trois
ぽかぽかと温かい日差しの中を、二人の娘が歩く。一人は楽しそうに花を摘んでいるが、もう一人の顔は相変わらず晴れない。
「見てみて! このお花、とっても素敵ね!」
「そうね、お姉さん……」
無邪気な姉を見るたびに、カトリーヌの心はギュッと縮こまる。夢にしてはいやに鮮明な光景が、まさに目の前に広がっているのだ。死んだ姉・ジャンヌが、生きる花々を束ねる姿が。
「カトリーヌ、ちょっと動かないでね。あなたの金色の髪に、赤い花を飾ってあげるわ」
「あ、うん……」
ジャンヌは非常に器用な手つきで、カトリーヌの長い金髪を編み込み、その間に赤い花々を挿していく。その様子もどこか懐かしく、そしてどこか不気味だった。
「さぁ、できたわ! 私の可愛いカトリーヌ!」
達成感に満ち溢れた表情で、ニコニコと笑う姉。あまりのまぶしさに、カトリーヌは咄嗟に顔を反らしてしまった。
「……やっぱり、朝から様子がおかしいわ。一体どうしたの、カトリーヌ?」
隣に座るように促しながら、彼女は心配そうに首を傾ける。柔らかい草花が、その言葉に賛同するように小さく揺れた。
「兄さんたちに早く帰ってくるように言われたから、あまり時間は取れないけれど……。少しでも話してくれたら、きっと気分も落ち着くわ。だから、ね?」
優しい弧を描く青い瞳は、しかしどこか諭すようにこちらを見つめてくる。カトリーヌは思わずサッと目を伏せ、小さく首を横に振った。
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