第28話 本選決勝戦 狙われた男による演出
大胆不敵な行動をした蓮見。
残念ながらダメージを与えることはできなかったが、全員の度肝を抜き警戒させることには成功した。
そして――。
蓮見のアドレナリンが早くも溢れ出す。
「聞こえるぜ、俺への声援が」
「紅?」
「うん?」
「あんた大丈夫?」
「急にどうしたんだ? もしかして俺にビビってるのか里美?」
「いや、普通にこの場合私達は同時に攻撃を受けた。つまり共通の敵ができたってことで手を組んでも可笑しくない展開になるんだけど、そこら辺考えてやった?」
――。
――――。
な、なんだと!?
そんな言葉が蓮見の脳内で大きな文字で浮かび上がってきた。
が、今日の蓮見は違う。
いつもならこの状況に怖気づいてしまっただろうが、今日は怖気づくことはなかった。逆にこれはチャンスだと思ってしまったからだ。
「……考えてなかった!」
臆せずに堂々とした態度に美紀たちがさらに警戒心を高める。
突撃するチャンスだからこそ、ここで安易な行動はできないと本能が訴えているのだ。それだけ調子が良い蓮見はトッププレイヤーでも怖い。同時にワクワクする相手でもある。誰も考えすらしない一手を当たり前のようにして当たり前のように自分たちを追い込んでくるから。どんな状況でも決して最後まで諦めない男だからこそ三人はある意味惹かれたのだ。
「だけどな、仮にそうなっても俺様実は今日も一人じゃないんだわ」
不敵な笑みを浮かべると背後から三本の矢が綾香、ソフィ、美紀に襲い掛かる。
蓮見の表情から危険を察した三人が回避行動に入る。後方を確認するとそこには神災戦隊ことブルー蓮見とイエロー蓮見がいた。
「行け! 俺様たち! 準備は終わった!」
その言葉と同時上空に出現した紫色の魔法陣から毒矢が一斉に地上に向かって放たれる。
数本は三人の蓮見の足場となり飛行を可能にする。
ブルー蓮見とイエロー蓮見が爆発に紛れて登場し爆炎が完全に晴れる前に
正に完璧なコンビネーション。
アドレナリンが溢れ出る蓮見に恐いものはない。
「悪いが一気に決める。弱者による弱者のための弱者だけに許された全力シリーズ『毒矢抹殺危機一髪』!」
不謹慎な名前ではあるが言いたい事はすぐにわかった。
回避行動に入る美紀たちに毒矢とは別に攻撃を始める蓮見。
実力差があるなら数での勝負。
正面から戦っても勝てないのならド派手に盛大に暴れるしかない。
そう考えた蓮見は正に鬼だった。
「綾香さん覚悟してください! スキル『虚像の矢』!」
「させない! スキル『アクセル』!」
「悪いけど逃がしません! スキル『連続射撃3』!」
炎を纏った矢を躱した綾香に今度は五本の矢が飛んでいく。
前方以外からは毒矢の攻撃。
「逃げれないなら、スキル『竜巻』!」
「よし、貰った!」
「しまった!?」
蓮見の前でスキルを使うと言う事はそれを模倣されることを意味する。
故にその場の勢いだけでスキルを使えば後々自分達の首を絞めることは今さら言う必要もないだろう。
綾香の焦りは美紀とソフィにも伝播する。
「ちょっと私にも被害が出るんだからヘタ――ッち、スキル『破滅のボルグ』からの『アクセル』!」
綾香に視線を一瞬逸らした。
その隙を蓮見は見逃さなかった。
≪ 愚かな者に与えられた天罰は
最恐の力を世間に見せつける為の礎であり
死をもって償う事だ
翼がないのなら信念で飛べ!
喧嘩を売るなら死ぬ覚悟で挑め!
出来ないなら出来るまでやれ!
常識が邪魔なら常識を凌駕しろ!
誰かを変える事は出来ないが自分を変える事は出来る
常識を変える事は出来ないが世間を変える事は出来る
進化しろ! 俺様! Burning Heart!!!≫
そんな歌がどこからか聞こえる。
「隙あり! スキル『水振の陣』『罰と救済』『虚像の発火』!」
美紀に向かって飛んできている矢はただの矢ではない。
蓮見命名の水爆。
水振の陣(すいしんのじん)――効果:対象の矢一本に水属性ダメージ+二十ならびに敵に触れると水属性の爆発ダメージを与える。ダメージはSTR&INTに依存。使用回数:一日三回。
スキル『罰と救済』(エクストラスキル)
効果1:(金色)魔法陣を作り、魔法陣を通った矢に追尾性能【中】と敵、魔法に触れると強制テクニカルヒットになる。
蓮見の前方に金色の魔法陣が出現する。
重なるようにして水色の魔法陣が出現する。
中心部にかけて神々しく金色に光輝き、魔法陣の淵にかけて水色に光り輝きと少し違和感を覚える魔法陣。魔法陣の淵には魔術語で書かれた金色と水色の文字が浮かんでいる。美紀は強引に破滅のボルグを使い標的を蓮見の放った矢にする事で強引に迎撃しつつ短刀を腰から抜いて毒矢の追尾攻撃を華麗な身のこなしをしながら切り落とし無力化していく。
――ドガーン!!!
火と水が混ざり合い爆発したことにより、熱風が出現しその熱風が息をするだけで肺を破壊するのではないかと思われる熱い蒸気生み出し辺り一面を覆いつくす。熱い水蒸気のせいで辺り一面の視界が悪くなり、息をするたびに熱い蒸気が肺に入り苦しい。
「きゃあああ!」
被爆地点から最も距離が近い美紀が爆発に巻き込まれた。
その可愛らしい悲鳴にソフィの集中力が一瞬乱れた。
「本気なら俺に集中しとかないとですよ?」
「――ッ!?」
「「「スキル『虚像の矢』!」」」
荒々しい炎を纏った矢が三方向から同時に放たれた。
「忘れたか? 私に小細工は通じん! スキル『幻の桃源郷』! これでお前の未来は全て見透かされる!」
綾香と同じく双剣を持たせたら止めるのはかなり苦労する相手。
それがソフィである。
三秒先の未来視により蓮見の行動は全て把握され、ソフィの言葉通り不意討ちを含めた小細工は全て阻止されるかと思われたが、未来が見えた程度で神災は止まらない。
何度も言うが今の蓮見の脳はアドレナリンを分泌しまくっているのだ。
「「「だったら説明はいらないですね! せーの! スキル『爆散』!」」」
エリカのアイテム遠隔操作がスキルで出来るなら蓮見は矢を遠隔操作ではなく、矢を爆弾として扱う事で空中で爆発させた。
スキル――爆散。
飛行中もしくは待機中の自身の火属性スキルを空中で爆発させる。
威力は媒体となった火力に依存する。
ソフィを中心にして半径三メートルの魔法陣がある。
本来は魔法陣の中にいる相手は脱出ができず、三秒先までの可能性のある未来を全て見通すことができ攻撃力が強化された十連撃をお見舞いすることができる。
だが矢は双剣に切られる前に魔法陣の中へと入ってはほぼ同時に爆発しソフィの視界だけでなく爆風で態勢も崩す。そこに飛んでくる毒矢は容赦を知らない。
「ッ!? 舐めるなーーーー! スキル『烈風』『アクセル』!」
ソフィを中心として竜巻が起き、風の力を受けると同時にブースターの推進力を最大にして上空へと逃げるソフィ。
レッド蓮見は三人の意識が自分から離れた瞬間、地上に聖水瓶を沢山ばらまいた。
三人を翻弄していく蓮見の狙いは――。
一体なんなのだろうか。
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