第2話 下鴨さん(2)(団子製造スタッフらしい)
日差しがじりじりと照りつける。
「そろそろ冷えたかな」
下鴨はカゴからラムネ瓶を2本手に取ると、本殿へ向かった。まずは西側の本殿の扉の前に一本置く。二拝二拍手。
「
心の中で呼びかけてから最後に二拝し、隣の東本殿に住まう
「うん、いいね。人間の
わざわざ暑さを感じる人間の姿で過ごすのはラムネを美味しく飲むためであり、美味しいと感じるには前段の我慢が必要不可欠なのである。そして人間の世界には季節それぞれに楽しめるものがあるから、結局いつも人間と同じ暮らしをしている。不便はもちろんあるが、その思うままにいかないところも、また面白いのである。
ラムネ瓶のビー玉を舌でつっつきながら今日の晩ご飯の献立を考えていると、目の端に何かキラリと光るものがよぎった。
しゅんっ。
右の頬をかすめて何かが後ろの石垣に当たる音がした。振り返ると、丹塗の矢が刺さっている。矢には
「兄者。私は旅にでようと思う。一緒にいかがか。返事を待つ。」
たっぷりの墨で力強く書かれた文には、しかし名前が書かれていなかったが、
しゃらりらりん。しゃらしゃらりん。
袋の中の鈴が清涼な音を響かせる。程なくして、
「悪いけれど、
「お安い御用!」
烏は胸を張ってカチカチ嘴を合わせる。
「ありがとう。では、わかった、と伝えておくれ。行き先は分かるね。帰ってきたらこの冷えたラムネをあげよう」
「ラムネ!ラムネ!」
「伝言は覚えているね」
「ラムネ!」
「うん、ちょっと惜しいね」
くるくると旋回して上機嫌な烏の様子に苦笑いしながら、下鴨は再度伝言を頼む。
「ワカッタ!ワカッタ!」
行ってくる、と言い残して烏は北へと飛んでいった。
「大丈夫かな。まあ、何にせよ向こうの
下鴨はビー玉を再びいじりながら、烏の帰りを待った。
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