第15話 父の作った酷すぎるシステム

クリセンサムのAIシステム。


過去使われていたほぼ完璧なAIシステムに近づけるのではなく、今使われている擬似性格を取り入れたAIシステムをより使いやすくするために開発された。

擬似性格はあくまで擬似、単純な怒りや悲しみなどのデカい柱にすぎない。

そこでクリセンサムは人のように細かな性格を組み込めないか研究をし、ひたすら実験を繰り返した。

結果は全て失敗。

どうしても細かな性格一つ一つから行動に移すのには処理が追いつかず、手順や性格を減らそうとすると単調になってくる。

予想はしていたが過去の天才達はクリセンサムと同じような実験をし、窮余の一策として単純な性格を組み込ませたのであった。

しかし、こちらもその天才に引けを取らない。

稀代の変人、クリセンサム・ロクス。

後に政府から追われ全てを失うまで、ほとんどの研究者が「歴史に名を刻まれるだろう」と言うほどの天才だった。

行き詰まりこれ以上の案は自身では出せない事を真摯に受け止め、クリセンサムはAIに何かをするという考えを捨てた。

「AIの性格を人に似せるのではなく人そのものにする」

彼が最終的に生み出した答えである。

一見さらに難しくしただけなのでは?と思われそうだが、意外にもその方法は難しくはなかった。

とはいえ、それはクリセンサムが改良に改良を加えやりやすくしたから難しくないだけであって、発見から改良までの難易度は擬似性格の実験の倍以上とも言える。

そんなクリセンサムのAIシステムを見てみよう。

まず、このAIシステムと人間一人が必要になる。AIシステムには何もしていない従来のものを、人間も特別必要な条件はない。

次に、このAIシステムに用意した人間の記憶をデータ化し一つ一つ打ち込んでいく。

どの記憶も重要であり、人によって不必要なものが疎らなため全部打ち込む必要があり、これが1番キツい作業であった。

後にこの作業を簡略化することに成功するのだがそれは対象の人間を殺し、脳を取り出して特殊な装置で記憶をコピーするという悪魔が考えたような方法だった。

そんな話は置いといて作業の続きといこう。

次に、簡単な知能テストをする。あくまで簡単、どこら辺の知能なのか知り乖離しすぎないほどの性能に設定する。多少のズレなら特に問題なく動かせるが、離れすぎると正常に機能しなくなるので知能テストは簡単と言えどたくさんのジャンルで構成される。

これでAIの受け皿が完成する。

そこに対象となった人間が特殊な電波と振動を繰り返し受け皿に魂を挿入する。

ちなみに脳を取り出す悪魔的な方法では特殊な装置の中にこの動作が含まれているので問題はない。

以上がクリセンサムのAIシステムの作り方だ。

一応無傷のまま出来なくはないが、正直生まれてからその日までの記憶を全部覚えている人間などほとんどいないので、死んで脳みそ取り出すのが手っ取り早い。

ちなみに簡易的な記憶と簡単なテストで作られたAIをクリセンサムの助手、ジャロジー・メルガルにリンクさせ失敗をしたものの、彼は「光が見え、なにかに触れることが出来た」と語っている。

最後にこのシステムの成功率はおそらく100に近いが失敗した時はどうなるか分からないのが1番厄介な所である。




「最後の最後で色々掻っ攫ってったな。」


「失敗したら分からないって相当嫌な文ですね…」


「で、だ。この中で誰が犠牲になるかまだ決まっていない。私の推薦ではプリュマー君だが2人の意見を聞いていないからね。」

ユイドという案もあったが俺ほど理解していないのと、俺が干したということは弱いという理由で却下された。

気絶させなきゃ良かったな。


「えー…自分の知能じゃ動かせる自信が無いっすよ…自分もプリュマーさんに1票ですかねぇ…」

イリスはちゃんと考えて俺に投票した。

そこは「俺やってみたいっす」って言うキャラじゃん、アンタは。


「なんか消極的に俺しかいないんだよなぁ…!でも、死ぬって…クワァァァ…!」


さすがに悩む。いきなり拳銃頭につけられてブッパなされても「それが人生」で割り切れるが、拳銃を出されて「死んでみろ」なんて言われれば振り切れない。


「なんか…メリットとかないのか?」


「メリット?」


「AIになった時のメリットだよ。」


「そうだな…多分、死なないことだろうな。」


「は!?」

なんだそれ、そんなチートみたいな事ができるのか?

「AIなんだ、完全に作られた状態をコピーしバックアップをしておけば無限残機になるだろう。」


AIって言っても自身の記憶は存在して大して変化はないんだろ?そしたら…

「夢あるな。よし!決めた!」


「決心したか。」


「あぁ、その代わり条件がある。飲まねぇとは言わせねぇぞ。」

人の人生に一旦幕を下ろさせるんだ、願いの一つや二つ叶える権利はある。



「条件次第だな。出過ぎた欲は破滅をもたらす。」


「なぁに、簡単な事だ。ミランシウムの管理を俺にさせろ、お前らが持ってると変な事に使いそうだ。」


「それだけか?」


「あぁ、それが一番だ。」


「…なら、私からお願いがある。」


「お願い?」


はぁ〜?コイツどう考えても不条理な交換に追加ベットしてきやがった、どんだけ図々しいんだよ。

不死身+管理=死+殺す側の条件

じゃないからな、

不死身+管理+死ぬ側の条件=死

だぞ。

まあでも向こうもそんな事分かってるだろうからそこまで酷い条件は出さないだろうが…


「この作戦が成功したあと、ミランシウムの管理の権限は渡す。そのついででいいんだ、アストラルシティのシンボルになってくれないか?」

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