第10話 本当の敵と変革
アルハザードは休暇を得ている。
そんな時、アルハザードの前に人物が現れた。
アルハザードが今一番謎に思っているその人物は何か持っているわけではない。
すると何かアルハザードから魔力の増大を感じる。
「なんだこれは」
アルハザードはその魔力を使ってみる。自分がもう一人現れた。
「なるほどー、つまらない面倒くさい能力に覚醒したねー」
「私に何か用かね?」
「どっちが本物?」
「わからないね、初めて使ったからね」
「まあいいやー」
「それで用事は何かね」
「そんなの一つしかないよ、殺しに来たー」
アルハザードは目の前の人物が何を言っているのか理解できない。
とっさに洗脳の術でその人物を洗脳しようとしたがその人物には効いていない。
「何の冗談かな?スピリア」
その人物は謎多きスピリアだった。
「まずはそうだね、秘書の座にあたしがつくかな、キャロットは面倒くさいから先に殺しておいたけど」
スピリアの考えていることが理解できないうえに辻褄が合わない。
「秘書の座に就きたかったのかね?キャロットを殺害したのは恐らく魔王デモンの仕業だと思うけれどね、君はその時戦うことすらできなかったではないか」
「その分身の術解いてくれない?ややこしいなー。他にも分身張り巡らせてないよね?どっちにしろ今からネイシアが来てアルハザード、君の能力を消滅させるんだけどね」
「ネイシア王子が?セインヅカ帝国とは同盟中だろう?」
するとものすごいスピードでやってくる水色の龍、ミネルヴァ。ネイシアはスピリアを守るように降り、アルハザードに触る。ネイシアの能力を発動。アルハザードの分身は消えアルハザードは魔術師というクラスそのものを剥奪したことになる。
「なぜですかネイシア王子…」
「僕は首都メソッドから迫害された存在です。首都メソッドの魔術師を恨んでいないと言われれば嘘になります。持ちたくもない能力を持たされてその気持ちがわからないでしょうね」
「ですが、まだ能力が二つ開花する可能性があります、先ほどの私のように」
「それは可能性にすぎません、開花する可能性のほうが低いんですよ」
「長話は終わったかなー?」
「申し訳ございません、姫。どういたしましょうか?」
「もう帰っていいよ、じゃーねー」
「わかりました、いつでもお呼びください」
「どういうことだい?スピリア、君はネイシア王子とグルだったのかい?」
アルハザードはもう能力は使えない。
「うるさいねー」
スピリアはアルハザードを見た。その目は赤く光った気がする。アルハザードの何かが吸い取られている気がする。
「命が…命が…」
スピリアの何らかの能力によりアルハザードは息を引き取った。
「今度は誰がいいかなー」
「エリル様、私新しくフェニックスが出せるように出しました」
「能力の覚醒ですかフレイさん」
「どうなんですかね、私は炎を操る魔術師でフェニックスも炎ですし覚醒ではないと思うんですよね」
「見てみたいですね…」
「いいですよ、小さくしますね」
「大きさも変えられるんですか…?もしかするとサイズが変更できる能力に目覚めたのではないですか?」
「でもフェニックス自体炎ですし」
「試しに花を大きくしてみたりできませんか…?」
「了解です、エリル様」
すると花が大きくなった。気を抜いていると小さくなった。
「フレイさん…これは覚醒ですよ」
「私の能力、サイズを変更できる能力ですね」
フレイの小さなフェニックスと精霊シルフィ、精霊ブラッディは意気投合している。
ジンとナイアは。
「やっぱり最後の戦い納得いかねぇな」
「僕たち全然活躍できなかったし最後の魔王デモンの姫っていう悪魔がいることになるもんね」
「全然参加できてなかったな俺。ナイアが一番活躍してたかもな」
「そうかな?僕はスピリアさんだと思うけど」
「確かに俺はフレイと、ナイアはスピリアと組まされること多かったな」
「アルハザードさんはキャロットさん、エリルさんは索敵って感じだったね、ジンはこれからどうするの?」
「どうするって?」
「メソッドの兵になったりするのかなーって」
「俺の能力じゃ無理だろうな、戦闘向けの能力が開花したら話は変わってくるけど」
「フレイさんやスピリアさんみたいな前線タイプの能力かな?」
「スピリアの能力って能力無効だろ?前線タイプなのか?」
「え?スピリアさんの能力はジャンプ系統の空中系の能力じゃないのかな?」
「いやいや、俺の静止能力使ってる時普通に動いてたぜ」
「それはあり得ないよ、どんなものでも止められるんだよね?僕は結構スピリアさんと組まされること多かったから言えるけどそんな能力とは程遠かったよ」
「じゃあ覚醒してるってことか?」
「でもどのタイミングで?」
「ヒーリア皇帝ならわかってるんじゃないか?」
「でもスピリアさんいろいろとおかしいんだよね」
「確かに俺の静止も効かないあたりおかしすぎる、あの時からだな、不信感を抱いたのは」
「でも今ならもう安泰だし裏切るとかないから教えてくれるんじゃないかな?」
「そうだな、聞きに行くか」
「簡単に言うけど今のヒーリア皇帝はヨガン魔術師団のヒーリア様ではなくて首都メソッドのヒーリア皇帝だからね?そんな簡単に通してくれるかなぁ」
「まぁ行ってみようぜ」
ジンとナイアは皇帝となったヒーリアの元へと向かうのであった。
「ヒーリア皇帝、ジン・ガイアールとナイア・シリウスというものが話をしたいと言っておられますが通しますか?」
「ジンとナイアか?何かあったのか?今日は秘書のアルハザードもいないしまあいいか、通せ」
「承知いたしました」
「入っていいぞ」
「失礼いたします」
「失礼します」
「どうした?何かあったか?ナイア、ジン」
「あの、終戦もしたことですし聞きたいことがありまして」
「なんだナイア、言ってみろ。ちなみに魔力覚醒の件については見たところお前たちはまだ覚醒してないな」
「いや、そういう話ではなくて」
「じゃあなんだジン」
「スピリアの能力って結局何だったんですか?」
「そういうことか、本人から聞けばいいだろう、間違われやすいからな。もう終戦したし教えてもいいか。自分を武器に変える能力だ」
ジンとナイアは顔を見合わす。
「確かに半分納得できますけど半分納得できませんね」
「ちなみに魔王デモンを倒したときにスピリアの魔術を見通したが覚醒は起きてなかったな」
「いや、それはあり得ませんよ、俺の静止する能力で動いてたんですから」
「なに?どういうことだ?」
「ファーランベルク四天王と戦った時ありますよね?あの時に静止する能力使ったんですよ、そしてセルベールを捕まえた時ですね。その時普通に話してたし動いてましたけどヒーリア様の能力って本当に魔術を見通す力ですか?どちらか嘘ついてませんか?」
「私の能力は間違いなく魔術を見通す能力だ。フレイが水を操れたか?」
「じゃあなんで俺の能力で俺以外の人間が動いてるんですか?」
「お前が嘘ついてないだろうな?」
「本当ですよ」
揉めそうになっていた時、兵士からの通達で状況は一変する。
「通達です、アルハザード・クロウリーが死亡しているとのこと、また、セインヅカ帝国のネイシア王子が首都メソッドを訪れていたとの模様」
「どういうことだ」
「私にもわかりません」
兵士たちはアルハザードの遺体を持ってくる。
「魔力がないな…」
「魔力切れによる即死ということですか」
「違うぞナイア。魔術師というクラスそのものを失っているため魔力自体存在しない」
「え、それってつまり…」
「セインヅカ帝国のネイシアによる仕業。この件にミストリア姫は関わっているのか」
「まるであの時のルセリオスと同じ時の展開みたいじゃないかそれって」
「エリルの次はアルハザードか、今回は禁術ではない、死亡させた。助けようがない」
「ミストリア姫は関わってないような気がするなぁ」
「関わっていたら同盟は破棄だ、関わっていなくともまたしても内部分裂が起きるぞ。今度はカナトス派とネア派。訪れた時刻は?」
「おそらく昼だと思います、ものすごいスピードで」
「今もまだ昼だぞ、そう時間は経っていないじゃないか。ミネルヴァはセインヅカ帝国の中でも最速の龍だ。ミネルヴァを出し抜いて先にセインヅカ帝国に着くことは不可能と考えていい。ミネルヴァの速さならば最速でセインヅカ帝国から首都メソッドまで一時間から二時間近くで来ることはできるな。往復で二時間長か。ただ使者は送れ、ミストリア姫にネイシア・ネアの昼の行動を聞く必要がある。ジン、ナイア、緊急事態だ。今は話しに付き合っている暇はない」
唐突のアルハザードの死、ヒーリア、ジン、ナイアは驚きを隠せない。そして何よりネイシア・ネアがもし敵に回っていたのなら能力上首都メソッドの天敵なのだ。
「エリル様ー」
「スピリアさんですか…」
「エリル様はやっぱり秘書かなー」
「どういうことですか…?」
「何でもないよー、フレイちゃん」
「どうしたの?」
「うーん、いなくてもいいけど戦闘部隊かなー、護衛兵でもいいねー」
「ん?」
フレイとエリルは顔を見つめあう?
「エリル様が好きな人が確か…」
「それは…その…」
「あれから変わってないんですか」
「変わってないですね…敵わないでしょうけどね」
「でも男らしさないよね、私はそういう人いないけどやっぱりナイアみたいな人が好きなんですね」
「それ以上言わないでください…」
「大丈夫だよ、ナイアきゅんには手を出さないから」
「え?スピリアもナイアが好きだったの?」
「違うね、男の中では一番マシではあるけど、大丈夫、あたしの方がかなわない恋してるから。あたしはジンに手を出すことにしようかなー」
「おぉ、スピリア意外だなー、男らしさあるからいいんじゃない?どちらかというとアルハザードかと思ったけど」
「ジンさんですか…頼りがいはありそうですね」
「じゃあ行ってくるねー」
「行動派だなぁスピリアは」
エリルとフレイはジンに手を出すの意味をジンに告白するだと勘違いしていた。
スピリアはジンに手を出すことにした。ジンを殺害する、という意味で。
夕方、猛スピードでやってくるミネルヴァ。ミストリア姫とネイシア・ネアだ。
「ミストリア姫とネイシア王子が来られました」
「速いな、ミネルヴァならわかるがホーリーにそんな速度あったか?」
「いえ、今回はお二人がミネルヴァに乗ってきておられるためホーリーはおりません」
「それならわかるがよく主犯者が来られたな、通せ」
ミストリアとネイシアがヒーリアの元へ現れる。
「さて、どう落とし前を付ける気だ?今回はミストリア姫も関わっているのか?」
「待ってくださいヒーリア皇帝。アルハザード様の死は今日の昼に起きて今日の昼にネイシアが訪れたというのですよね?」
「そうだ、見た者もいる。それにネイシアは生きているということはネイシアと同じ能力を持つ魔術師がいることはない。アルハザードやキャロットのように死んでしまった場合は新しくその能力を持つことはあるがな」
「僕がアルハザード君を殺したということですか?」
「それ以外考えられんだろう」
「あり得ません、ネイシアは今日はずっとわたくしと共にいました。目の届かない時間でも30分くらいでしょうか」
「セインヅカ帝国最速のミネルヴァでも首都メソッドに着くのに速くても一時間はかかる。さらに往復だ、二時間はいないはずだな。嘘を吐いていないか?」
「いいえ、わたくしたちは確かにセインヅカ帝国で資料をまとめていたため首都メソッドに行く余裕などございません。長くても昼食の30分くらいです」
「矛盾しているな、なら遠回しに私達の首都メソッドの誰かが禁術を使いネイシアと同じ能力を持ったとでも言い張るのか?」
「そうは言っておりません、しかし、30分で最速のミネルヴァと言えどもセインヅカ帝国から首都メソッドにしかも往復で行けるなどあり得ません」
「ワープ魔法、いるかもしれんな。それが本当ならこの首都メソッドに主犯者がいるということになるな。何者かが暗躍している。ネイシア王子よ。確かにお前は首都メソッドから迫害された首都メソッドに復讐という意味で殺すという行為に出た動機がある。しかしミストリア姫の目の届く範囲にいたというアリバイもある。だが第一にここにネイシア王子本人が来られたということが殺していない一番のアリバイかもしれないな。本当に殺害していたのならこの私と会う勇気すらないだろう」
「僕は本当に殺していません」
この矛盾した問題に頭を抱えるヒーリアであった。
同時刻。
「もう夕方か、よしそろそろお開きだな」
「そうだね、また明日だね」
ジンとナイアが別れた。ナイアと入れ違いでスピリアがジンの元へと訪れた。
「おう、スピリア。ちょうどいい、聞きたいことがあったんだ」
「なにー、今のうちに答えるけど」
「お前の能力は本当に能力を無効にする能力なのか?それとも自分を武器にする能力なのか?」
嘘を吐いているのはスピリアなのか、ヒーリアなのか。二人から聞く必要があった。
「あれ、どこから自分を武器にするが出てきたのー?あたしがそんな能力だったら静止能力内で動けたはずないじゃん」
「だよなぁ、だとしたら嘘を吐いているのはヒーリアか、俺たちを騙して何が目的なんだ?」
「あたしが武器になる能力って言われたの?」
「そう聞いたな、ヒーリア様からは」
「ふーん、ヒーリア様の目的は混乱かな?」
「確かにいろいろと辻褄が合わないな、ヒーリア様はスピリアを陥れるためにわざと嘘を吐いた。スピリアが恨みを買うようなことをしたのか?もうすでに能力は覚醒しているのか?ヒーリア様が嘘を吐いているのならスピリアの能力は能力の無効化、飛行系の能力、もう一つは何か殺害系の能力、もう三つ覚醒してるんじゃないか?」
「なるほど、ヒーリア様が嘘を吐いてる、そういうやり方もあったねー」
「どういうことだ?」
「何でもないよー、ヒーリア様はこれからも嘘を吐くんじゃないかなー、そしてあたしを貶めた後は次はジン、君を貶めるかもよ。この事実が公にされたらヒーリア様は皇帝を名乗ってはいられないねー」
「スピリア、ヒーリア様とどういう関係なんだ?裏ではスピリアとヒーリア、何かやりあってないか?」
「ある意味やりあってるかもねー、先に喧嘩を売ってきたのはあっちだけど」
「何をされたんだ?」
「汚い真似をされたからあたしも汚い真似をしてるだけだよ」
「嘘、か、どっちが嘘吐きなんだ」
次の瞬間、ジンから何かが沸き上がる。それは莫大な魔力。何かが、すべてが、捻じ曲がる。この世の中の常識が覆される。そんな感じがした。しかし一瞬だ。その莫大な魔力は消え去り何かが大きく変わった。
スピリアは急に倒れた。血を吐いている。
「がはっ…なに…これ…何の能力に覚醒したの?」
「能力の覚醒?何を言ってるんだ?」
「二つ目の能力は…なに…」
「二つ目の能力?『魔術師は固有の能力を一つしか持てない』ぞ、何言ってるんだ?」
「え…嘘、でしょ?」
スピリアはなぜか怯えている。
同時刻。エリルとフレイ。
「エリル様。私の二つ目の能力が覚醒…ん?私は何を言ってるんだ?魔術師は一つしか能力を持てない。私の能力は炎を操る能力」
「どうしたんですか…二つ目の能力なんてあったらいいですね…そんなこと『あり得ませんけど』」
「一年前の禁術…ん…?『禁術とはなんだ?』私は何を言っている。一年前に起きたのは破壊魔法だな、すまない、わけのわからない用語が出てきた。なんだ禁術とは」
「大丈夫でしょうか、ヒーリア皇帝は疲れていませんか?」
「ん?」
「どうしました、ネイシア」
「記憶がないんです、10分だけ何の記憶もないんです、なぜか10分だけと覚えているんです」
「どういうことだ、誰かに操られていたのか?」
「わからないんです」
ジンの何かにより何かが変わった。それはありとあらゆる全てである。
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