第5話 ファッションチェック
「ちょっっっっっと話を聞いていいかな。」
「なんでしょうか?」
「なんでファッションの話なんて持ち出してきたんだろうなーって。だってかけ離れてるじゃん、カジノのやり取りとさ。」
「え?」
「え?」
不思議な顔をされても困る。なんだ、カジノに関係あるのか?そもそもカジノに関係する服装ってなんだ?どんな服着てても別に違和感は無い気もするが…
「カジノに行くために服…必要?」
「必要ですよ!ユイドさんだってあんな凄いファッションしてるんですから」
「あれが!?あんなのファッションでも何でもねぇじゃねぇか!」
一昔前の借金取りみたいな見た目をしていたがイリスの目にはオシャレと認識されていたのだろうか。
急に色々不安になってきた。生まれ育った環境が違うとはいえここまで認識で差異が生まれると重要な時になにか弊害が起きる気がしてならない。
「とにかく、オシャレが必要なんです。どうかお願いします!」
そんなに深々と頭を下げられても困ってしまう。そもそも俺自身もそこまでファッションセンスが良いって訳でもないからな。研究所にいた時は白衣だったし、私服も特にこだわっていなかった。まあ、でも確実にイリスよりはセンスが良いと言えるが…
「必要って言ったって別に入るためにファッションチェックされる訳じゃないだろ?」
「いえ、入る前にボディチェックとかされます。前にユイドさんの跡をつけて行ったら門前払いされたことがありました。」
「ファッションセンスがないって門前払いされたのか?」
「こっちを見るや否やお前は立ち入ることは出来ないって…」
なんだそりゃ。イリスは別に『外』にいたら流石に少し変だがダストシティでは割と綺麗な方だと思っていたが違うのだろうか。
イリスを見ただけで貧乏人だと見抜いた観察眼の優れた人間か、それとも…
「そもそも本当にそこがカジノかすら怪しくなってきたぞ。」
「いやいや、カジノですよ。」
手を横に振りながら否定するイリス。
なんでそんな自信があるのか分からないが、少し問い詰める必要がありそうだ。
「なぜそう言いきれる?」
「最初はエリスさんに聞きました。そこから長い張り込みを続けて、続けて!ようやくどんなカジノなのかっていうのが分かったんです。」
過去の回想を語り出し始めるイリス。
どうやら相当長い時間調べたらしく一筋縄では行かなかったことを何度も何度も強調している。
「そうか、下調べがちゃんとできた上で行ったら門前払いされたと…最初にエリスさんに聞いたって言ってたがどんな返事をされたんだ?」
「どんなって…この酒どこで手に入れたんですかーって聞いたらカジノの安い景品だって事だけを教えてくれました。だけど、それ以上は何も教えてくれなくて…」
「そんな事だろうと思ったよ。で?カジノでは何を賭けるんだ?金か、物品か。それとも別の何かのか。」
「お金ですね。一応、今持っている全額はざっとこんな感じです。」
イリスはポケットから封筒を取りだし机の上に金を並べた。
ざっと2500エダ、大金だ。もちろんダストシティでの話だが、『外』でも財布の中には4分の1も入れないだろう。
冗談で言った億万長者が現実味を帯び始めた。
「な、そんな金、どこで手に入れたんだ?換金ってそんな貰えるのか?」
こんな大金、あんな巾着から生まれるんだったら俺もやろうかな。でもここまで歩くのもめんどくせぇな。
「いやいや、ずーっと換金してたからですよ。」
「へー、そういえばどうやってここまで辿り着いたんだ?最初から金属を集めてたわけじゃないんだろ?」
「んーっとだいぶ前にゴミ捨て場を漁ってたらですねー
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