃあって!

そこ認めんのかよ?」


「ごめんなさい…。

でも、確かにトオルの言う通りかもしんない。」梓は下を向いて答えた。


「「ごめんなさい」とか言わなくていいから。

別に付き合ってるわけじゃないし…。」


「うん。

まだアズはトオルと一緒に居る資格ないから…」


「あっー!面倒くせぇ。資格ってなんだよ資格って!

今お前はここに居んじゃんかよ!!」


「うん…。だから、明日一緒に来て欲しい…。いい?」


「わぁったよ。」

結構冷たい言い方だったと思う。


「おいで。」

俯いてテーブルの前に座ってる梓に言う。


「でも…」


「いいから来いっつーの!」


「はい…」


俺は梓を抱き寄せ眠りについた。



この時点で梓は俺の頭の中の半分以上を占めるほど大きな存在になっていた。

梓という女を好きになっていくのに時間は必要なかった…。

だから、いつも左手の小指に光ってるピンキーリングが気になってた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《0:10 歌舞伎町》


「もしもし…。

仕事終わったけどどうすればいい?」


「じゃあ下に行くからマンションの玄関前に来て?」


「了解。」


自転車だったので2、3分でマンション前に着くと梓が待っていた。


「寒いから外で待ってなくてよかったのに。」


「大丈夫だよ。」


「んで、どこ行くの?」


「神楽坂。」

と言いながら梓はタクシーを止めた。


「はっ!?何で神楽坂?」

と言いながら乗り込むと運転手が「神楽坂ですか?」と応えたので「はい…」と告げると明治通りを神楽坂方面に向かって走りだした。


「アズの部屋があるんだ…。」

と言ったきり黙ってしまう。何か考えてるようだった。


途中、何回か梓が運転手にナビをし20分ぐらいでマンションの前に止まった。

(今でも行けそうなぐらい簡単な道順だった)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「どうぞ…」

部屋のドアを開ける。口数が少ない。


「おじゃまします…」

玄関の先は右がキッチンで左がトイレとバスルーム、その先が6畳ほどの部屋だった。いわゆる1Kってやつだ。


「適当に座って…ビールでいい?」

俺は「ああ」と返事をしマットレス型のベッドの横に座った。


梓がビールを持って来て横に座る。


ビールを飲みながら5分ほど沈黙が続く。


「何でそんなに口数少ないの?」

沈黙に耐えらんなくなって俺が口を開く。


「……トオルはアズの事どんくらい好き?」


「はあっ!?どんくらいって…?

例えば地球3周ぐらいとか答えればいいの?」


「そういうんじゃなくて…。」


「じゃあどういうんだよ?」


「一昨日アズに惹かれてるって好きになってきてるって言ってくれて、昨日抱いてくれたよね。」

俺は梓の目を見て頷く、真剣な眼差しだった。


「ねえ…、嘘つかないで答えてね。トオル本当に彼女居ないの?」


「居ないよ。」


「本当に?」


「本当だって!じゃなかったらお前に暫く泊まっていいなんて普通言わねえだろ。」


「だって普通じゃないし…。」


「うっせぇっ!

はいはい30過ぎた寂しい独身男ですよ。んで?」


「なんで居ないの?」


「2年ぐらい前かな子持ちの女と3年付きあって別れたんだけど…

最悪な別れ方で彼女を作る気にはなれなくて、それからは本気はいいかな。」


「アズも遊び?」


「違うよ。」


「何でそんな簡単に言えるの?」


「お前にだったら傷つけられてもいいかなって思うから…」


「何で?アズひどい女かもしれないよ。」


「まあ、それならそれで俺が見る目がなかったって事だろ。

つーか、付き合いたいの?なんなの?」


「わかんない…

つき合うってなると怖い。でも一緒に居たい。


それに…

話さなきゃいけない事もあるし…。」


「俺も聞きたい事がある。」


「何…?」


「そのピンキーリング。」

俺がそういうと梓は右手で左手の小指を隠した。



「何で隠すの?」

リングを隠した梓に向かっていう。ちょっと冷たい言い方だったかもしれない。


「これは違うの!!アズの支えなの…ごめんなさい…

だから殴らないで!お願い!」

梓が急に大きな声を出す。


「はっ!?…何?…どうした?」


「だって…だって…ごめんなさい。」

パニクって泣いている。


俺は梓を抱き寄せ頭を撫でる。


「大丈夫だよ。誰も梓を殴ったりしないから…」

梓はまだ子供のように声を出して泣いている。




抱き締め5分くらい(もっと長かったような、短かったような、よく覚えてない)

小さな震えた声で「ごめんなさい…」と口を開いた。


「うん、びっくりしたよ。」


「前に付き合ってた人、田中なんだけど…

凄いやきもちを妬く人で一回このリングが見つかった時に殴られたんだ…

だから…だと思う。

今のも自分であんま覚えてない…ごめんなさい。」


「別に謝んなくていいけどさ…」


「トオル…もっと強くギュッてして。」

何も言わずに強く優しく抱きしめる。


「あのね…このリングはアズが17才~19才の間に付き合ってた人に貰ったんだ…

アズはねその頃が一番幸せだったんだ…

誤解しないで聞いてほしいんだけど、その人が忘れられないって訳じゃなくて…」

その後…親が離婚した事。(理由はちょっと複雑)

母親に仕送りをしてる事。金の為に東京に出てきた事などを話した。


「別に理由はどうあれ今は忘れられないでも、リングを外せないでもいんじゃね。」

梓は「えっ!?」っていう顔をした。


「時間が経つと悪い思い出って消えてって、いい思い出ばっか残ってくじゃん。

だから無理して忘れる必要も無いし、忘れろったって出来ないだろ?

それにみんな思い出って言って写真やプリクラ持ってんのが、お前の場合はリングって事だろ?」


「それでいいの…?」


「はぁ?いいも悪いも無理なもんは無理だろ?

そんなん理屈や道理じゃねえし、まして俺が外せったって隠し持ってるだろ?

お前が外したい時に外しゃいいんじゃね?」


「ありがとう…」

そう言った梓の頬を静かに涙が流れた。


「あと一つあるんだけど…」


「えーまだ何かあんの…(笑)」


「あのね…アズのね…体は汚れてるんだ。汚いんだ…」


「何が?別にんな事なかったよ。」


「アズ、東京に来て最初の頃仕事がなくてどうせ一回汚れた体だからって援交みたいな事してた頃もあるんだ。」


「ちょっ…待って。一回汚れた体ってっのはどういう事?」


「うん…ちょっと待ってね。ビールまだある?」


「いや…とっくにないけど。」


「早く言ってよ。持ってくるね。」

そう言ってキッチンへ向かった。

早く言っても何もんな空気じゃなかったのだが…

おかげで喉がカラカラだ。


「はい…」

梓は俺にビールを渡し自分も一口飲んで、大きく一息つくと話出した。.



「アズ高1の夏のね…学校の帰りにね…

河原で逃げたんだけど…3人に追いかけられて…

捕まって…殴られて…車のボンネットに抑えつけられて…


やられたっていうか…レイプされたんだ…


最初は後ろから…後は覚えてない…ごめんなさい。」

そう言って俯いた。


「怒ってる?怒ってるよね?」


「何が「ごめんなさい」で、何でお前に怒る必要性あるの?」


「だってアズ汚いんだよ。だけどトオルは昨日あんな優しくしてくれたんだよ…抱いてくれたんだよ…

あんなのは初めてだった。みんな自分の事ばっかり考えて欲望をぶつけてくるだけなのにトオルは…あなたは違った。」


「ふーん…梓、裸になって。」


「えっ!?でも…」


「いいから。」

梓は一呼吸置いて立ち上がった。


「下着も取るの?」


「うん。全部。」

蛍光灯に映し出された梓の白い肌は本当に綺麗だった。


「力抜いて。」

俺は立ち上がり後ろから梓を抱きかかえベッドに寝かせた。


「綺麗だよ…どこが汚れてるの?」


「うれしい…チューして。」


「どこに?(・∀・)」


「唇に!キスしてギュッてしてぇ(笑)」


「やっと笑ったな。」


「うん…」

梓を抱き締めキスをした。


「梓、話してくれて嬉しいよ。あ…」


「あ…?」


「何でもない。」

『ありがとう』って言いたかったが照れ臭くて言えなかった。

この時に言葉に出来てれば良かったのかもしれない。


「トオルありがとう。」


「何が?」


「聞いてくれて、抱き締めてくれて…ありがとう。」


「あ…うん。

ところでさ…お前寒くないの?」


「自分が脱げっていったんじゃん…

ねぇ…しないの…?」

下から見つめられると弱い。

それに汚い汚くないの流れもある。


「したいの?」


「うん…」

俺は服を脱ぎ捨て抱き寄せた。

梓の心臓の鼓動が聞こえた気がした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「梓ぁ。なんでうちじゃなくてお前んちでさっきの話しようと思ったの?

っつーか、よくそこまで深い話する気になったよなぁ…

俺らまだ出会って3日だよ。」

そう、俺と梓はまだ出会って3日だった。もう3ヶ月も一緒にいる気がする。


「なんでかな?

トオルんちで話しちゃいけない気がした。それにアズんちの方がいい気がしたんだ。

それに…トオルには色んな事が話しやすいんだよね…

普通じゃないし、どんどん惹かれてくし変な魔力とか持ってない?」

MPが高いと言われた事はあるが魔力は無いだろ。


「普通じゃないはもういいよ。」


「トオル…アズはトオルのそばにいていいの?」


「今、何つった?」


「トオルのそばに…うっ!?んぐっ…」

キスをして言葉を遮る。


「お前…梓は俺のそばに居な…っつーか居ろよ!!」


「はいっ…りょーかいしました(*^.^*)ゞ!」

と言って俺の首に腕を回し抱きついてくる。


首筋に熱い息と涙を感じた。

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