第5話 再会
「あ、あの、田中太郎さん。これから——」
セイクリッドドラゴンキング デストロイングプリンセス、略してセイキンデス(他意はない)はここにきてようやく俺に気づいたようで、はっと息をのむ。
ああ、これこれ!この反応だよ!
そうだぞ!俺は凄い奴なんだ!もっと敬い恐怖しろ!
「あ、あれ?朝にも会いました?」
ああ、会ったとも。
しかし、俺はここで知らないふりをしなくてはいけない。
だって、もし知っていたらあれがかっこつけだってばれちまうかもしれないだろ?
だから俺は
「ん?知らないな」
と答えた。
「でもやっぱり会いましたよ!ほら!車に轢かれた!」
そこで俺は心当たりがあるフリをする。
「ん?ああ、もしかしてあれか?俺のとっく——」
そしてここでわざとらしく黙り込んで、聞こえるようにこう呟いたら完璧だ。
「まずい!うっかり口を滑らしちまうところだった……俺が地球を守るために特訓していることはあいつとの秘密で……」
ちらりと彼女の方を見ると、みるみる目は見開かれ一層輝き、まるで目の前にヒーローがいるかのような顔をした。
「すごいです!」
彼女は羨望が最高潮にまで達した様子になると、こう言った。
「ああ?もしかして聞こえていたか?」
「え、ええっと、い、いえ、聞こえていませんでした!」
彼女は俺がそれを隠しているのを気にしてかそう言ってくれた。
俺はこう続ける。
「ちっ!ばれちまったか……どうか俺たちの間の秘密で頼むぜ?」
「は、はい!」
すると彼女は手を打って喜び、頬に手を当てるとうっとりした表情になった。
また俺の凄さが——
隕石ドゴーーーーーーーン!
地球パッカーーーーーーン!
……世界は滅亡した。
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