第7話 予選 紅選手それはッ!?


「どこを狙っている?」


 ハンマーを両手で持った女が走りながら蓮見の放った矢を回避。


「お前だ!」


「ならもう少ししっかり狙うんだな」


「……その台詞そっくりそのまま返すぜ!」


 今も連続して矢を構えては放つ。

 だが、当たらない。

 相手の動きは剣や片手剣を持っていた男より遅い。

 なのに当たらない。

 恐らく経験則から目に見えない予測線的な物が蓮見の構えから脳内でイメージされ見えているのだろう。

 美紀や綾香、そして先ほどから視界の隅で気になるルフランと同じく腕に自信がある者。即ち彼女もまた実力者。矢を放つ手に手汗がにじみ出る。蓮見の直感が感じ取ったのだ。一瞬の油断も出来ない相手であると。そもそもの話し――。


「チッ、こっちが放つ時にはもう動いてやがるのか」


 蓮見の構えから狙いを逆算し後は矢が飛ぶタイミングに合わせて他のプレイヤーよりも早めに回避行動を取る女。

 確実に縮まっていく距離に蓮見は警戒する。

 ――ここに居る者達は蓮見以外。

 そう考えた時、全身がぶるっと震えた。


「忘れてた。ここにいる全員俺より格上だってこと」


 恐怖するのではない。

 蓮見の脳内である言葉が浮かんだ。

 実験台にちょうどいい。

 ニヤリと微笑んで。


「いいぜ! 力の大勝負受けてやる!」


 蓮見一度大きく深呼吸をして、


「集中! スキル『虚像の発火』!」


 狙いを定めて矢を放つ。

 放たれた矢はやはり空を切るが、


「まだまだ!」


 今度は鏡面の短剣を複製し矢の形状にして放った。

 間髪入れずに攻撃していく蓮見に女は不敵に微笑む。


「どうした? スキルを使えば私を倒せると安易な考えに身を委ねたか?」


「さぁな!」


「なるほど。Killヒットを警戒させてからのテクニカルヒット狙いか? 悪くないが甘い!」


 ハンマーを振り上げ、鏡面の短剣で作られた矢を撃ち落とした女。

 だけど、何度もやられる蓮見ではない。

 鏡面の短剣を矢の形状に変化させる際にフックの部分を作り手榴弾のピンをひっかける。単純な仕掛けだが放たれた矢は鏡面の短剣による水属性のダメージと手榴弾による爆発のダメージを与える。


 ――ドーン!


 ハンマーに撃ち落とされた衝撃で手榴弾のピンが抜け爆発した。

 だが――詰めが甘かった。


「その程度かッ【異次元の神災者】?」


「なっ!? 嘘だろ!?」


 爆風の中から突撃してきた女に体当たりされ、咄嗟にガードするも態勢を崩されてしまう。


「オラオラ! 男なら根性見せろ! スキル『断罪の一撃』!」


 大きく振り上げられたハンマーが赤いエフェクトを纏い蓮見に向かって振り落ろされる。とてもじゃないが、幾ら筋肉質とは言え女性が扱えるような一撃を凌駕していると見ただけでわかる。


「ちょっ!? それは幾ら俺様の根性でも受け止めれんわぁ!」


 両足に力を入れて横に全力で飛ぶことで回避を試みる蓮見。

 直後さっきまで蓮見がいた地面が捲れあがる一撃が振り落とされた。

 衝撃波が蓮見の身体を襲い触れずして身体を吹き飛ばされ地面に激突。

 激突したフィードバックダメージを受けながら視線を女の方へと向けると休んでいる暇はないと身体が危険信号を放ちすぐさま立ち上がり次に備える。


「スキル『アクセル』!」


 加速系スキルを使い突進してくる女。

 女でありながら蓮見と変わらない背丈かつ腕や足は倍ぐらい太い。

 そこから放たれる一撃はどう頑張っても蓮見が正面から受けるには危険すぎる。

 まともに喰らえば骨の一本や二本は間違いなく折れると思う。

 ゲームの中なので実際はどうかはわからない。

 だけどさっきの一撃からそうなんじゃないかと思い始めた蓮見は弓を構え女から距離を取るように走りながら迎撃を試みる。


 

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