第9話 予選 神災モードVSレベッカの本気
運が良いのか悪いのか、高度が高すぎて近くに他のプレイヤーはいない。
つまり正真正銘の邪魔が入らない一騎打ちとなった蓮見と女プレイヤー。
観客席の注目が上空へと集まる。
「ついに来たか」
「やっぱり追い込まれからの【異次元の神災者】」
「今度は何を見せてくれる」
「最近参入した一人。たちまち上位陣として認められたレベッカの実力は間違いなく本物。なにより無能を演じているあの金髪美女二人組の師匠だからな」
「そのレベッカ相手に【異次元の神災者】が何をするかだな」
「あぁ、正攻法ならレベッカ。だけど【異次元の神災者】にそれは通用しないからな」
観客席から聞こえてくる声。
レベッカそれが女の名前。
そしてレベッカの弟子。
かつて過去の現実世界において美紀の嫉妬対象となった金髪美女であり、同じく世間(ゲーム内)から金髪美女と呼ばれるもう一人が次のイベントで出場予定となっている。通称金髪美女二人組なんて呼ばれている。師匠と弟子の容姿体格は何一つ似ていないが……。もっと言えば言葉遣い、特にレベッカは日本人と変わらないぐらいに日本語が上手と……まぁ試合には関係ないのでその話しは機会があればするとしよう。ただ弟子の前で無様な姿は見せれないと本気になったレベッカに対して蓮見はビビッていられないと自分を鼓舞する。
「あの程度里美に比べたらライオンとチーターぐらいの差がある。だからビビるな俺様、相手は所詮チーターで俺様はカッコイイ猫ちゃんだ……」
何を言いたいのだろうか。
蓮見の中でのライオンとチーターの差とはいったい。
そもそも猫とはいったい。
普段から勉強していない代償がまさかこのような形で現れようとは……。
疑問に思う事はあるが、蓮見の中ではとにかくそうらしい。
「一つ聞いてもいいか?」
「なんだ?」
両者の真剣な眼差しが空中で交差する。
蓮見の黒い瞳にはレベッカ、レベッカの黒い瞳には蓮見がそれぞれ映っている。
「これに見覚えはあるか?」
蓮見はとあるアイテムを一つ取り出してそれを肩で担ぎ上げながらレベッカに問う。
「ん?」
「俺は決めた。俺はコイツと一緒にこの予選で派手な演者になると。だから、スマン、生きることを諦めてくれ!」
「悪いがそれはできんな」
「そっか、ならどっちが勝つか勝負だスキル『猛毒の捌き』!」
「上等! 最初からそのつもりだ! スキル『アクセル』!」
両者が同じタイミングで動いた。
蓮見は持っていた袋をレベッカへと投げつけるも簡単に避けられてしまう。が、蓮見は紫色の魔方陣から出現した毒矢の一本を操り袋を切り裂く。袋が切り裂かれたことで何処かで見覚えのある粉が宙に舞う。それを見た蓮見はニヤリと微笑み次の袋をアイテムツリーから取り出す。
「何を狙っているかは知らないが小細工程度で私は倒せないぞ!」
そう、蓮見の思惑通り簡単にことは進まない。レベッカが蓮見を倒そうと力一杯ハンマーを振り回す。
「あっ、ぶなっ!?」
顔スレスレを横切ったハンマーに蓮見の心臓が驚く。一撃でも顔面に喰らえばどうなるか、脳が想像してしまった。
「スキル『強靭』!」
レベッカがスキルを発動。
効果を受けレベッカの身体が赤く光る。
「このスキルによって私の腕力は一時的にかなり向上する。この意味がわかるか?」
「わからん‥‥‥‥つまり?」
「こうゆうことだ!」
レベッカは重たいハンマーをまるで木刀を振るうように片手で軽々と振り回し始めた。それにより攻撃速度が倍以上になったことで、蓮見の心の余裕が一気になくなる。持っていた粉袋を宙に投げ毒矢の攻撃と一緒に袋を切り裂きレベッカの視界を悪くする。だが、効果はあまりない。
「要約すると怪力女がさらに怪力ムキムキマッチョになるが正解とか‥‥マシで‥‥‥‥ヤベぇって、俺!?」
相変わらず素直な性格が災いしてか、脳が思ったまま超訳した内容を口にしてしまう。
「誰が怪力女だーーー!!!」
蓮見の余計な一言にレベッカが怒った。
当然の結果である。
相手は女性なのだから。
だけど、蓮見が悪いかと言ったら一概にそうとは言えない理由もある。
腕、足、腰回り、体格が全て蓮見よりしっかりしていて筋肉があるプレイヤーが重量数十キロの武器、それも本来は体格の良い筋肉質な男性プレイヤーでも両手で扱うような武器を片手でそれも軽々振り回すプレイヤーが目の前にいれば蓮見の直感は間違っているとは言えない。蓮見の放り投げた袋は容赦なく強力な一撃によって跡形もなく破れ中身をばらまき消える。それは蓮見が全力で逃げるも同じく猛スピードで追走してくるレベッカの攻撃に対して反撃の一手としている毒矢も同じでレベッカのハンマーの風圧を受け強制的に凪ぎ払われていく。
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