第3話 ようこそパスティーシュへ

「なぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁ、いい加減教えてくれよ。『パスティーシュ』って名前すら聞いたことないんだよ。なんかさ、ドヤ顔で『パスティーシュです。⤵︎ ︎』って言われても分からねーよぉー。」


行先も聞かされてない、いや行先の名前だけ聞かされた見知らぬ土地へかれこれ数時間歩かされている。

「教えてくれって言われても『パスティーシュ』はなんて説明すればいいか分からない場所なんですよ。外観は自分たちの住んでる街と変わらない廃墟街で、そこの一角に換金所があります。」

「なんで金属を欲しがってんだ?それになんでこんな一山超えた端っこに住んでる?そこん所は何か聞いていないのか。」

「…えぇ。聞いていませんね。」


分かりやすい嘘だな。どっちか、はたまた両方知ってるのかは分からないが俄然興味が湧いてきた。


「あ、見えてきましたよ。あれが」


「『パスティーシュ』か。」


「ちょっと自分が言いたかったセリフですよ、それ。」


「わりぃ。しっかし本当に何もなさそうだな…マジで何も無かったらキレていいよな?」


「…行きましょうか。」


〜パスティーシュ〜


外観から見た通りの廃墟街だ。だがあまりにも人が少ない、というかいないじゃないか。

ますます分かんなくなってきたな。


「こっちっす。ここが換金所ですね。」


「おい、冗談はよせ。何も無いじゃねぇか。」


見たまんまだ。骨組みで中が全部見えているので換金所は愚か人すらいない。

騙すためにここまで連れてきたとは思えないが少し期待してしまった自分を悔いている。


「行きましょう、話は中でゆっくりと。」


そう言い廃墟の中に入りしゃがみ込んだ。するとイリスはゆっくりと地面に飲み込まれてくように消えていった。


「え、おい!」

いきなりなんで消えたか分からず急いで駆け寄った。

するとそこには答えがあった。

床のタイルが剥がされてありそこから地下へと続く階段が出現したのである。


「面白くなってきたじゃねぇか。」


暗いのでゆっくり階段を降りていく。先に降りたとはいえもう見えなくなるもんなのか?

それにしてもくっらー


ゴン!


「痛ってぇ!」

何に当たった?壁、にしては重くないから…扉?

なら取っ手がどっかしらにあっ…た!


取っ手に手をかけゆっくりと扉を開けるとそこには目を疑う光景が拡がっていた。


「驚きました?ここが換金所です。」


「あー驚いた。だが驚きかたがアンタの予想する驚き方じゃないな。」


「ど、どういうことです?この薄暗い雰囲気、小洒落たテーブルカウンター!並んでいるお酒!立派な『換金所』じゃないですか!」


「…。世間的に…そっか世間を知らなかったな、俺ももう世間人じゃねぇが、これを向こうの世界じゃ『換金所』ではなく『BAR』っていうんだぜ。」


「婆!?」


あぁそうか、そうだな。BARの存在すら知らねぇのか。


「金払って酒飲む場所みてぇな所だ。あ、そうだ。ここを換金所って言ってるんだが、アンタは換金所はどういう場所なのか分かって言ってんのか。」


「あれ?金属を交換してくれたりするところがあるって言いませんでしたっけ?」


「そうなんだよなぁ〜。ちょっと疲れたから座ってるわ、好きに換金しててくれ。俺は見てる。」


カウンターの端に座り頬杖をついた。

BARとはいえこんな人気のないところに出来るものなのだろうか。

誰が、何のために?金属はどういう用途のために欲している、金はどこから仕入れているんだ?


「しっかし、まぁ…」


見事なBARだなぁ。酒も上等なもんを拵えてある。種類も豊富だし、ボトルを開けてないやつもある。

それにー

「あれは…もしかしt


カランカラン!


「おーう来たか」


「あ!どうも!」


またまたこの場に似つかわしくない奴が出てきたな。ハンティング帽に丸サングラス、無償髭を生やした、イメージしたBARのマスターとは正反対の男だ。


「持ってきたのかい?」


「よいしょっと。はい、ユイドさん。」


ドジャラ


麻の巾着をカウンターに置くとユイドと呼ばれた男はサングラスを上げ、巾着の中から金属を取りだした。


「よーしよし、いい感じじゃねぇか。計算すっから待っててな。それと…」


ユイドはサングラスを戻し、巾着の紐を閉めながらこちらの方を向いた。


「はじめまして、だよな?なんだ、コイツの知り合いか?」


「そんなとこだな。別に俺は金属集めてるわけじゃないから何も持ってねぇが。」


「…そうか。ところでアンタは『外』の人間か?」


「いいや、生まれも育ちもここだが。どうかしたのか?」

変なとこを突いてくる野郎だ、怪しまれてんだろうな。


「ふーん…まぁいいや。ゆっくりしててや。」


「そ、そうだ!テーブル席を借りていいですか!彼に奢る約束で連れて来たんです、飲み物はいつものボトルお願いします!」

凍りついた空気を察したのかイリスは立ち上がり俺たちの間に入った。


「そうか、好きにしな。俺は戻る。」

ユイドは巾着を手に取り出てきた場所へと戻っていった。


「さ、行きましょう。テーブル席は向こうです。」


テーブル席は別の部屋になっているのか、めちゃくちゃすぎるな。、


そう思いながらイリスの後に続いた。

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