性的倒錯(仮)
@frotteurist
カルテNo.01026 木村隆一(きむら りゅういち)
生年月日: 1991年7月18日(満30歳)
性別: 男性,ヘテロセクシャル
来院年月日:2021年8月1日(初診)
病名:
概要: 発症は10年前2011年8月。
以後同意・非同意を含めて月3、多くて週2で繰り返している。
次回のカウンセリングを2週間後に設定し、
そこまで痴漢行為を行わないことを約束。
文字起こし:
きっかけは彼女とのデートだったんですよ。
あれは、大学生になって、初めて出来た彼女でした。名前はさやか。同期でした。あ、でも僕は一浪していて、彼女は現役だったので、年齢は一個下です。
付き合って4~5か月だったかな。みなとみらいに映画を見に行ったんですよ。そうそう、ワールドポーターズ。映画を観ていたらちょっとエッチなシーンがあって、まあ、そういうのあるじゃないですか。ちょっとムラっとしちゃって。もうセックスとかもしていたし、映画の最中に隣に座る彼女にちょっかい出したんですね。どんな?ええと、たしか、胸を揉んだりだとかだったと思います。そしたら結構強めに跳ね除けられて。
映画の後にごめんって謝って、そのあとは赤レンガ倉庫とか行ったりして普通にデートしてたんですけど、最後に観覧車乗ろうってなって。観覧車って個室だし周りから見えなくなるところあるじゃないですか。それでまたさっきのムラつきが蘇ってきて。隣に座ってキスとかしたんです。それは普通だったんですけど、抱き寄せながらお尻触ったり胸に手をかけたら、もうそれはすごい勢いで拒否されて。僕を、汚物かのように見てくるんですよ。そのあとはほとんど口も聞いてくれなかったです。
その後さやかから別れを告げられました。セックスは、していたけど元々そんなに好きでもなかったとか、何よりそのデートでされたことがとてつもなく不快だったって言われたんです。でもそんなの大学生の男に、無理じゃないですか。ある程度周りからの目線が遮蔽されている場でも我慢するなんて。それに、そのときに気付いたんですよ。僕はそういう場で触ることにとても興奮するってことに。だから、あれが僕がこういうことを始めたきっかけだったなと。
それ以前?ないですよ。さすがに知らない女性を触るなんて高校生のときには出来ませんでしたし。でもそれはむしろ普通の倫理観で触らなかったという方が正しいですね。正直、電車が混雑しすぎてどうしたって女性と肌が触れてしまうようなときにちょっとラッキーとか思ってましたから。ただ、今思えばその感覚こそが、僕の本音だったのかもしれないですね。
そこから、そういう痴漢みたいなことが好きなんだって自覚してから、そういう画像とか動画を検索するようになりました。でもそういうのってやっぱり映像作品として作られたものなので、そんなに興奮しないんですよ。リアルじゃないというか。だって、電車の中で突然女性の服がはだけていたりとか、セックスが始まったりして周りが無反応なんてありえないじゃないですか。
その点、体験談なんかは興奮しました。体験談だと文での描写がすべてなので、目で見える映像や指で感じる世界を文字に起こしさえすれば、心の内ですらどんなことでも描写できるんですよ。痴漢している人だったり、痴漢されている人の目と指と思考のすべてがそこに現れる。
AVで、混雑して密着しながらスカートをたくしあげるとか、触ってる女の人の肌の感触とかその感想とか、そういうの撮るのは無理なんですよ。スカートをたくしあげる描写を撮ろうと思ったらスペースを作らなければいけないし、肌の感覚がすべすべなのかもちもちなのか、怖くて鳥肌が立っているのか混雑で汗ばんでいるのか、感想だってナレーションなんて入れたら興ざめですよ。
だから、僕は体験談を読み、それに興奮して自慰をして、ということをしていました。
ただ、段々とそれだけじゃ飽き足りなくなってきて。ちょうど別れたあとの秋か冬ですね。一浪のおかげでまあまあな大学に入れましたから、合コンなんかでも可愛い子と出会えることも多くて。他大の女の子とよく合コンしてました。11月くらいから「クリスマスに恋人が欲しい」ってみんな合コンしたがるんですよ。そこで会った子といい感じになって、みたいなことも結構やってました。大体金曜と土曜はそんな感じでしたね。
8時くらいに1次会はお開きになって、そこからは三々五々。僕、結構漫画を読むので、漫画喫茶に誘ったりして。相手の女の子たちも気合い入れてくるんで、可愛いスカートとか結構脚が出る服で来てたりして。漫画選びながら本棚の陰でいちゃついたり、ブースに戻って息をひそめながらまさぐってみたり。それで嫌がれば止めるしそのまま盛り上がって、ホテルに行くこともあればその場でセックスまですることもありました。
え?同意?ですよ?だって合コンに来てる女の子たちだって男を探しに来ているわけだし、嫌がったら止めてますもん。どんな子を選ぶか?合コンのときに?まあ、僕のこと好きそうな態度って分かりますよ。合コンだとドキドキさせるためにボディタッチって結構するじゃないですか。そのときに腰に手を回したり、太ももを触ってみたりすればすぐ分かります。簡単ですよ。先生は合コンしなかったんですか?あー、そうなんですね。意外と臆病なんですね。あ、全然大丈夫ですよ。気にしないでください。えーと、そうそう、
で、漫喫でセックスするのが、一番興奮するなって思うようになったんです。いや、もちろん快適なのはホテルですよ。でも学生に合コン代とホテル代を週2で捻出しろってのは結構無理で。で、しかも漫喫でセックスもしちゃおっていうと恥ずかしがりながら承諾する女の子が可愛くて。声を殺しながら感じてる顔を目の前にするともう、このままさせてくれ……!って思うようになって漫喫ですることが増えましたね。漫喫によってはきちんと扉みたいになっているところもあるので安心ですよ。なかなか少ないので、普通は上とか下とかから覗こうと思えば覗けるようなブースでしかないんですけどね。女の子たちも薄い板を隔てて人がいるようなところで、
恋人はできたか?いや、結局その合コンで何人かセフレになっただけで、彼女にはなりませんでしたね。だからこそ、クリスマス前後は逆に色んな子と遊んでました。
美弥は地味めに見られがちなんですけど、達観しているというか、何をしても「そういうもんでしょ」って顔をしているというか。スリムで、胸はDで大きくなかったですけど、顔も割と整ってるし、結構好きでした。実はこの冬彼女にするなら、と思って告白もしたんですけど、彼女は「リュウちゃんは女の子とセックスしたいだけでしょ?」って言われて、フラれちゃったんですよね。だから彼女はできなかったんですよね。でも家に遊びに行くときはきまってセックスしてるかご飯食べてるか寝てるかだったし、まあそう言われても仕方ないかなって。
で、あ、はい。そうか時間ですね。はい、再来週の同じ時間に。はい。よろしくお願いします。
性的倒錯(仮) @frotteurist
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。性的倒錯(仮)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます