第14話

あれから数十年の時が過ぎ、私の体ももうそろそろという頃になった。


結局、最後まで生きていたのは私だったようだ。妹も逝ってしまって、今は私の家族が唯一の安らぎだ。


──今から書くのは、その余生、いや、後書きのようなものだろうか。まあ、文才では無かったから、随分と読者を退屈させたように思えた。


そして、この本は人目につかないところにでも置くとしようか。


大変な冒険を私の子供や、孫にもして貰いたくないから?


いや、ただ私の子供の頃を見られるのが、こっ恥ずかしいだけだ。


──さて、そろそろここで私の物語は幕を閉じるとしようか。


これを見ている君は、私の孫? 曾孫? それとも、私の親族でもなんでもないだろうか。


私は、これを見ている君に旅に出ろという気は無い。


ただ、ただ、過ちを悔いた者、感情は無くとも、誰かを守る志があった者、そして何より、「春の国」があったことを知ってくれればそれでいい。


──もう、逝くとするか。


さらば春の国。


私は、「あなたを忘れない」


ロナウド・クルス



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春を知らないこの世界で マル @ushiyama

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