第13話 作戦会議
「えぇー!?じゃあこのミランシウムを調べてたら大罪になるんですか!?」
「そうだぞ、だからここまで追われてきたんだ。
俺はヴァレンさんに聞きたいんだが…深い意味じゃないぞ、深い意味はないんだけど…なんで生きてんの?」
「死ねと?」
「あぁん、違う。なんで処刑命令が出てんのに生きてんのかなって。」
「王家側がそうさせたんだ。政治的な権威を無くしても地位はあるため、今も密輸ルートを辿り度々贈り物などを流してくれている。」
話によると企業側に数人のスパイがいてバレないように国境に置いていくらしい。サマールウィスキーもスーツも機械も王家側の贈り物だった。
「やりたい放題だな。」
「ちなみにこれから話す作戦やミランシウムについても王家側の了承を得ている。」
ヴァレンは机から謎のリモコンと手紙を取り出した。
手紙の方を渡してきたので見てみると、そこには王家の紋章と国王直筆で作戦を許可するという文章が書かれてあった。
「マジかよ!?本当に王家側って平和的な考え持ってんのか?なんかアウトロー集団みたいになってないか?」
「今のルヴトーを野放しにしたくないからな。作戦にも協力的だ。」
「ほーん、じゃあその作戦ってのを聞こうじゃないの。」
〜アストラルシティ奪還作戦〜
「作戦は簡単、ルヴトーの国会を占領し、国王のスピーチを死守する。」
え…終わり?
「はい!」「はい!」
分からないことだらけなので、イリスと俺は手を挙げる。
「イリス君から。」
「なんでスピーチを守らなきゃならないんですか?」
「確かに、ただのスピーチなら守る価値のないものだ。しかし、一国の王が国の政治方針を決める場所でスピーチをするということは…」
「その国の住人は耳を傾けなければならない。
どうだ、大切さは分かったか?」
「はい、よく分かりました…じゃあ、それを占領したり守ったりするって事は、企業側の人間はそれを快く思ってないって事ですか?」
「だんだん分かってきたね、その通りだよ。今まで裏で虐げてきた王家側が、いきなり国会に突入してスピーチするなんて企業側からすれば嫌な予感しかしないだろ。」
「これが今回の作戦の意味だ。次はプリュマー君、君の質問を聞こう。」
「国会占領する前に軍事基地とか潰した方がいいんじゃないのか?潰せる戦力があるかどうかは別にして足止めをした方がいい気がする。」
「時間があるならそうしたかった。しかしスピード勝負であり、相手の主戦力は企業側のトップを護衛しているため難しい。」
「主戦力ねぇ…本当に勝てんのか?」
相手は軍事企業、戦いのプロだ。その主戦力だから相当のものだと予想できる。
「問題ない、相手の主戦力は1人。あとは有象無象だ。」
そいつバケモンだろ。国のトップとかお偉いさんにはボディガードは最低3人くらいついてるもんだがそれを1人でこなすのはさすがにおかしい。
そいつが強すぎて命の危険が感じられないんだろうな、ミランシウムでどうこうできる問題なのだろうか。
〜作戦詳細〜
「では作戦の詳細に入ろうか。」
「おーついに!何をするんでしょうね?」
パチパチパチ!
イリスは嬉しくもない拍手をする。
この状況楽しんでんのコイツだけだろ
「ミランシウムがまだ出てきてないって事は、ここで使うんじゃねぇのか。ドデカいミサイルとか爆弾を投下するとかよ。」
でもそんな事すればミランシウムは減り万が一他の国にバレたら終わるから全力で止めるけどな。
「そんなことは流石に王家側が許可をしない。しかしいい線ついているな。今の私達に足りないものは戦力だ。」
ヴァレンはそう言いながら手元にあるリモコンで何かの電源をつけた。
チーチチ パッ ギュウィーン!
大量に保管されているミランシウムの反対側、無造作に置かれた色々な機械が一斉に起動する。
「ここにある機械はミランシウムの解析や特殊加工するためだけに特注し作られた代物だ、全部な。」
「すげぇ!何が何だか分からないけどすげぇ!」
イリスは子供のように目を輝かせている。どんな年になっても機械というものに憧れは持つものだな。
俺も少しワクワクしている。
「これは鉱石からミランシウムを取り出す装置、耐熱性能が尋常じゃないから特殊な加熱法でゆっくりと溶かしていく。
これはミランシウム金属をカットする装置、細かい作業の時にしか使わないくせに一々動かす時にパワーがいる。
これはー」
一通りの説明が終わった。
「じゃあコイツらでどんな戦力を作ろうとしてるのか教えてもらおうか。」
「ヒューマノイドロボットだ。」
「そうきたか…」
ヒューマノイドロボット。早すぎた遺物と呼ばれている最終産業革命の1番の加害者であり被害者だ。
もっともヒューマノイドロボット自体に害はないがこれを動かすAIに問題があった。
当時のAIっていうのはな、
より速く認識し、より深く考え、より賢い選択をし、それを自らの意思で行動する。
こういうのが求められていた。
これをどんどん凄くしよう、凄くしようとするうちに人間が管理できる範囲を超えちまったんだ。
逆に下らない争いをする人間を管理しようと動き始めたAIをどうにかして止めようと当時の天才達は色々な対応をした。
結果として、AIに性格を与えることに成功したんだ。
性格っていうのは意識や感情の根元にある部分で、性格次第では辿り着かない考えや感情が存在してくる。
言ってしまえば、進化に見せかけた劣化だな。
これからの人類の進化はAIと手を取り合わなければならないって言われてただけあって、この決断は進化のピリオドって言われてる。
そんな、性格を持たされたAIに従来のほぼ完璧に近いヒューマノイドロボットを扱うことはできず、一つ一つの作業をするロボットに切り替わっていった。
そんな曰く付きの代物をどんな用途で使おうとしているのか知らないが、動かすにはそれなりのAIがいる。
「無意識に周りに多大な被害を及ぼす兵器ではなく、人の意思で動きかつ被害を抑える兵器ではない何かを作りたかった。」
「それでロボットを作ろうと思ったのか。いい話と思いたいがそれを作るのにどれくらいのミランシウムが必要になってくる?沢山作るんだろ?」
「重要な部分以外は合金にするつもりだ、それに一体しか作らない。」
「どんなバケモノが生まれるんだか…」
「クリサンセムというAIシステムを使うんだ。」
「クリセンサム…AIという面では聞いたことはないんだけどさ…」
嫌な予感がする。よく知っているようで全然知らない名前…もし、俺の予想が当たっているならなぜこんな所で?
「気づいたか、このAIの仕組みを作ったのは君の父親『クリセンサム・ロクス』。君の父親だ。」
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