第3話 学校の外へ
「で、それを信じろと?」
ここは食堂、授業の
「そう! 聖剣が私に語りかけてきたんだわ」
「夢じゃないの? 信じられないなー」
リーナが半眼で疑ってくる。
「そんなことないわ! 高貴なエルフである私の力を見込んで聖剣も語りかけて……」
「口元にトマトソースがついてるよ」
リーナがナプキンでコレットの口元を
「ありがとう……って、このくらい自分でできる。それよりリーナ、あなたどうして4人
「気にしない気にしない」
リーナが自分のスパゲッティをすすった。
それからコレットは授業中も食事中も掃除中も寝ても覚めても聖剣と冒険のことで頭がいっぱいで、常にぼーっとしていた。
リーナいわく、コレットは冒険に恋しているとのことだった。
リーナが授業中に
「そうだわ。何も待つことなんてない。今すぐ外に出ればいいのよ」続けてコレットは言う。
「結局みんな先生が言っていることを、その通りだと思って受け入れているけどさ、それなら、私たち、先生たちが思っている通りの人間にしかなれないよ。そんなの嫌だよ」
リーナは一人熱弁するコレットをじっと見つめていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夜遅くコレットは、聖剣を
もうすぐ冬である。
寮を取り囲む木々は葉を落とし始めていた。
この森を抜ければ、正門を通らずに街に行ける。
だが誰かが勝手に街へ出歩かないように鳥や猫、その他の動物たちからなる先生
「よし、行こう」
勇気を出すため、声に出して言うと光る聖剣をマントの内に隠した。
ここから先はどんな危険が待ち受けているかわからない。使い魔に見つかるとどうなるのか、使い魔に見つかるということが、先生に見つかるということと同義語なら、そんなに怖くはない。しかし、生徒達の間でまことしやかに
コレットは恐怖を振り払うように首をふると、勇気を出して落ち葉を踏み分け歩き出す。
「コレット!」
自分の名前が突如
名前が叫ばれた後は、森の中に音が吸収されるかのように何の音も無くなった。
最初こそ、驚いたもののこの声には聞き覚えがあった。そう、いつも自分と一緒にいる。
「リーナ」
振り返ると、パジャマ姿でぬいぐるみのような
息を切らして、コレットの元にたどり着いたリーナは胸に手を当てて息を整えると、コレットに言う。
「一人で行っちゃ嫌。何で私を
リーナがこんなに感情的に話すのをコレットは始めて見た。リーナは言葉を続ける。
「口では出ていくなんて言ってても本当にやるとは思わなかった。だって今までそうだったもの。ねえ、私も一緒に連れってって」
コレットはじっとリーナの目を見つめる。リーナの目は涙で
でも、そこまで言うのなら。
「わかったわ。付いてきなさい」
リーナの表情がぱっと明るくなる。
「じゃあ街へ向かって出発!」
コレットは先ほどまでの不安が不思議と消えていることに気が付く。リーナが一緒にいてくれることが、これほどまでに心強いとは思わなかった。自分では自覚していなかったのかもしれないが、リーナはコレットにとって心の支えになっていたのかもしれない。
森の中を歩いていると、時折がさこそと物音がする。
その度にリーナは手に持った抱き枕ごとコレットに抱き着くのだ。きっと、例の噂を信じているのだろう。そのせいでコレットは歩きにくくて苦労したが、リーナに抱き着かれると同時に不安感が無くなり、勇気が出てくる気がした。
きっと一人じゃないことが感じられてとても
基本的に人と
なんとか何事もなく街に着いた。しかし、森を抜けるのに時間がかかり、既に深夜になっていた。
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