第2話 占守島の異変と日常
扉がガンガンとたたかれているな。せっかく気持ちよく寝ていたのに。
「正孔中尉、正孔中尉!緊急電報です!」
「何、しばし待て」
緊急電報なら急いで受け取らなくては。いそいそと着替える中、はたと気付く。
(一昨日の‘’アレ‘’関連のことかな。だとしたら現地に行くのはやだな。キヨさんと会えなくなるし)
しかし電報配達担当者はいつになく焦っている。まあ緊急電報だしな。
「はいよっと」
ドアを開けて担当者と対面する。走ってきたのか少し息が上がっている。
「正孔中尉、電報です。中身と発令下は絶対に明かさないように第一種守秘命令が貴官には届けられています。絶対に明かさないようにしてください。今言いましたからね。私に迷惑はかけないでくださいよ。本当に今言いましたからね」
緊迫感持ちつつ早口で行ってきた。緊急電報といえどそこまで機密の内容というわけではないはずだ。それなのにこんなに注意してくるということは非常に機密性の高い命令ということだ。
「お、おう」
えっと何々、北方方面軍統合参謀本部発……参謀本部!?参謀本部ってあの参謀本部か!?え、俺左遷されるの。いやでも特に何かをしたということではないし、電報担当者は守秘義務が有るといっていたし、きっと重大な移動とかそういの何だろうな。
内容の確認のためにビリビリと封を開ける。
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北方方面軍統合参謀本部
正孔幸一中尉に占守島守備隊への移動を命じる。これに対する守秘義務をかす。出航日は参日後とする。
瀬戸日史北方方面軍統合参謀本部人事局長
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(え、どういうこと?)
占守島の方には特に何も無いからただの後方への配置転換なだけのはずだし、何か資源が見つかって重要地域になったわけでもないし。一体何が起きたんだろうか。ともかく命令には従わないと。
はあ。キヨさんと会えなくなるのか。寂しくなるな。出立の船は参日後とあるからそれまでにキヨさんといっぱい話しておくか。
「キヨさんおはようございます。一昨日はどうでしたか?」
「幸一さんおはようございます。一昨日は結局父が吐いてそのまま玄関で寝てしまったので母さんと一緒に寝室まで運びましたよ」
その後、キヨさんと楽しく歓談した。
「そういえば今日は軍服を着ていませんけれど今日休みでしたっけ」
「ああ、今日は休みなんですよ。考えはあっていますよ。キヨさん」
少し離れたところから同僚の吉家が走ってきて手前で止った。
「幸一、将軍閣下から執務室に来るように言われているぞ。おまえ、何かしたのか滅多に人を呼ばない閣下から呼ばれるなんて」
ああ、移動のことかな。
「大丈夫大丈夫。何もしていないぞ。キヨさんも安心してください」
キヨさんが不安げだ。
「それでは私は各課の執務室に向かいます。吉家、ありがとう。キヨさん、ではまた」
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