染み

ツヨシ

第1話

ある日、俺のアパートの壁に染みができていた。

はっきりと。

円の上部を切り取ったような形で、数センチほどのものだ。

こすったりいろいろしてみたが、一向に染みは取れなかった。

――昨日まではなかったんだが……。

俺は諦めてそのままにした。


翌日、仕事から帰ってくると、染みが増えていた。

同じ形で逆さになったものが、前のものと合わさるようについていた。

両端が尖った楕円形のようだ。

両端が尖っている時点で楕円形ではないのかもしれないが。

――なんなんだこれは。

俺は昨日以上に染みを取るためにあれこれと頑張ったが、取れるどころか薄くなることすらなかった。


そして次の灯には、染みの中に瞳ができていた。

それはどう見ても瞳であり、染み全体はどう見ても人間の目だった。

俺は驚きのあまり、その染みをじっとみていた。

するとその染みがまばたきをした。


       終

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染み ツヨシ @kunkunkonkon

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