第8話 予選 まだ三人目ですが敵様強くないですか!?


「これで少しでも時間稼ぎをする」


 矢を放ち攻撃と同時にMP回復を試みる。


「私も舐められたものだな! 故にそれはさせん、スキル『暴風の嵐』!」


 女が自分を軸にしてハンマーを回転させる。

 すると巨大な竜巻となって出現。

 竜巻は意思を持っているかのように中心地にいる女の元を離れ蓮見の方へと近づいてくる。


「んなのもありかよ!?」


 女は身体の回転を止めて態勢を整える。


「お前のペースで試合を進行させるといいことないからな。スキル『アクセル』!」


 MP回復をした蓮見の視界の先には巨大な竜巻と女が接近している。

 片方だけの対処では確実にダメージを受ける事になる。

 そうなると両方の対処が必要となってくるわけだが、まともに受ければ即死のリスクもある以上対応は慎重にならざるを得ない。

 普通のプレイヤーならそう考えるだろう。

 だけど蓮見は違った。


「この風を利用する以外に道はねぇ!」


「ほぉ? で、どうするつもりだ?」


「決まってるだろ! こうするんだよ! スキル「猛毒の捌き」からの~俺様戦闘機発進!」


 毒矢を足場に空を飛び竜巻の上昇気流を利用して一瞬で全員を見落ろせる高さまで飛翔。四本の矢で構築された足場と二十六本の攻撃可能な矢によって形成逆転を狙う。

 少し前までは空は蓮見の専売特許だった。

 しかしアップデートされてからはそれは蓮見だけに許された領域ではなくなった。

 女が飛行ブースターを使い下から飛んでくる。


「逃がしはせんッ!」


「へへっ、別に逃げてはないぜ?」


「んッ!? まさかっ!?」


「行くぜ! 俺様国士乱舞無双伝説!」


 蓮見の背後に出現した紫色の魔方陣。

 数は二つ。

 それは蓮見が俺様戦闘機を発進させたときに必要とした物と同一。

 綺麗な紫色に輝く魔方陣から三十本の矢がそれぞれ姿を見せ、姿勢を突撃してくる女の方へと向けた蓮見と同じ方向に向く。足場にしているもの含め総数九十本。

 それが今の蓮見が女一人を倒すのに必要と考えた矢の数である。


「スキル『竜巻』!」


 女は警戒して自身を中心とした風の渦――竜巻を作り、こちらが認識する前つまりは視覚外からの速射によるKillヒットを警戒した。


「なるほどな! 面白い! だが、果たしてそれだけでこの私を倒せると思わぬことだ」


 言葉が終わると効力を失った竜巻が姿を消す。


「勝負はまだ始まったばかり簡単にくたばるなよ【異次元の神災者】!」


 その言葉を合図に蓮見も女に向かって突撃。

 両者の距離が縮まる。

 距離にして二十メートル。

 不適な笑みを浮かべた女を見て蓮見も笑みを浮かべる。

 お互いに自信に満ちた笑みはすぐに形となって現れる。


「正面から突撃だ!」


 蓮見の合図を受け足場となっている矢以外が全て真っすぐに女へと向かって行く。


「やはり、そう来たか【異次元の神災者】!」


 女は飛行ブースターの推進力を利用しハンマーを両手で持ったまま回転し始める。

 回転はどんどん速くなり、小さい渦を作りだす。


「スキル『突進トルネード』!」


 その名の通り渦は小さい竜巻となって蓮見の方へと進む。

 矢がすぐに迎撃に向かうも竜巻を作りだしている風が女を護る盾の役割を果たして全て弾かれてしまう。


「オラオラオラァ!」


 雄叫びをあげ凄い勢いで突撃してくる小さい爆弾のような竜巻に蓮見は自らの意思で突っ込む。


「なんのこれしき! 行くぜ俺様正義の特攻アタッーーーーー」


 声は途中から悲鳴に変わり、


「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー」


 考えなしにその場の勢いで突撃して何とかなるだろうと考えた男は数十メートル上空に吹き飛ばされてしまった。

 HPゲージが三割をちょうど切り、神災モードとなった蓮見はさっきまで足場に使っていてまだ制御化にある毒矢四本を操り再び足場にして女を見下ろす。


「ふっ、計算どおりだぜ♪」


 ドヤ顔で言い切った蓮見の表情はご想像通り調子に乗っている。

 が、身体は正直で背中がびしょびしょなのは本人だけの秘密。


「ちッ! 仕留めそこなったか」


 舌打ちをして蓮見を見上げる女はどこか悔しそう。

 だけど同時に何処か嬉しそうにも見える。


「まぁいい。全力のお前を倒してこそのバトルロワイアルだと言えるしな」


 女の顔に今まで以上に気合いが入った。

 同時、雰囲気が変わった。


「これは……里美と似たなにか……」


 それを直感だけで感じ取った蓮見は「上等。かかってこいや」とこちらも気合いを入れ直す。

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