第7話
「……い、おい! 大丈夫か!」
目が覚めた。だが私は、天国でも地獄でも、雪の上でもなく、1人の男に抱きかかえられていた。
周りにはもう1人、細身の男と、長身の女がいた。
「あ、りがとうございます」
「良かったぁ! 目が覚めたぞ!」
その男は大声で2人に報告する。
「良かったですね! 隊長!」
と、細身の男。
「それぐらい見てわかります。あんまり大きな声で怒鳴ると、この子に迷惑ですよ」
と女。
「怒鳴ってるわけじゃないんだけどなあ……」
と、男は悲しそうに呟く。
ああ、この人達は仲がいいんだなと気づいた。私と違って。たった独り、無慈悲にも助かってしまったのに、喜んだ馬鹿野郎とは違って。
いっその事、ここに置いて行ってもらおうかとも思った。
しかし、男はそれを察したのか、私を地面に下ろそうとはしなかった。それどころか、私を抱きかかえたまま、歩きだした。
「持って行っていいんですか」
と、そばにいる女が言う。
そうだ。こんな錘は置いて行った方がいい。
「いや、こいつは何か知っているかと思ってな。だってこんな所に普通1人で来るか?」
「それもそうですねえ」
と今度は細身の男が相槌を打つ。
「あの、今から僕は何を……」
「坊主、お前、」
信じられない言葉を男が言った。
「春は知っているか?」
全身が震え上がった。
「でもどうして……! こっちに春は無いはず……」
男はニヤリと笑った。
「そこまで知ってるのか。いいねえ、坊主。話が早くて済む」
何を言っているのかわからなかった。私は、ブックに嘘をつかれたはず。
……ブックが間違っていなかったのか? いや、きっとそうなのだろう。
私は、騙されたと思っていただけなのだろう。これを認めるのは、自分自身の愚かさを認めるということになるが、認めざるを得なかった。
そして、そう思う自分が嫌で仕方がなかった。
「まあ、単刀直入に言うとだな」
男はまた、前を向いて話し出した。
「春の国は確かに、反対側の山道にあるんだが、春は、……いや違うな。春の国の王はこの近くに眠っている」
不意にこちらを向かれたので、私は小さく頷いた。
「そして、俺たち3人は、春の王へ懺悔しに行く、いわば……」
同時に男は立ち止まった。ためが長い。
「我々は懺悔団というわけだな」
ガハハっと楽しそうに笑い出す。何がおかしいのか、その場にいた男以外はわからなかった。
「いい名だろう?」
「いや、ダサいね」
とその場の3人が口を揃えてそう言った。
「そんなに責めなくてもいいじゃん……」
男は静かに呟いた。
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