第4話 外に出る方法

「なんで嘘ついたんですか?」


正面に座ったイリスが聞いてくる。


「嘘?嘘なんて生きてるうちには死ぬほどつくもんだ、どの事だかわかんねぇな。」


「『外』の人間の話ですよ。嘘をつく必要なんてあったんですか?別にバレても問題なさそうなのに。」


「あーその嘘か。それなら気付いてないかもしれないけど、あの場所で俺らは腹の探り合いをしてたんだよ。だから嘘ついた、以上。」


明らかにあのユイドっていう男はこっちの事を警戒していた。そもそも探り合いの勝負を仕掛けた場所があまりにも不利だった。知らない土地知らない場所、下手に口滑らせたら何が起きるか分からない。


もちろん、目の前にいる人間にも下手に口滑らせる真似はしない。


「そんで?そんなくだらねえ嘘の話なんでどうでもいいんだ。教えてくれよ、相談事を。」


ユイドの事も知りたかったが、自分が今1番知りたいのはそれだ。

一体この男は何を相談しに自分を誘ったのだろう。

カネか?ヤクか?それともなんか変な野望でも持ちかけんのだろうか。ここまで連れて来たんだよほど秘密にしたいものなのだろう。

これで恋バナとか持ちかけられたら逆に面白いけどな、多分その時は手が出るだろうが。


「そうっすね…どっちから話せばいいのか…」

相談事は2つあるらしく、イリスは顎に手をかけ悩んでいる。


「そうですね、じゃあまず1つ目から。『外』に行ける方法って知っていますか?」


「出る方法?…知らないな、てか無理だろ。」


無理というのは理由がある。『外』、つまりルヴトーはダストシティの連中のことは無かったことにしている、というか人と思っていない。


それともう1つ、ルヴトーはあまり知られていないが完全企業管理国家になり始めている。

それの何がいけないのかって?

軍事企業なんだ、どんな手段使って入国拒否をしてくるか分かったもんじゃねぇだろ。人として認識されてないんだ、躊躇なくやってくる。


俺は犯罪者ってこともあり、慎重に慎重を重ねてゴミに紛れてゴミ捨て場の高台から落ちてダストシティに入っていったから幸いなんともないが関所からでたら死んでいたからな。


「そういう質問をするんだ、何か当てがあるのか?」


「当てっていうか…その戻れるかもしれないなー

っていう方法があるんですよ。」


「言ってみろ」


「カジノって知ってます?」


しばらく沈黙が続いた。


何を言ってんだこの男は、カジノでこいつはギャンブルでもしたいのか?

そもそもカジノが何なのか知っているのだろうか、そっから疑問にも思ってくる。


「えーっと、カジノってどういう場所なのか分かって言ってるか?」


「もちろん!金品を賭けて勝負事をする場所ですよね?」


「お、分かってんのか。じゃあなんでカジノなんかに行きたがるんだ?金が欲しくなったとかか?言っとくがルヴトーは金なんかじゃ動きはしねぇぞ。」


企業が国を動かしてるようなもんだ、金なんて腐るほどある。


「違いますよ、金が目的でカジノに行くわけじゃありません。もっとその先に用があるんです。」


「先?カジノに先なんてあんのか?」


グラスの中の酒を飲み干しながらイリスの方を見た。

イリスは酔いが回ったのか少し上機嫌な感じで話をしている。


「なんとですねぇ、そのカジノに『外』へ行けるかもしれない手掛かりがあるんですよ!」


「手掛かり?」


「ええ、カジノには様々な景品があるんですけどね。その中にはなんと!なんとですよ!『外』の商品もあるそうなんですよ!」

そう言いながらイリスは立ち上がり腕を大きく広げた。

酒が入っているというのもあるのだろうが、裏がない素の自分をさらけ出している気がする。


「待て、そして落ち着け。まずこの酒だって『外』の物だ。カジノの景品と何が違うんだ。」


「ここにあるお酒はユイドさんが賭けで手に入れたものなんです。簡単な賭けで手に入る安いお酒だけど比べるものが無いから満足してます。」


「簡単な賭け…ねぇ。それで『外』の商品があるってことはそれを仕入れてる仕入先が存在する。だからそれを知って、あわよくば『外』に出れれば良いってことだろ。」


「凄いですね…そうです。それが目的なんですけど、手伝ってくれますかね?」


「まぁ俺は『外』に戻るつもりはないが、手伝いくらいなら出来る。」


「…!そうですか!じゃあもう1つの相談事なんですけど」

嬉しそうな顔をしてるイリスを見ると自然とこちらの口角も上がってくる。


「お、なんだ。」

酒を継ぎ足しながら話を聞いていると予想外な話がいきなり耳に飛んできた。


「『外』のファッションを教えてください!」

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