第16話 目覚めたそうです。

その後、雨は3日ほど降り続いて、その間に僕は住職さんの家で木工細工を作っていた。


家の骨組みを建てた日、僕は住職さんの奥さんと、様子を見に来た一花さんたちに木工細工が売れそうな場所を訊いてみた。

結果、ハンドメイド専門のアプリという場所で売ることにした。

僕は携帯電話を持っていないから、売り場は奥さんが提供してくれることになった。

つまりはこうだ。

奥さんが携帯電話でアプリ登録をし、そのアプリでの中で売る木工細工は僕が作る。

奥さんには手数料として売上の2割を渡す。

2割の中に、僕がお世話になる為のお金を含むということだ。


僕的には有難い事だけど、売上の2割というのは安過ぎないだろうか?

僕の食事やお風呂を使わせて貰って、更に敷地に家を建てる許可も貰った。

今後ずっと住んでいける。

それなのに、その土地代も含めて2割で良いと言ってくれる。

僕には相場は分からないけれど、やっぱりもう少し取ってもらった方が良い気がする。

だけど、奥さんが言うには、僕が作る木工細工は民芸品として高く売れるから、売上によっては2割でも貰いすぎになる可能性があるらしい。


(そんなに売れないと思うけどなぁ…)


半信半疑な僕とは裏腹に、奥さんは「絶対高値で売れるわ!」と目を輝かせている。


3日ぶりに晴れた今日は、地面がぬかるんでいる事もあって、外で作業は難しい。

だから今日も木工細工作りに勤しむことになった。

奥さんも木工細工作りをしている。

売り物にはならなくても、自分で民芸品を作るのは楽しいらしい。


午後になって、一花さんと友咲さんが来てくれた。

お昼少し過ぎた時間に来たから不思議だったんだけど、今日は学校が早く終わる日なんだって言ってた。


僕と奥さんが勤しんでいた木工細工の作り掛けを見て、一花さんが珍しく声を出した。

「それ、民芸品だよね?私もやりたい」


友咲さんが何かを質問したりしてくるのは珍しくない。

積極的に関わろうとしてくれるのを感じる。

でも一花さんは、一歩引いたところで僕らを見ているような雰囲気があった。

僕らを拒絶してると言うより、戸惑いが強くてなかなか踏み込めないといった感じだ。

だけど、今日の一花さんは何やら積極的で、僕の作りかけの木工細工を真剣に見つめていた。


「一花さんでも簡単に作れますよ!」

笑顔で答える僕に、一花さんがはにかんだように笑い返してくれた。


「一花ちゃん、最近目覚めちゃったみたいなの」

友咲さんの言葉に「やめてよ」と照れたような不貞腐れたような顔をする一花さん。

友咲さんが言うには、僕らが建てた家の骨組みを見て、一花さんの中で何かが破裂したそうだ。

DIYとか民俗学とか、とにかく僕には難しくて分からない事を調べたりしているんだとか。


「良く分からないですけど、一花さんは僕らに関心を持ってくれたという事であってます?」

こてんと首を傾げる僕に、一花さんは少し顔を赤らめて「ま、そんな感じ」とボソッと答えた。

「じゃあ、皆で木工細工作りましょう!!」

嬉しくなった僕は、大声で提案した。

その場にいた全員が、それぞれのトーンで「賛成」と声を合わせた。


その日の午後、僕を先生にして突然木工細工教室が開催された。

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