第9話
「……もう自分で歩ける」
もう随分と抱きかかえられて歩いていたから、流石に恥ずかしかった。
なにせ、このときの私は13歳。お年頃といえばお年頃なのだ。
「そうか、そうか」
ゲイルは笑っている。ルーズも顔に笑みを浮かべていただろう。
どちらも、こういうことは体験したということだろうか。
「──ん」
見透かされたのが少し恥ずかしくなった。
「ところで、何処へ向かってるの?」
これ以上何も言われたくなかったから、すぐさま話を変えた。
「それはまあ、お前の妹さんの所さ」
「知ってるの!」
当然、私は嬉しくなった。妹に会えるかもしれない、そのことだけで飛び上がりそうになるくらいだ。
「でもな」
とゲイルは改まったように言う。
「そこにいなけりゃ、妹さんはもう探しても無駄だ」
「うん、わかった……覚悟はしておくよ」
わかってはいた。こうは言いたくなかった。けれど、私が認めなくては何も始まらない。
そんな私を励ますかのように、ゲイルはそっと微笑んだ。
「よぉし、じゃあ早く行くぞ!俺についてこい!」
「隊長、少し野暮というか、私が間違っているのかもしれませんが」
いい所で、ローズが口を挟んだ。
「ん、なんだ? ローズ」
「そちらは反対方向のような気がするのですが……」
「え、あ、そう? そうかあ、やっぱり? こっちだな、行こう」
「いえ、そちらでもないです」
顔を真っ赤にしているゲイルに、ローズは追い打ちをかけた。
「あ……教えて下さい」
「ふ、こっちです」
「あー! 今笑ったなあ!」
大音声の声が、山一帯に響き渡った。
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