40話スラ子の独白
______夢を見た。かつての記憶。ある神と人間は恋に落ちた。しかしうまくはいかなかった。
「死ね!!」
その行為はまさにイシュタルに逆らう行為。神による天使殺し。
怒りのあまり一撃で殺してしまった。拷問でもすればよかったのか。
だがこいつにヘレナは殺された。人間が自分より身分が上になるというだけで。
彼は抵抗した。自分の領地に堂々と帰り、侵入してきたイシュタルの天使兵を虐殺した。
混沌の勢力と呼ばれ、魔王と罵られた。
負けは明白だった。
友人が彼の城に来た時、覚悟を決めた。
神の国に住んでいた彼は、人間の世界に落ちた。
「はあ・・・・!はあっ・・・!」
今のは夢・・・?やけにリアリティのある夢だった。
「コバヤシ、大丈夫?」
スラ子がベットのわきで心配そうに顔を覗いていた。
「ああ。大丈夫だ、そういえば気になったんだが」
体を起こす。魔力は回復しているようだ。
「なんでししょーからコバヤシって呼ぶようになったんだ?」
「なんかね。コバヤシって呼ぶと今までと違ってなんか・・・心が変な感じになるの」
回答なんだろうか。意味があまりわからないが・・・。
「あ!ねえねえ!これ見て!」
自慢げにペンダントを見せつける。宿屋の娘がくれた宝石を身に着けるとエヘヘ、と嬉しそうにクルクル回る。
「よかったな。・・・スラ子、話がある」
「なに?」
「この街を離れようと思う。お前はどうする?」
彼女は十分にこの街にも、ギルドにも、そしてアリスのパーティやサーウェスの上級冒険者パーティに受け入れられている。彼女ならここで俺が居なくてもやっていける。
「やだ!」
「そうか。ならギルドにパーティ申請を・・・」
不機嫌そうにスラ子はこっちを見る。少し、泣いている、ような・・・。
「なんで置いてくの!私のこと、邪魔なの?」
「いや・・・そんなことは・・・違うんだ。ただこの街に残りたいかどうか聞こうとしたんだ」
スラ子はポロポロと涙を流していた。
なんでなんだ。俺はそんなつもりはなかったのに・・・。
「ちょっと前に私が言ったこと、覚えてる・・・?」
_____コバヤシだけなんだ。私とちゃんといてくれるのは。
スラ子がその言葉を言うと、泣きながら言葉を絞り出した。
「いつも守ってくれて、一緒にいてくれて、嬉しいんだ。この前なんて頑張って杖まで作ってくれて、プレゼントしてくれて」
「私ね。こんな風に誰かから手作りのもの貰うのって初めてだったの。ホントに嬉しくて飛び上がっちゃいそうなくらいだった」
「この前、コバヤシが遺跡で倒れた時、私・・・頭がおかしくなりそうだった。ずっと一緒にいて、救助が来るまでコバヤシにしがみついてた」
だからね。と頑張ってスラ子は笑った。
「一緒に居たいの。あなたを助けてあげたいの。だから、私も行く」
_____!
まいった。これ、まるで告白じゃないか。
まったく、俺は勘違いをしていた。
「スラ子、悪かった。一緒に行こう。どうなるかは分からないが、やれるとこまでやってやるさ」
スラ子の頭をなでる。スラ子は泣きながら笑っていた。
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