第3話 え?
「......い.....怜...」
自分の名前を呼ばれてふっと目を開けると母が心配そうな顔で覗き込んでいる。カーテンの隙間から見えた限りでは青空が広がっていることと今が昼頃だということだけ分かった。頭がぼんやりとしていて体がふわふわしている感じがする。急にハッとして起き上がる。
「学校行かないと」
「うなされてたから休みの電話しといたわよ」
どうやら母曰く中々起きてこない僕の事を心配して朝に様子を見に来てくれていたらしい。起こそうとしたらうなされている上に熱もあったから学校を欠席する旨の電話をしてくれたらしい。手渡された体温計が37.7度を指している。母に体温計を渡すと病院に行こうと言って保険証類の準備をし始めた。熱でぼーっとしていたがその様子を見る余裕と自分の服が可笑しいという自覚はある。とりあえず白のTシャツに黒のジャージのズボンに着替えた。さっきまでの服よりかはかなりマシだろう。歩く気力も残っていなくて引き摺られるようにして車に乗り込んだ。病院はいつもお世話になっている
「怜くん入っていいよ〜」
と軽い感じで呼んでくれた。流石に高校生にもなって親と一緒に診察室に入るなんて死んでも嫌だ。のろのろと歩いて診察室に入るといつも通り細い縁の眼鏡をかけた優しそうな笑みを浮かべた
「熱が結構高い以外の症状って何かある? 」
「ん〜強いて言うならチクチクとした感じの痛みがある事ぐらいです。」
「痛み? どの辺に? 」
「二の腕辺りがっ......」
「二の腕辺りが痛む」と言おうとしたが言い切ることが出来なかった。途中で例の痛みに襲われてうずくまってしまった。
「大丈夫? ベッドに横になって少し検査したいんだけど動けそう? 」
どうにか痛みに耐えて検査用のベッドまで移動して横になった瞬間に力が一気に抜けた感じがした。Tシャツの袖を少し捲られて少ししてから「ん?」と聞こえてきた。
「これって まさか」
「どうかしたんですか?」
「鉱石病かもしれない 直ぐに検査しよう」
さっきまでの優しそうな顔が一気に険しくなった。看護師さんに指示を出していて慌ただしくなってきた 。「こうせきびょう」が頭の中で漢字変換出来なかった。二の腕を見るときらりと光るものがあった。よく見てみると天然石の類に見える。それが自分の二の腕から出ていると理解してすぐに「鉱石病」と変換できた。検査の道具は思っていたより少なかった。少し鉱石を採取して薬をかけて成分を見ると鉱石病か分かるらしい。少し鉱石を取って検査室に先生が入ってからは暇でしかない。二の腕の鉱石を見てみると意外と綺麗だった。桜のような淡い色からスミレのようなはっきりした色へのグラデーションだ。キラキラと光を反射している。意外と早く先生が出てきた。診察室に戻ると母も居た。やっぱり病気なんだとその時点で悟った。先生が険しい顔のまま
「玲くんは鉱石病です。しかもある方法でしか治療出来ない特殊な物です。」
「その方法って何ですか?やっぱり薬とか...」
「いえ... そうではなく」
「じゃあなんなんですか!」
母が声を荒らげた。普段穏やかで平和主義な母がこんな風になるなんて想像もつかない。先生が重そうに口を開いた。
「治療法はたったの1つ。患者の好きな人が鉱石を体内に取り入れてキスをするだけです。」
一気に空気が凍りついた。治療法はそれだけしかない。母が
「好きな人は居ないの?」
と聞いてきたが迷ってから居ないと答えた。迷ったというのは大和の顔が頭に浮かんだからだ。
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