第12話 存在しない金属、ミランシウム
「ミランシウムのことについて語ろうじゃないか。」
「語ろうって言ったって何を語るんだ?さっきの発言といい危険性とかをよく理解してねぇんじゃねぇのかなって思ったんだが…」
「そうだな、私達はミランシウムの事を調べているとはいえ君達のような専門的な知識には勝てまい。しかし、かつてミランシウムを取り扱っていた者として、新たな使い道がないかと研究した者として…違う見方での意見ができるのではないかと思っただけだ。」
「過去の過ちを忘れた訳じゃないんだな?」
「忘れたら研究などしないさ。じゃあまずは特徴から話そうか。」
〜ミランシウムの特徴〜
「なんといってもとんでもない強度なのにも関わらず軽いところだな。」
「ああ、過去に私達はそこに目をつけてアルミ合金の代わりとなる物質として宇宙船の1部に使用した。」
「はぇー、じゃあめちゃくちゃ便利な金属って解釈でいいんですか?」
「うーん…一つだけ当時から問題はあったな」
「それは一体…?」
「加工がしにくいんだ。熱帯性も凄くてね、1度に加工できるのにも限度があった。」
加工しにくいというデメリットがあっても、ミランシウムの強度や軽さはそのデメリットに勝る。
しかし、
「それよりも危険な部分に気づかなかった…」
「そうだな…一番重要な部分だ、」
〜ミランシウムの危険性〜
「危険性とかあるんですね、万能金属だと思ったのに。」
「金属本来の性質としては万能そのものだった。しかし、この金属の危険なところは性質ではなく、希少性だった。そうだよな?」
「あぁ、まずはミランシウムのが最初に見つかった時の話をしよう。」
「約200年ほど前、宇宙開発が1番盛り上がっていた時期だ。この土地でとある大きな岩が見つかった。」
ヴァレンは空中タッチパネルを起動しその当時の写真を漁り始めた。
「岩?」
「ただの岩じゃない。薄暗いオレンジ色の…横にある石を数段階暗くしたような、そんな岩だったと聞いたな。」
「え?それって…」
「勘がいいな、イリス君。その通り、それはミランシウムの鉱石だったんだ。あ、あった。これだよこれ。」
空中タッチパネルにその岩の写真が映し出される。
確かに色はオレンジがかっているが…それよりもその大きさの方が気になるな。
「これ、横に写ってるの人間だよな…デカくね?」
「あ、ホントだ。デッカ!人3、4人分の高さはありますよ!」
「こんな大きいのに不思議だね、この鉱石から採れたミランシウムはこれくらいしか無かったのさ。 」
ヴァレンは腕を伸ばし肩幅くらいまで広げた。
人3人分の鉱石から腕に収まるくらいしか採れないなんて初めて知った。
「この鉱石以外にも少量だがここに保管されているようなミランシウムがちらほらと発見されるようになった。」
「私達は突如現れたこの金属の特徴を調べると、とても頑丈で軽く、耐熱性にも優れている理想の金属だということが分かったんだ。」
パネルを動かすとミランシウムの硬さや重さ、実験データなどの記録がズラーっと流れ始める。
すごいな…俺が研究していた時のデータよりも細かく、正確だ。
「そして、そこから長い年月をかけて加工技術も安定させた時、アストラルシティが消える少し前だ…とある問題が発覚した。おそらくプリュマー君が指摘している問題もここだろう。」
「ミランシウムの枯渇だな。」
「その通り、ある日突然ミランシウムはこの場所から採掘出来なくなった。いくら掘っても掘っても出てこないので私達は使用を一時中断したんだ。」
「聞きたいことがあるんだが、デカい鉱石が発見されてから200年も経っててよ、誰もその鉱石が採れる条件とか場所とか調べたりしなかったのか?」
研究していた時からずっと思ってた疑問…
明らかに調べてなかったから今このような状況が起きているわけで、もし調べてたとするならどこで間違っていたのかが気になる。
「したさ。私達は欲が深く、政府には内緒でそういったことを調べあげていた。詳しい条件は分からなかったが場所はどこにでもあると結論づけられ、それを信じた。」
「なんでそんな結論を出したんだ。」
「各地の土や岩などを調べたらな、微量ながらミランシウムが混じっていたんだ。しかも火山灰の層の近くで見つかったため、意外と早く結論は出た。」
「マグマ溜まりにミランシウムが存在し、噴火の時にその欠片が放出される…と」
なるほど、偶然に偶然が重なってそう判断したということか。
まあ、政府に隠れて早めの判断を下したのは100%コイツらが悪いが、この間違いは分からなくもない。
「しかし事実は違かった。政府がミランシウムの枯渇に気づいてちゃんとした調査を行った結果、ミランシウムが存在する場所はたった一つだけだと判明した。」
「「D層」」
「しかも取れるのはほんの少しだけ。凄いだろ?」
「はい!D層ってなんですか?取れる所が少ないっていうのは分かったんですけどなんでそれが問題なのかが分からないっす!」
何とか話しについていこうと真剣に聞いていたイリス。
確かにD層を知らなければさほど大きな問題には聞こえないかもしれないな。
「俺が説明する。まずD層ってのは分かりやすく言うと今いるこの惑星を掘り進んで行ったら辿り着く地点だ。」
「どれくらい掘り進むんですか?」
「良い質問だな。惑星によって違うが大体中心の半分くらいだな。では問題です!惑星に存在するのは一つだけ、大体D層に存在する、しかもランダムな場所にある鉱石を見つけたい時どうすればいいでしょう!」
「惑星の真ん中でしょ…しかもランダムでしょ?全部掘ってみる…とか?」
「正解、そうするしかないんだ。でも、そんなことをしたら地面がユルユルになって人なんて住めなくなっちまう。」
「じゃあそれが理由で隠蔽したと…」
「大正解!」、そう言おうとするとヴァレンはそれよりも早く
「それは違う。それが原因ならごめんなさい済んでいたんだ。」
と首を横に振りながら言った。
初耳だ。そんな話1度も調べても出てこなかったぞ。
「え!?また違う理由なんですか?」
「内輪の話さ。この頃のルヴトーにおける企業側の人間は着々と武力を蓄えようとしている真っ只中だった。そんな中、武器を作るのに最適な素材の噂を耳にした彼らは私達に接触しようとしたんだ。」
「しかし、彼らが接触をしようという情報をいち早く入手し対策した人達がいた、王家側の人間だ。王家側は企業側と度々政策方針で揉めていたから止めたかったんだろう。調査結果を見たとき大激怒してたよ。」
やはり王家側か…コイツらはミランシウムの隠蔽の為なら「なんでも」するからなぁ…
「どうしてです?枯渇するなら企業側も痛手のような気がするのですが…」
「枯渇して諦めがつくような奴らじゃないのさ。きっと企業側は、ミランシウムの摂り方を知れば戦争を行ってまでしても摂りに行くだろう。戦争に負けた惑星は地面を掘り返され…二度とその地に住めなくなる。」
「酷い…」
「酷いのは私達だ。結局のところ、こうなってしまったのは私達がミランシウムを独占しようとしたからだからな。」
「そうだよな。話聞いてて、なに被害者ぶってんだよって思ったわ。そんで?どうしてそっからダストシティが生まれるようになったんだ?お前らが首切られて終わりで良かったんじゃねぇの?」
思っていたことを吐き出した。ちゃんと元をたどればコイツらが悪いわけで、全責任を取り正しい罰を受けたならこんな未来にならなかったのではないだろうか。
しかし、イリスは俺がいきなりこんな事を言ったのに対して
「えっ!ちょちょちょちょ!な、何言ってんすか!?そういうのは思っても言わないほうがいいっすよ!」
と人差し指を顔の前に当てシーッというポーズを取った。
「うるせぇ、うるせえ。俺は間接的にコイツらのせいでここに流れ着いたんだ。言いたいことは言わせろ。」
「えぇ…」
「イリス君良いんだ。それで…ダストシティがなぜ生まれたかだったね。それは王家側がミランシウムの採掘法を隠し、限りあったミランシウムを私達が使ったと嘘の報告したからなんだ。
結果は私達の処刑と再発防止のためにアストラルシティを取り壊し、政治面では王家側の権力を無くし軍事企業へと発展した。」
企業側は、というよりこの国のヤツらは深く考えるってことが出来ないのかな?
「それがダストシティが誕生した歴史ですか…」
それで納得するのもどうかと思うが…
「憎くないのか?アンタがこんな生活を送っているのは目の前のこのジジイのせいなんだぜ?」
「別にヴァレンさんが直接やったことじゃないし、これから取り戻しに行くんでしょ?」
騙されやすい性格って域を超えてない?普通は「許せませんが、一生をかけて罪を償ってください。」くらいは言うだろ。俺だったら手ェ出てるぞ、手。
「おめでたい奴だ…さて、長くなったが一応ミランシウムの事を理解し、過去の過ちをちゃんと分析していることはわかった。」
「じゃ、本題の作戦会議と行こうじゃねぇか。」
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