第1章 3節 『結末の捕捉』
「いやぁーまさかこんな最終回になるとは、微塵にも思わなかった」
しかし、まだこの世界には自分以外に居た存在がある。ずっと存在を隠し続け始末を見届けてようやく出てきた。その者は嵐の中でも一切の水滴を纏わず優の後ろに立っていた。青い髪に碧眼の眼を持つその人は、見た目は成人男性の姿。優の中にいる人格者らはその姿を周知していた。彼らの言葉から出てきたのは、
『青空(せいくう)』
「まさに青空のような雰囲気があるってことか?」
「いや違うよ。青空=俺の名前だ。これからよろしく、優君」
握手を求められた優だったが、まだ得体の知れない存在に・・・「おや?慎重な一面を持っているね。まぁこの状況なら尚更かぁ・・・」青空は『仕方ない』と言わんばかりにすぐに差し出した手を引っ込めと同時に反対の手で指を鳴らす動作をした。すると、あんだけ降っていた雨風が瞬で消えた。その光景を見た優は即理解した―まだこの存在には手も足も出ないことに―
青空の力を目の前で理解した後、ただただ青空の話を聴くしかなかった。青空曰く「人間が多く生きている世界には死海文書がある。また覚醒者のみ生きる世界にも『死海文書』らしきものが存在する。その内容の一部は簡易なもので覚醒者の序列と能力が書いてあるものだった。ちなみに俺は序列三位、能力は結合分解と神風を有する。もっと言えば、優君たちに刺客を差し向けたのは現状最強の序列二位の烈火、能力は名の通り最強の業火。未だに序列一位と零位は発見には至っていないし、能力もまた分かっていない。ただ分かっているのは全ての能力を網羅できる力を有し、現状最強の烈火を凌ぐ者。その片鱗を見せた者が今目の前にいる君だ。君が覚醒した当初から協議にて、烈火は『それは無い』と断言した。でも俺は烈火一強のこの体制に不安があった。だから俺は烈火の下から離反しここへやってきた。そして、先の戦いで俺の能力を行使できたことを加味し、俺と同等かそれ以上の力を持っていると判断した。無論、序列に同列は存在しない。つまり残っている序列は零位か一位。優君の序列がどっちにしても、今の成長速度のままでは烈火に立ち向かうのは無謀。恐らく優君の中にいる存在たちもそれは同意見だろう。だからと言って、敵と認識された以上烈火本人が直々に来襲するとは思えにくいが、刺客は次々と送ってくると予想はできる。だから俺も微力ながら支援は引き続きするつもりだ。離反した意味はそこにあるからね。序列上位者は世界の法則や秩序を歪ませることは多少可能。学校と云った世の中の縮図みたいな場所なら尚更効果は期待できるだろう。アレだろう?今度学校行事で旅行に行くんだろう?その時には優君も理解できるはず・・・【青空】言っていた事は、このことかってね。長々と話してスマン。今理解できなくてもいずれその身で理解する羽目になる。さぁて、元の時間軸に戻してもいい頃合いだな。では、改めて宜しく優君。」
次の瞬間、青空の姿も壊れた校舎も一切無くなっていた。あるのはいつも通りのクラスにいる生徒の声だった。先ほどの戦いからどれくらい時間が経過したのか気になって時計を見た。その時計は事が起きる前と寸分変わらず針を進めていた。それを見て「おお!マジか⁉アレが無かったことになっている」と思わず言葉になってしまった。
CrossLap-pride~交差世界の中で~ 久遠文嶺 @akaki-murasaki
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