第76話 ギルドルク併合③
「このまま籠城をしたところで勝ち目はないぞ!!」
「だからと言って討って出ればそのまま即滅亡だぞ!!」
「くそ!! あの傭兵がもう少し粘れば次の一手が打てたというのに!!」
レクリヤーク城で行われている
(普通に考えればこのまま籠城を続けていれば間違いなく私を殺してその首を持って降伏するというのが順当よね。でも
ソシュアは考えた方針を却下せざるを得ない。理由は簡単で、一戦したところで手強いと思わせることが不可能であるからだ。
ソシュア側は指揮官がいないのである。ソシュアの元に集ったもの達は貴族の系譜であっても傍系であり、しかもほとんど平民と同じような立場でしかない。要するに兵を指揮した経験がないのだ。
兵を指揮する指揮官というのは間違いなく特殊技能であり、一朝一夕では身につかないものだ。その特殊技能を持つもの達は初期のザーベイル軍との戦闘でほとんど戦死している。
そのような状況で百戦錬磨のザーベイル軍と戦えば間違いなく赤子の手をひねるよりも簡単に撃破されるのは目に見えているのである。
(はぁ……もう考えるのも面倒よね。どのみち殺されるんだから考えたって意味ないわよね。もういいか……言っちゃいましょう)
ソシュアはありとあらゆる打開策を考えたのだが、どう考えても無理であるという結論しか出てこない。そのため、もういっかという気持ちになっているのは仕方のないことだろう。
「みな、聞きなさい」
ソシュアが口を開くと議論がピタリと収まり一斉にソシュアに視線が集まった。
「この状況ではもはや状況を覆すことはできないでしょう。降伏し、私の命で皆の助命を申し出ることとする」
ソシュアの発した言葉に全員の顔が凍った。ソシュアの発言は全員が心の底に持っていた最終手段であったが、誰もが最初に口にするのを躊躇う策であったからである。
「な、何を言われます!!」
「女王陛下が失われればギルドルクは完全に滅亡してしまいます!!」
「そうです!!それだけは避けねばなりません!!」
次の瞬間に全員が猛反対の発言を行う。
「しかし、このままではあなた達の命が危険にさらされます」
ソシュアはそう言って苦しそうな表情を浮かべた。
その表情は庇護欲を誘うものではあるが、ソシュアは別に助けてもらおうという意図からの表情ではない。単に考えるのが面倒になっているだけである。それだけソシュアは精神的疲労を抱えていたとも言えるのである。
(これは……ギルドルク王家にもまともな者がいたということか?)
(少なくともあの
リョシュア達はソシュアの発言に少しばかり心を動かされ始めている。ソシュアをここに連れてきてからそれなりの月日が経っているが、ソシュアからワガママを言われた記憶はないし、粗末な食事、部屋であっても文句を言ったことすらないのである。
これはソシュアが不満を持っていないというわけではなく、単にリョシュア達がザーベイル側であることを看破したために頼ることを放棄した結果である。
「一度も闘うことなく降伏というのは流石に情けないというべきではありませんか?」
「う、うむ、流石に一度も戦わないわけにはいかない」
リョシュアの言葉にレオス達も頷いた。何かと反目し合う両者ではあるがこの問いは珍しく意見があった。
意見は確かにあっているがその根幹は全く異なっている。
リョシュアはレオス達の勢力を
レオス達は既に勝ち目がないことをわかっていた。そのため、ザーベイルに降伏するにせよ実力を評価されなければならないと考えているのである。どう考えても目論見が甘い以外の何ものではないのだが、本人達はいたって真面目である。
「しかし、それでは犠牲が出るだけです」
「女王陛下は我らを信じられませぬか?」
(当たり前でしょう!! 無能な味方は有能な敵よりも質が悪いに決まってるでしょう!!)
レオスの言葉にソシュアはかろうじてその言葉を飲み込んだ。
「女王陛下が我々を大切に思っていただけるのは嬉しく思いますが、まずは一戦しないことには交渉の際に侮られてしまいます」
リョシュアの進言にソシュアは反論できない。交渉のための戦いと言われてしまえばソシュアとしても強く反論することができないのだ。
「……わかりました。実戦のことはわかりませんので口出しはしませんが、武運を祈ります」
「はっ!!」
ソシュアはそう言うと口を挟むことをやめた。
ソシュアの承認を得たとしてリョシュア、レオス達は即討って出ることになった。
(勝てる見込みはゼロ……できるだけ犠牲がなければいいのだけどね……)
ソシュアはそう願わずにいられない。
ところがソシュアの予想とは裏腹に……初戦を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます