38話緊急会議
街を守る門の周辺は散々たる惨状だった。兵士と冒険者の協力のおかげか、街中はそれ程被害はなかった。
しかし門を守っていた兵士たちは殆どが死んでしまった。
城壁も半壊し至急、本国からの支援が必要な状況だ。
「君は冒険者なのか・・?」
死に体だったが兵士長、ハモンドは辛うじて生きていた。槍で放たれた一撃を反射的にラウンドシールドで守ったようで致命傷は避けられていたようだった。
「ああ。俺はコバヤシという名の冒険者だ」
「君が・・・!そうか、話には聞いていたよ魔王と接触し生き延びた冒険者。こんなことがなければ緊急で話し合いが行われる予定だったんだ」
部下の手を借り、なんとか立ち上がると修繕を行っている兵士たちに指示を出す。
「コバヤシ君、いまからギルドで冒険者と合同の話し合いが行われる。君も呼ばれているよ」
「私はみんなの手伝いをしてくる!コバヤシもがんばって!」
「ああ。スラ子もな」
コバヤシはギルドに一緒に行くことにした。
「君は何者なんだ。あんな化け物と渡り合うなんて」
兵士長は驚いていた。それはそうか、正直自分でも驚くほどに戦えていた。魔剣の力だとは思うがまさかこれ程とは思っていなかった。
「魔剣のおかげだ。元々、そんなに強いわけじゃない」
「魔剣・・・君が使っていたあの武器か。もう一度見せてもらうことは出来るか?」
「無理だ。少し魔力を消耗し過ぎた。申し訳ない」
正直なところコバヤシはもうへとへとだ。ただ、せめて現状の説明だけはしなければ。
魔王は俺の命を狙っているらしかった。ヘブンズギルの所有者は魔王に命を狙われる、と魔剣はあの時教会で休んでいるときに説明してくれた。
つまりこの街にいる限りこの街自体も狙われるという事ではないだろうか。
「やつは、俺を狙ってきた。この街を狙ったのはついでだ」
「どういうことだ?君はあの化け物に縁があるのか?」
「そういう訳じゃない。事情があるんだ」
話しながら歩いているとギルドの看板が見えてきた。教会に向かう兵士長に手を振るとドアを開ける。
ドアを開けるとアリスのパーティが俺を待っていたようで、こちらに声をかけてきた。
「・・・よお。お疲れさん」
「召喚者君、今日は大変だったね。スラ子ちゃんは?」
「いま復興活動を手伝ってる。なんでここに?」
「会議に参加するんですよ。ある程度のクラスは参加することが出来るそうなので」
エリスは心配そうにこちらを見る。
「大丈夫ですか?大分魔力を消耗しているように思えます」
「まあな。さすがに今回は疲れたよ、でも今回の会議は話さなきゃいけないことがある」
「そうですか。・・・無理はしないように」
コバヤシとアリスのパーティはギルドの2階の大部屋に案内される。その部屋は緊張感に包まれていた。
ギルド長にこの街の管理者たち、そして何人かの冒険者、他には見知った顔もいた。
「・・・久々だな、サーウェスだ。ゼパルと名乗る者との闘い、話は聞いている」
「そうか。それとお互い生き残れてよかった」
椅子はお偉いさんの分しかなさそうだった。壁によりかかると話を聞く。
「今回襲ってきた敵は何者だ。報告によると大量の魔物を引き連れた不死身の男と聞いているが」
「恐らく悪魔と分類される太古の魔族だろうね。魔王の部下とか?」
マリーンの発言で場がざわめく。当然だ、一般的には魔王なんて歴史上の存在であり存在を否定するものまでいる。
しかしこの規模の侵攻活動は知能が低い魔物だけでは起きるわけはない。
コバヤシは不意に口を開いた。
「俺を・・・狙ってきたんだと思います」
「君は神に召喚されたと噂の冒険者だね。魔王とされるものに接触し生還したとも聞く」
ギルド長はコバヤシが生還した時、報告を受けていたが半信半疑だった。
しかしこんなことがあった後だ。言葉を選ぶように言った。
「そうです」
「君は何故狙われているのか、説明したまえ」
街の管理者の1人が疑わしい目を向けてくる。コバヤシはしっかりと目を合わせ、答える。
「あの不死身の怪物を殺す手段を持っているからです。信じてもらえるかはわかりませんが」
「バカな。そんな話信じられるか、大体そこの上級冒険者が戦っていたのだろう。そいつらが殺したんじゃないのか?」
そうだそうだと、場が沸き立つ。コバヤシをバカにするような発言まで聞こえる。あいつは昇級したとはいえ中級だろうとか。
「なっ・・・!コバヤシは確かにっ・・・!」
「待ってくれアリス。・・・最もだ、証拠を見せればいいんですね」
コバヤシは魔剣を召喚する。疲れているが、少しくらいなら大丈夫だろう。
魔力が編まれ、紫色の魔力を帯びた刀身が現れると、場が鎮まる。
「これが、魔剣ヘブンズギル。あのゼパルと名乗った騎士を殺した剣です」
「・・・どうやら本当のようだな。その魔剣、どこで君は手に入れたんだ?」
「偶然です。ある貴族の遺物を鑑定していたら見つかったんです」
ギルド長は頷くと、コバヤシの話を信じたようだった。
「話を聞かせてくれてありがとう。疲れただろう、すこし休むといい」
コバヤシは宿に向かった。
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