第5話 晴人、告白

 千重は学校ではあまり他の生徒と関わりがなかった。お金持ちのお嬢様だから? それは違う。理由は単純に空気から浮いてしまうから。千重は学校で友だちは居なかった。


 黒塗りの高級車で社交の会場に向かう千重。千重は考えていた。自分は果たして普通なのだろうかと。自分にはいったい何があるのだろうかと。そんな不安のひとつひとつをアプリのマイケルが消してくれた、そんな気分の千重だった。


 さて、社交の会場、千重は今日はひとりである。見知らぬマイケルのことをぼんやりと思っている。そこへ、晴人が。


「千重さん、ちょっとよろしいでしょうか?」


「はい、なんですの?」


「千重さん、付き合ってください」


 晴人のいきなりの告白だった。千重は急にドキドキが止まらなかった。千重にとって恋というものは、アプリのマイケルという見知らぬ人からのものだけだと思っていたからだ。千重は照れ笑いをひとつ。


「晴人さん? 私でよろしくて?」


「ええ。千重さん」


 社交の会場は、いつも通り。ただ、ひとつ変わったと言えば、千重は見知らぬマイケルと、晴人を同時に好きになるということだった。

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