第9話 可愛すぎるだろ...

「...怜。俺の事煽ってんのか? 」


「えっ... そんなつもりないけど...」


「そんなつもりなくても俺は止めないからな」


色つきリップといい、キスの催促といい煽ってるとしか思えなかった。いつもなら多少の余裕もあるが今回ばかりはそうはいかない。思いっきりかぶりつく様にキスをした。声出てるし耳まで真っ赤だし可愛すぎる。怜に肩の当たりを叩かれてようやく我に返った。


「わりぃ 我慢出来なくなった」


「それは良いけど先に行っといてよ... 」


逆に言うと事前に言っておけばがっついてしまっても良いらしい。ごめん、ごめんと軽めの口調で何度か繰り返しつつ怜の頭を撫でる。そうしたらいつの間にか目がとろんとしていた。好きな相手が鉱石食べてキスしたら眠くなる理由が気になってしょうがない。まるで白雪姫じゃないか。いや、白雪姫は起きるから逆白雪姫か。ふと意識を怜に戻すと既に肩に寄り掛かって寝ていた。どうにか姿勢を変えてお姫様抱っこをしてベッドに寝かせる。やや色素が薄めの髪と肌が窓から入ってくる柔らかい光を反射している。こうやって見るとそこら辺の女の子よりも圧倒的に可愛い。髪はサラサラで柔らかいし、腕なんて少し力を入れたら折れそうなぐらい細い。全体的に華奢で守らないといけない気がする。今までに女の子にそう思ったことは無いのに怜にはそう思っている。ここまで好きだったとは自覚していなかった。それだけ好きな相手の為なら何時間でも待てる。怜が目を覚ますまで音を消してゲームでもして待っておくか。

ゲームを始めて2、3時間ほど経った辺りで怜がもぞもぞと動き出した気がして後ろを向くと本当に怜が起きた所だった。


「怜 おはよ。」


「おはよ。 よく起きるタイミング分かったね」


「何でか大体分かるんだよ」


「へ〜 ある意味凄いね」


そう言いつつ怜が伸びをするとお腹の辺りがちらっと見えた。気のせいかもしれないが大分鉱石が減っている気がする。


「怜 服の裾捲って? 」


「えぇ... 何で? 」


「鉱石かなり減ってね? 」


「え!? 本当!?」


一緒に確認してみると気のせいではなく本当に減っていた。思わず顔を見合わせてハイタッチをしてしまった。


「てか何でハイタッチしたんだろうね笑」


「さぁな笑 」


こういう所で息がぴったり合うのも幼なじみだからだろう。


「ねぇ大和? 」


「ん? どうした? 」


「えっと... その...」


「何でもいいから言ってみ? 」


「もしこれが治ってもキスしてくれる? 」


どうやら今日は立て続けに可愛い事を言ってくる日らしい。俺の理性がギリギリとはいえ保たれているから良いけどもし保てなかったら怜はどうするつもりなんだ。そんな事なんて勿論言える訳もない。


「逆にしなくなるとでも? 」


「という事は? 」


「治ってからもするに決まってんだろ」


「やっぱり大和って肉食だね笑」


「だろ笑」


こんな可愛い奴が恋人なんだから、という台詞は飲み込んだ。そこまで言ってしまったら流石にヤバい気がした。

時間も時間だしそろそろ帰ると怜に告げると今日も見送りをしてくれるらしく後ろから着いてきた。

「じゃあな。また遊びに来るわ」


「うん。じゃあね」


ドアが閉まったのを見届けて俺は早歩きで家に帰った。



「ったく... 可愛すぎるだろ」

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