第2話 誘い

「しっかしなんなんだ?あのバンダナ軍団。」


「1年くらい前かな、いきなりあんな感じで来て仕切り始めたんです。」


「いきなり?」


「あぁ前触れもなしにっす。別にここは荒れてたわけでもないしゴミ捨て場のルールも自分が産まれてくる前から存在してます。いきなりなんでってみんな聞いたけど規律を守るの一点張り、暴力を振るわれるやつまで現れたから誰も聞かなくなりました。」

ダストシティには当然病院みたいな所はないから怪我とか傷を負いたくないんだろうな、イリスさんの目は納得というよりかは諦めているように見えた。


「ゴミからゴミが生まれたようなもんか、どーせ。それにしても今日も今日とて金属探しですかい?そんなに集めても腹の足しにもならんでしょう。」

このままじゃ重い空気になってしまうと思い咄嗟に聞いたが前々から気になっていたことだ。


ここダストシティにおいて金属などはあまり求められていない。一番重要なものは食べ物、次点でその食べ物を保管する入れ物だ。寝床とかはあれば楽だろうが俺みたいに地べたに寝るやつの方が多いし、衣類なんかも1着あれば十分だ。

金属ってのは食べれねぇし、ここじゃ加工すらできない。

猫に小判…いや価値は分かってんのか。じゃあ宝の持ち腐れってヤツだな。


「フフッ何とですね。この金属を交換してくれるところがあるんですよ。」


「マジか!?そしたら今まで集めた金属全部交換してるとしたら…億万長者になれるんじゃないか?というか、何に交換したんだ?」


「それは…あ!そうだ!今日の夕方会えません?今日は交換しに行こうと思ってたんで。」


「おいおい俺はなんも持ってないぜ。」


「大丈夫です、自分が奢りますよ。普段の感謝とかも込めて。」


「感謝なんて…俺とアンタは2ヶ月の仲だぜ。いきなり過ぎるっていうか、その…なんだ。裏がありそうだと思っちまう。すまないな、善意なんだろうが前職でヒドい裏切りにあっちまー


「ありますよ、裏は。もちろん。」


「え?」


「とある相談事なんです、個人的な。」




夕方


特に考えもなしに約束された集合場所に到着した。裏があると言われても着いてくるほどのなにか固い意思を持っている訳では無い。

「面白そう」「気になる」

その2点でホイホイ着いていっただけだ。安易な考えは危険だって言いたいのか?大丈夫、危機察知能力は人より優れてると自負してる。

ま、危機察知出来なかったからここに流れ着いた訳だが…


「お待たせしました!じゃあ行きましょうか。」


目の前に現れたイリスは日中とは変わらない服装で、変わったのは麻の巾着を持ってるくらいだ。


「あれ?金属はどこだ?」


「ん」

麻の巾着を目の前に差し出してきた。少し誇らしげな顔をしているがこちら側はどんな顔をしていいのか分からなかった。


「んぁ…その、そん中に金属が入ってるって…事だよな?」


「そうです。」


「そうか。こんなこと言っちゃ悪いけどよ…あんだけ集めてそれしか取れないって…効率悪くねぇか?」


「向こうの世界のことは分かりませんが、これでも沢山取れた方です。効率は正直…悪いかもしれません。でもリターンが大きいので。」


「リターン…ねぇ…。まぁ今からそれが見られる訳だが、どこへ行くんだ?」


「ダストシティーの最北端『パスティーシュ』です。」


そう言うとイリスは巾着を肩にかけ歩き出した。

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