第8話 嘘
「持ってきました、これが一体どうしたっていうんですか?」
イリスが取ってきたボトルを手に取る。
「ふーむふむ、これは間違いないな。なぁ、ユイドさんよぉ。これも、賭けで手に入れたのかい?」
「…あぁ、そうだ。賭けで勝って手に入れた物さ。」
「安かったんだろうなぁ。」
「いやぁこれだけは少し高かった気がするな。」
「少し…ねぇ。」
持っていた腕をきつく締め上げる。ゆっくりとではなく急な痛みを与え、後からじわじわと効かせるため雑にやった。
雑でも痛いんだな、これが。
「嘘はつかない方が身のためだ。これはサマールウィスキー、『外』でも手に入らない超レア物だ。」
サマールウィスキー。ルヴトーで数年に1度発売される数量限定の超高級ウィスキーだ。発売されると大々的なニュースになり、各地の富豪達が買い集める。
長い年月熟成させてあるため深い味わいがあり、発売価格はなんと20000エダ。その後の市場取引額は100000エダを超えることが普通にある。
つまりこんな所に置いてあるのが不自然なんだ、しかも何本も。
「う、嘘はついてない!ものすごく高かった!悪い、今思い出したよ!僕、物覚え悪いからさぁ!」
「こんな高級品忘れそうもないが、まぁいいだろ。これいくらぐらい賭けたんだ?ざっとでいい、それくらいなら流石に覚えてんだろ。」
「だ、だいぶ前に手に入れたから覚えてない…!た、たしか50000エダくらいかなぁ!」
「そうか…そんな大金つぎ込んであんなに沢山取れるもんなんだな。」
「…ニセモノだ。それはニセモノだから安かったのだ。」
次から次へとコイツは…
サマールウィスキーが高値で取引されるのにはもう1つ理由がある。それはウィスキーのボトルの形だ。
有名なデザイナーが手掛けたもので一つ一つに時間をかけて作られており、ボトルだけでも50000エダを越す時も普通にある。
一つ一つ丁寧に作られているだけありボトルを見ればその綺麗さの奥にある精密な作業が分かる、これは間違いなく本物である。
「じゃあニセモノなら仕方ない、贋作は消えてもらうのが世の定め。今からここで叩き割ってやる。」
「なっ…!やめろぉ!」
サマールウィスキーを高く振り上げる。
あー、飲みたかったなぁ。俺1回も飲んだことないんだよな。
「やめろ?ニセモノなんだろ?なら問題ないじゃねぇか、黙って見てろや。」
グッバイ、サマールウィスキー
机に叩きつけようと腕を下ろした次の瞬間
「分かった!話をする、答えられる範囲でならなんでも答える!」
第一関門突破 、これで『外』に出れる可能性がだいぶ上がった。
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