第16話 準備といこうか
「アッハッハッアンタッ、面白いなぁ…俺を!街の!シンボルに!アッハッハッハッハッ」
大袈裟に笑った、面白いなんて微塵も思っていない。
「そこまで面白い話ではない。」
「よく分かってんじゃねぇか、クソジジイ。ぜんっぜん笑えねぇよ。あれだろ?市長になれってことだろ?」
「違う、そういう意味じゃない。シンボルとはそのままの意味だ。」
シンボルっていえば象徴や〜の顔とかそういう意味だから市長ってイメージが強いが違うのだろうか。
「すまん、よくわかんね。」
「アストラルシティのヒーローになってくれって意味だ。」
もっと意味がわかんなくなってきた。
ここでグダグダ言ってもしょうがない、話を聞こう。
「ヒーローって…何すんだ?」
ヒーローというもの自体が分からない訳ではない。あれだろ?マント羽織って悪人懲らしめたりする…あれに俺がなるのか?想像がつかない。
「街の支えになってくれればいい。街の人に安心を与え、心の拠り所になる。」
「俺は…それになれるのか?」
「余程の悪行をしなければ自然となるものさ。今回の作戦が成功すればアストラルシティの独立にもなる。その独立に大きな貢献をし戦った者をヒーローと呼ばずなんと呼ぶ。」
かっこいいこと言ってるが…あれ?これってもしかして…
「あ?じゃあ俺は作戦成功したら何もしなくていいってこと?」
「非行に走らなければ特に縛りはない。」
「じゃあ条件飲むわ」
あっさり決断した俺にイリスは
「そんな簡単にいいんですか2人とも…」
と呆れた。
覚悟を決め、この肉体とおさらばを決めたらいよいよ本番だ。
「よーし、じゃあ…最初は何からやるんだ?」
「まずは知能テストからだ、そこから人体データと組み合わせてヒューマノイドロボットを作っていく。」
「人体データってなに測るんだ。身長とか体重とかか?」
「そういうのは全部測ってある、テストだけで十分だ。ほれ、やるぞ。」
この老人は俺の過去といいこのデータといいどっから仕入れてんだ、マジで。
「今サラッと怖いこと言ったけどまあいいだろう。よーし、テストするぞー」
「「おー!」」
イリスと俺は手を挙げて掛け声を出した。
知能テスト
「よし、かかって来い」
両手を広げ威嚇のポーズをとる。
そんな姿に何も触れず、ヴァレンは説明をし始めた。
「知能テストの内容だが10個の質問の後、5段階のルービックキューブ、知恵の輪に挑戦してもらう。」
「ルービックキューブっていうんですねこれ…あれ?これは何です?」
イリスは目の前のメガネを指さした。しかし、普通のメガネとは違い横になんやら細かな機会が取り付けられている。
「それは目の周辺に装着して目の動きを記録する装置だ。これで事細かなデータをとる。準備は出来たか?それでは、始めるぞ。」
質問第1
「無人島に持っていくなら何?」
「ナイフ。木やツタを切ることができるし皮を剥いだりすることも出来るから。」
「火とかは必要ないんすか?」
「木や石で火起こしできるからな。あとは特に要らん。」
「器用っすね。」
質問第2
「行動派?」
「そうだな、嘘はつけないし。」
「一緒にいて考えるタイプとは思いませんでしたね。」
「一応研究者なんだけどな。」
「家業みたいなものじゃないんですか?」
「世襲制じゃねぇよ。」
質問第3、4
「自分のことを強かったり、運動神経いいと思ったりする。」
「ない。どっちもないな。平均レベルだと思うわ。」
「意外っすね。ユイドさんの時ボッコボコにしてたのに、謙虚ですね。」
「あれは不意打ちだからああなっただけで素の殴り合いだったら多分負けてたぜ?」
「知恵も喧嘩のうちですよ。」
「さっきまで考えるタイプじゃないとか言ってたくせによ。」
質問第5
「あなたがどうしても殺したい人間がいるとする。どうする?」
「手段ってことか…政治家とか権利を持ち始めてから殺って…揉み消すかな。」
「今からヒーローになる人が言うセリフでは無いですよね。」
「殺したいと思ったことないからなぁ…」
「あれ?裏切られてここまで来てるのにもう許してるってことですか?」
「あー、恨んでるが殺したいとは思わないな。死ねとは思ってるけどね。」
質問第6、7、8、9
「筆記問題です、答えなさい。」
「いきなりテストらしいテスト来たな…」
「あーこれは俺が入らない方がいいっすかね?」
「大丈夫だ、アンタにゃ絶対解けない問題だ。」
「ひっど!!」
タスクメロンの法則だな…どれも大学教授ですら間違うほどの難問だ。
〜数十分後〜
「これで合ってると…思うわ」
「よく分かりましたね、数字の羅列で飽きちゃいましたよ。」
「俺も飽きた、ラスト行こうぜ。」
質問10
「もし、自分が急に身に余るような力を手にしたらどうする?」
「力か…力っていうのは目に見えにくいけど色んなところにあってみんな持ってる。言葉にだって力があるし行動に力を貰ったりすることもある。だけどそれはいい事ばかりではない、悪意も力となって人を攻撃することがあるんだ。だから人より多くの力を授かったなら人前に出て正しい力の使い方を示さなければいけないと思う。」
「ヒ、ヒーローじゃないすか、まんま。」
「思うってだけだ、そんな上手くいかねぇよ。心意気8割、行動2割だ。」
最後の質問も終わり、パズルの時間だ。
「まずは5個のルービックキューブが並べられているから好きな順に解け、無理だったらギブアップで構わない。」
ヴァレンは2×2〜6×6のルービックキューブを机の上に置いた後、小声で「30分くらいか」と呟いた。
残念だったな、あいにくコレは俺の得意分野だ。
「随分舐められたもんだな、よーしやるぞ!」
6×6から順にやっていこうか。
ガチャガチャガチャガチャ ガチャ ガチャガチャ
ポイッ
「えぇ!?」
ガチャガチャガチャガチャ ガチャガチャガチャ ガチャ ガチャガチャ
ポイッ
「えええ!?」
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
ポイッ
「うっそでしょ!?」
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
ポイッ
「ちょっちょっとぉ!」
ガチャガチャガチャガチャ アッ!ズレチャッタ ガチャガチャガチャ
ポイッ
「…」
「あー楽しかった」
「ちょっと待てええええい!」
「なんだよ…」
コイツはさっきからやってる途中に奇声あげて妨害してきやがって…どうせルービックキューブが珍しいだけだろ…
「な、なんなんすかその手の動きキモッ!キモかったっすよ!」
酷い言い方をする奴だ。どうやらルービックキューブの面が瞬く間に揃っていくのは不気味に感じたらしい。
「パターンとやり方を覚えれば子供でもできる。」
「へ、へぇ…」
完全にビビってるな、ちょっかいかけてみるか。
イリスの方に手を伸ばしてみる。
「ヒイィッ!」
思った通りルービックキューブのようにバラされると思い尻もちをついた。
面白いな、コイツ。
「さて最後の知恵の輪だ。これをどう解く?」
「分かった、くれ。」
知恵の輪というテストが出る瞬間から解決策は考えていた。
「え!?まだ見てないのにもう分かったんすか?」
「まぁな、知恵の輪は昔から嫌いだった。」
「なるほど、だから必死にやり方を覚えたんですね!」
「そ、何度もイライラして生み出した解決策がこう!」
知恵の輪を両端に思いっきり引っ張って真ん中の輪を壊した。
バッチィィィィィィィィィン!カランカラン!
「…へ?」
「イライラする前にぶっ壊して解く!オラ、これが力持ったもの特権だ。」
「少し前のヒーロー持論と掛け離れてる気がしますがいいんですか?ヴァレンさんは。」
「これも結果のひとつに過ぎない。データにはちゃんと残る。」
「ってことは?」
「もう終わりだ。これらのデータで肉体を作っていく。」
「その間になにかすることあるか?」
「もちろんある。まず最初に今から作るヒューマノイドロボットは様々なモードで戦う。そのモードの試運転をしてほしい。」
「本当にザ・ロボットってかんじだな。いいぜ、それだけか?」
「もう1つある。君は街のヒーローになるんだ、ヒーローらしく街の治安を守ってくれ。」
「すでに終わってんだろ、治安。」
「それは奪還したら政策でどうにかなる問題だ。私が言いたいのは犯罪を止めたり、困っている人を助けたりしてくれってことだ。」
「えーそれって雑用係じゃん。」
「物は言いようだ、それにどうしても直さなきゃならない治安であれば武力行使も許そう。その時は私に連絡をくれ。これが連絡用のインカムだ。」
ヴァレンは2つのインカムをそれぞれの手に置く。
「それじゃあ、ヒーロー体験頑張ってくれたまえ。」
〜ダストシティ外れの工場跡地〜
二人の男が椅子に向き合って座っている。
ソファーに座っている男は白いスーツを着た好青年、壊れかけの椅子に座っている男は茶色のコートを着ている目つきの悪い男だ。
白スーツの好青年が話を切り出す。
「いつもいつも悪いね、付き合ってもらっちゃって。」
「…別にいいんだ、対価を貰ってるんだからな。それで、今回はなんの用なんだ?」
「さすが、話が早いね。とある人間を探してるんだ。こんな顔で名前が『プリュマー・ノルン』って言う。」
白スーツの青年が取りだした写真にはしっかりとプリュマーの顔が写っている。
「へぇ、そいつは犯罪者なのか?」
「あぁ、国家反逆罪の大罪人さ。」
「なら尚更武器が足りねぇなぁ。」
「そういうと思ってとっておきの武器を用意した。それと、もう私はしばらく君と会えない事になる。」
白スーツの青年はジュラルミンケースを目つきの悪い男に渡した。
「本業のほうか?」
目つきの悪い男は中を確認することなくジュラルミンケースを回収し足元に置く。
「そうだ、世間の目も当たる職業に着いてしまってね…色々大変なんだ」
「俺には関係ない話だな。」
「そうかもしれないね。では、フュゼ君。頑張ってくれたまえ、くれぐれも変な気は起こさないように。」
白スーツの青年はフュゼと呼ばれた男の肩を叩いて去っていった。
「これでピースはそろい、邪魔者もいなくなった。もう会うことはないだろう、」
「ムルトル・ゲルマヌスよ。」
フュゼは完全に立ち去り1人静かになった跡地でポツリそう呟いた
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