第6話 しもべ

それからの彼女、聖竜王 破姫(セイクリッドドラゴンキング デストロイングプリンセス)、セイキンデスは俺について回っていた。

まあ、そりゃあ、ヒーローなんてことを言ってしまったからな。


しかも、彼女はまるで俺のしもべかのように尽くしてくれる。

俺としては至れり尽くせりだ。

しかし、さすがに悪いと思った俺は彼女に感謝の意味も込めてラーメンをおごることにした。


「セイキンデスよ」

彼女は呼びかけられたのにぽかんとしている。

そうか、彼女にはこの呼び名を伝えていなかったんだっけ。


「セイクリッドドラゴンキング デストロイングプリンセス、略してセイキンデスよ」

俺は咳ばらいを一つしてもう一度呼びかける。


「は、はい!」

彼女は合点がいったかのようにうなずく。


「おぬしも相当疲れているだろうからな、今日はお前にラーメンをおごろうと思う」

「いえいえそんな、恐れ多いです……」

彼女は手を前で振りながら遠慮する。


「まあそんな遠慮するな」

「……ですが——」

ただ誘うだけでは一向になびかないので、少し手心を加えることにした。

「ただ、ラーメンを食べに行くだけだと思うなよ?」


すると彼女の眼に輝きが宿る。

「と、言うと?」

「今回はな……そこのラーメン屋にパトロールしに行くのだ!」


彼女は喜色を満面に浮かべてこう言う。

「ということは、田中太郎様の日常はいつも世界を救うために行動しているということですね!」

「あ、ああ、そうだぞ」

なんか話があらぬ方向にずれたような気がするが、ここで否定して彼女がラーメン屋に行かなくなるのも困るのでとりあえず肯定しておく。


「素晴らしいです!その覚悟、見習います!!!」

「あ、ああ!見習え見習え!俺こそがヒーローだ!!!」

彼女は感極まって拍手をした。

やはり俺は——


隕石ドゴーーーーーーーン!

地球パッカーーーーーーン!

……世界は滅亡した。

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