《6/23/2242/6:15 Niehr Owen》
『ニアハ……ニアハ』
最初に聞こえてきたのは、しわがれた女性の声だった。
視界は真っ暗だ。目を閉じていたのか、それとも、データが破損しているのか。
『あ……、ア』
どうやらこれはニアハが死ぬ寸前のデータらしい、とあたりをつける。
続いて心内音声が聞こえてくる。
【もう……かすれて、声が、出ないや】
【どうやら、その時が、来たみたいだ】
手のひらにきゅっと強い感覚。そして、女性のすすり泣く声。
【そんな、泣かないで】
ニアハの思いとは裏腹に、高齢の女性はなおも泣き続けた。
【確かに、いろんなことがあった……ひどいこと、ばかりだった。でも、でも……】
その時、喉にぐっと痛みが走る。
『あの、子が……』
全身全霊を込めてニアハはそう言う。
【僕らの、希望、だから】
そして、そこでニアハ=オーウェンのバイタルデータは途切れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます