第4話 上賀茂さん(2) (美脚ヨガ)
京都市東部を縦断する鴨川はYの字に流れている。
ずんぐり白馬の
神山号は道路にひょいと上がると、少し進んだところで足を止めた。
「おい、着いたぞ。あいつは中で待っているから、さっさと行け」
「ありがとう。また今度遊びにおいで」
「誰が行くか。遊んで欲しいならお前が来い」
「それもそうだね、近いうちにお邪魔するとしよう」
暇なら相手してやってもいい、鼻を鳴らして神山号は去っていった。
目の前には門が建っていた。荘厳な積み木の家とでも言おうか、二本の木の脚の上に横板が渡され、その上に再び二本足。そこに台形の
下鴨は門をくぐり、石畳を進む。道路に隣接しているはずなのに、門をくぐった瞬間、すっと静けさが辺りを包んだ。
「ようこそお越しくださいました。お連れ様は先にお部屋に入られていますよ」
流水文様の涼しげな着物姿の女性が出迎える。先導する彼女の帯には、2匹の鮎が泳いでいた。
「涼やかな装いですね。よくお似合いだ」
「あら、お兄さんみたいな良い男に褒められるなんて、光栄だわ。お連れのお兄さんも素敵だけれど、何も言ってくれなかったのよ」
「彼は生真面目だからね。でも、心の内では同じように思っているはずだよ」
「そうなのかしら」
部屋に入ると、
「兄者、久しいな」
「そうだね、雷馬。元気にしてたかい」
雷馬と呼ばれた男が立ち上がる。濃紺の浴衣には雲と雷文。矢羽根の連なりが若葉色の帯に一本の線を引いている。がっしりとした体つきだが背は低い、神山号に似て。などと言った日には忽ち矢の雨が降り注ぎそうなので、これまで触れたことはない。
彼が
「うむ。しかし積もる話は飯を食べながらにしたいものだ」
「お食事でしたら支度は整っております」
「そうか。ではさっそく
呼応するように、下鴨の腹がぐうと鳴った。
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